専用のベッドを用意してもなぜか棚の上で眠ったり、タンスの上を軽快に飛び回る愛猫の様子を飼い主さんなら一度は見たことがあるかと思います。
どこにでも登りたがる愛猫を見てヒヤヒヤすることもありますが、高い場所から飼い主を得意げに見下ろす様子はとてもかわいらしいですよね。
そもそもなぜ猫は高いところに登りたがるのでしょうか。
今回は猫がなぜ高い場所に登りたがるのかについてご紹介します。
登って満足気?猫が高い場所に登りたがる理由
愛猫はどこにいるのかしらと部屋のなかを見渡すと、
- 本棚
- 洗濯機
- タンス
- 出窓
- 冷蔵庫
など、室内のさまざまな高い場所に登ってくつろいでいることがよくありますよね。
なぜ猫は家具や物の上に登りたがるのでしょうか。
高いところは安全!自分自身を守るために
猫は高いところから高いところを自由に移動することができます。
タンスや本棚の上から飛び降りて音もなく着地する様子は、まるで体操選手のようです。
犬やうさぎなどいろいろな動物と比べてみても、これほどまでに高い身体能力をもっている動物はそういません。
つまり高い場所は猫にとって、ほかの動物が登ることのできない安全な場所でもあるのです。
猫は外敵から狙われる可能性が低いというメリットから、高い場所に登りたがるのかもしれません。
野良猫が屋根の上や塀の上を歩いているのを見たことがあるかと思います。あの行動も、高いところがすきというより、そこが手の届かない安全な場所だからでしょう。
長い間家のなかだけで飼われている猫は危険を知らないので、床にゴロンと寝転がることもありますが、やはり習性として高いところに登るのがだいすきです。
また、猫は目が悪く、視線がとても低いといわれています。高いところから全体を見下ろすことによって、周囲の安全性を把握したいという防衛本能も働いているのかもしれません。
猫が高いところに登る理由は野生の本能
猫は警戒心が強く、常に縄張りを意識して暮らしています。
身体のにおいをすりつけたり、トイレ以外の場所でおしっこをするマーキングも、ここは自分の場所だ!と警告し、縄張りを守ろうとする行動のひとつです。
猫にはもともと自分だけの安全な場所を確保したいという本能があります。
猫の祖先ともいわれているリビアヤマネコは、古代エジプトで森林に囲まれて暮らしていました。
外敵から身を守るために、木の上に登ることで自分自身を守っていたのです。その習性が今も残っているので、猫は高いところを好むともいわれています。
猫は歩きながら縄張りをパトロールするときに、高い場所へ登って周りを見渡しながら縄張りの安全性をたしかめる習性があります。
これはどの猫にも共通して見られる行動で、同じネコ科のライオンやヒョウも高い木に登っている様子を目撃されることがあります。
ライオンやヒョウは猫にくらべて身体が大きいので、登る木や場所が限られたり、敵に見つかる可能性も大きくなるので、木に登っている姿はとてもめずらしいかもしれません。
地面に近い場所は、目に見える敵だけが襲ってくるわけではありません。
猫が地面に寝転がっていると、ダニやノミなどの寄生虫に悩まされることが多くあるのです。
小さな虫だからと思うかもしれませんが、ダニやノミは非常に生命力の強い寄生虫で、毛や皮膚に潜伏して猫を苦しめます。
刺されたあとの強いかゆみがストレスになり、傷跡から菌が入って皮膚炎になってしまうことも。
高い場所なら寄生虫もいないので、寝床として地面よりも安全です。ダニやノミの存在も、猫が高い場所に登りたがる理由かもしれませんね。
また、小動物などの獲物を狩っていたなごりから高いところに登りたがるという説もあります。
高い場所から周りを見渡すことで、広い視野をもって獲物を見つけやすく、捕まえやすくしているのです。
なんにせよ、猫が高いところに登りたがる理由に本能的な野生の習性が関わっていることに間違いありません。
登ったのに降りられない!どうやって助ければいいの
テレビなどで、高いところに登って降りられなくなった猫を救出するニュースを観たことはありませんか?
