猫の中には普段から便秘がちだったり、下痢を繰り返してしまったりする猫もいます。特別重大な病気を持っていなくても生まれつきお腹が弱いということもありますから、飼い主さんとしてはフード選びにも気を使いますよね。
そんな飼い主さんにもう1つおすすめしたいのがヨーグルトです。
「猫にヨーグルトなんてあげてもいいの?」と思うかもしれませんが、実はヨーグルトは正しい分量で与えれば、人間がヨーグルトを食べるのと同じようにお腹の調子を整える効果が期待できます。
猫へのヨーグルトの与え方や、あげても大丈夫な理由をご説明します。
肉食の猫にヨーグルトをあげてもいい理由
猫は本来、肉食の生き物です。その猫に対して、草食動物である牛のお乳から出来ているヨーグルトを与えてもいいのかというのが、飼い主さんとしては一番気になるところではないでしょうか。
猫に牛乳をはじめとする乳製品を与える場合、問題となるのは牛乳に含まれる「乳糖」と呼ばれる成分です。人間でも、牛乳を飲んでお腹を壊す人がよくいますよね。
これは「乳糖不耐症」といって、人間の中でもこの乳糖を分解する酵素が少ない人が多く、そういった場合牛乳を飲むとお腹を壊してしまうのです。
そして、猫の体もまた、この乳糖を分解する酵素が少ないため、過剰に乳製品を取るとお腹を壊す原因になります。実際、牛乳には猫から出る母乳の2~3倍もの乳糖が含まれているといわれています。
- ヨーグルトになった時点で乳糖が全体的に少なくなる
- そもそも、猫に与えるべきヨーグルトの量がかなり少ない
ために、猫が乳糖によってお腹を壊す可能性はだいぶ低くなります。
猫がヨーグルトを食べた場合、ヨーグルトには乳酸菌やたくさんの酵素が含まれているため、人間がヨーグルトを食べる時と同じように、健康な腸内環境を保つ効果が期待できます。
手元に乳酸菌のサプリメントやビオフェルミンなどがない場合、ヨーグルトで代用してみるのもよいでしょう。
ほんのわずかでOK!猫へのヨーグルトの与え方
猫にヨーグルトを与える場合、適量はほんのわずかです。
与えるのは3日に1回でよく、量も1回当たりティースプーン半分~1杯程度が目安です。
普段の食事に混ぜたり、ヨーグルトだけ皿などに取って与えたり、指で舐めさせたりして与えます。
またヨーグルトに含まれる「LS1」や「ロイテリ菌」と呼ばれる乳酸菌の働きは歯周病菌の繁殖を阻止する効果があるため、食前より食後に与えた方が口内環境を整える効果が期待できます。
肥満や結石の可能性も。与えすぎに気をつけよう
猫の中には牛乳やヨーグルトが好きで、自分からねだる子もいますが、与え過ぎは禁物です。
ヨーグルトには脂肪が含まれているため、与え過ぎは肥満の原因になります。また、ヨーグルトに含まれるカルシウムを過剰摂取することで、尿路結石となる可能性も指摘されています。
猫は腎臓で非常に濃い尿を作るため、成分が固まり結石となることがよくあります。
特に固まりやすいのがカルシウムで、いったん結石となるとカルシウム由来の結石は排出が困難です。手術が必要になることもあるので、カルシウムを多く含むヨーグルトを与えすぎない方がよいでしょう。
余計なものの入っていないヨーグルトをあげよう
ヨーグルトは市販の人間用のもので問題ありません。しかし、人間用のヨーグルトの多くには砂糖や人工甘味料、各種添加物、そのほかフルーツなど様々なものが含まれています。
猫にヨーグルトを与える場合、これらのヨーグルト以外の成分が、猫に悪影響をもたらす場合もあります。またヨーグルトに含まれる脂肪による肥満の問題もあります。そこで、猫にヨーグルトを与える場合は
- 無糖
- 低脂肪
- 添加物など、できるだけヨーグルト以外の余計な成分がないもの
を選んで与えるようにしましょう。
子猫にはヨーグルトをあげないで!