猫は高いところに登りたがりますが、実は降りることがとても苦手です。
愛猫の爪を切るときによく見てみると、猫の爪は人間のようにまっすぐではなく、フックのように丸く曲がっています。
登るときは爪を引っかけながら簡単に登ることができますが、降りるときは降りたい方向へ引っかけることができないので身体が不安定になってしまうのです。
なかなか降りられないことに気づいた猫はパニックになり、身体がかたまってしまいます。
高いところに登って降りられなくなった猫ちゃんはどうしてあげればよいのでしょうか。
ピンチ!棚や冷蔵庫の上から降りられない猫ちゃんの助け方
猫が高い場所に登る理由は、先ほどご紹介したように野生の本能が関係しています。
しかし猫のなかには、自分で登りたくて登ったのではなく、気づいたら高いところへ来てしまったといううっかりな猫ちゃんもいます。
例えば、犬や子どもなど、猫が苦手なものに追いかけられてしまったり、外に出ることがある猫はネズミや虫などの小動物を追いかけているうちにいつの間にか高いところに登ってしまったというケースも少なくありません。
意識せず高いところまで登ってしまった場合、怖くて降りられなくなる猫ちゃんも。
愛猫がこのような状況に陥ってしまったとき、どう助ければよいのでしょうか。
まず、その高い場所に登る原因になった子どもや犬などがまだ周りにいれば、すぐにその場から隔離してください。苦手なものがいつまでも下にいると、さらに怖がって降りられなくなります。
手の届く場所なら、優しく声をかけながら抱っこして降ろしてあげましょう。
突然さわるとびっくりしてしまうので、だんだんに慣らして降ろしてあげてください。
手の届かない場所に登ってしまったときは、飼い主やその猫が慣れている人物に猫ちゃんの名前を呼んでもらい、猫が自分で降りそうになったときに褒めながら誘導してあげてください。
ここで知らない人が下で待っていたり、登って助けようとすると、さらに猫がパニックに陥ってしまうことがあります。
猫は登ってきた知らない人に対して「助けてくれる!」という感情よりも、怖い人がきた くらいにしか思わず、無理に飛び降りて怪我をしてしまうこともあります。
あくまで猫側が慣れている人たちだけで救出することが理想です。
屋根や木から降りられない猫を見つけたときは
野良猫や家の外にも出ることのある猫は、家のなかだけで飼われている猫よりも高いところに慣れています。
しかし、先ほどもご説明したように、登るときは爪を引っかけてすいすい登ることができますが、降りるときは爪が引っかかりにくく上手に降りられないことがあります。
猫は降りられないことにパニックになり、かたまってしまうのです。
屋根や木から降りられない猫を見つけたときは、地域の猫に関するボランティア活動を行っている団体に連絡しましょう。
高いところに登って降りられない猫は、パニックになり気が立っています。
そこへ知らない人物が近寄ってきても、さらに混乱して噛まれたり、引っかかれてしまうだけでなく、猫自身も無理に飛び降りて怪我をしてしまうことも。
ひとりで判断して助けようとせずに、猫にくわしい団体や、安全に捕まえるための道具を持っている人たちと協力してください。
猫が高い場所に登るとこんなメリットが
では高い場所に登ることは、猫にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
まずあげられるのが、運動不足の解消です。
部屋のなかだけで飼われている猫のほとんどが、運動不足だといわれています。高い場所に登ったり降りたりを繰り返すことで、運動不足が解消できます。
1日に15分だけでも遊ぶ時間をつくってあげたいものですが、忙しい飼い主さんだとなかなかむずかしいことも。
高い棚のない部屋なら、キャットタワーを設置してあげると楽しみながら運動することができます。
また、高いところに登った猫は、なんだか平面にいるときよりも安らいでいるように見えませんか?
猫が安心できるスペースがあるということはとても大切なことです。
ストレスに弱く、神経質な猫にとって、高い場所に登ることはストレス解消のための日課なのかもしれません。
高いところに登りたがる愛猫に安らいでもらうために
猫は高いところに登ることがすきというよりも、安全を確認できて周りから干渉されない自由な空間がすきだということがわかってもらえたかと思います。
高いところは猫がくつろげるリラックススペースです。猫にとって安心できる環境になるよう整えてあげましょう。
外に出る猫は木や屋根など、高い場所がいろんなところにありますが、家のなかだけで飼われている猫は私たち飼い主が環境を整えてあげないと高いところに登ることができません。
いつも床に近い場所に寝転がり、高い視線から全体を見渡せないことが猫にとってストレスになってしまうかもしれません。
無理やりどこかに登ろうとして、怪我をしてしまうなんてことになったら大変です。
家具を背の順に配置して階段になるように並べて登りやすくしたり、いつもくつろいでいる棚の上に愛猫お気に入りのクッションを置いてあげるなど、猫が登りやすくリラックスできる環境になるよう工夫してあげてください。
多頭飼いの場合、より上にいる猫が優位だといわれています。自分の方が上だ!ということを示すために、高いところに登っているのかもしれませんね。
多頭飼いの家庭は、登れる棚やキャットタワーを増やして、一匹ずつのお気に入りのスペースをつくってあげてください。
また、猫は三半規管が発達していて平行バランスに大変すぐれています。さらに、柔軟な身体と着地時の衝撃を和らげてくれる肉球のおかげで、高いところからも怪我をせずひょいっと飛び降りることができます。
しかし、どんなに高いところから落ちても大丈夫というわけではありません。
マンションのベランダなどから足をすべらして落ちてしまうと、大変です。特にシニアの猫は注意が必要なので、柵などできちんと対策をたてましょう。
猫の本能や習性を知ることで、愛猫にとってより暮らしやすい環境をつくってあげてください。