子猫にはヨーグルトを与えるのを控えましょう。乳糖に対する耐性は猫によって個体差があります。
もし、子猫が乳糖不耐症で、わずかなヨーグルトでも合わず下痢などを起こした場合、子猫の体力を削り、それにより免疫力が下がり、他の病気にかかったりなど深刻な影響をもたらす場合があります。
子猫のお腹の調子が悪い時は、余計な薬やヨーグルトなどは与えずまず獣医さんに相談しましょう。
安全のため、最初はほんのわずかから始めよう
どんな猫でも、ヨーグルトをあげる際には最初はごく少量から始めましょう。ヨーグルトに含まれる乳糖は牛乳に比べてわずかなものですが、それでも反応する猫は反応してしまいます。
ヨーグルトを最初から大量に摂取してしまうと、もしも乳糖不耐症により下痢などを引き起こした場合に症状が重くなります。
最初はティースプーンの先にほんのわずかの量から始めましょう。また、毎日は与えずに1週間~数日に1回程度から少しずつ様子を見て、徐々に適切な量まで増やしていくようにしましょう。
あくまで食品。ヨーグルトに即効性はない
ヨーグルトはあくまで食品であり、薬でも整腸剤でもありません。人間がヨーグルトを食べるのと同じように、効果にはあくまで個体差があります。
ヨーグルトがとても体に合う猫は少量与えただけでも、下痢などが改善する場合がありますが、合わない猫には逆に下痢が悪化してしまったり、全く効果が望めなかったりすることもあります。
また、特に合わないというわけではなくとも、食べてすぐには効果の現れない猫もいます。
そのため、ヨーグルトはあくまで日頃からお腹の弱い猫の腸内環境を整える補助的なものとして、気長に与えましょう。少量を長期的に摂取することで、次第に腸内環境が改善されていく可能性があります。
ヨーグルトによって菌が違うことに着目しよう
市販されているヨーグルトの中にも、「ビフィズス菌」「ガセリ菌」「ロイテリ菌」「LG-21菌」などというように含まれる乳酸菌が細かく分かれている商品があります。
人間と同じように猫もまたそれぞれの菌が、体に合ったり合わなかったりする可能性があります。そのため、あまり効果がないという場合はヨーグルトの種類を変えてみるのもおすすめです。
便秘や下痢をしている場合は、ヨーグルトの前にまず病院へ
ヨーグルトはあくまで健康な猫に与えましょう。すでに下痢や便秘などをしている時、便秘薬や下痢止めとして与えるのはおすすめできません。
猫が便秘や下痢をするのには何らかの理由があり、中には重大な病気が隠れている場合もあります。猫が下痢や便秘をしている時は動物病院を受診しましょう。
その上で、日頃からお腹が弱く、なかなか状態が安定しないという場合に、補助的にヨーグルトを使うとよいでしょう。
ヨーグルトの代わりになる猫用サプリメント
ヨーグルトの持つ効果は、動物用の乳酸菌サプリメントや、動物病院で処方される整腸剤、また市販の新ビオフェルミンSなどを与えても得ることができます。ヨーグルトはあくまでこれらの製品がない場合の代用です。
もし、ヨーグルトを猫が好まない場合、あるいはお腹の調子を整えたい場合は、以下のような製品の使用も考慮するとよいでしょう。
株式会社森乳サンワールド「ヨーグルトMIX」
人間用のヨーグルトを原料に作られた、粉末状の犬猫用ヨーグルトです。水に溶いてヨーグルトとして利用できる他、粉末のままフードにかけて与えることもできます。
また、オリゴ糖などヨーグルトと一緒に摂取すると効果的な成分も含まれています。
トーラス株式会社「3種類の乳酸菌 ヨーグル2」
ヨーグルト味の乳酸菌サプリメントです。粒が大きく出来ているので、指やピルクラッシャーなどで砕いてから与えます。ヨーグルトは好きだけど、やはり人間の食品は与えたくないという場合にこちらの商品が便利です。
青瀛堂(せいえいどう)「乳酸菌plus食物繊維 猫用」
粉末タイプの乳酸菌サプリメントです。特にヨーグルトは使用していませんが、ヨーグルトと同じように、整腸効果が期待できます。猫用として開発されているので安心です。食物繊維も配合されているのが嬉しいところ。
猫のお腹の調子が悪いとき、ヨーグルトを少量あげてみよう
動物病院から処方された整腸剤や、ビオフェルミン、専用のサプリメントなどがない場合、ヨーグルトで代用することができます。猫の中にはヨーグルトを好む猫も多くいるので、猫が好む場合は少量から与えて様子を見てみましょう。
ただし、いくら好きでも体に合わない場合もあります。ヨーグルトには乳糖が少ないために、下痢をする可能性は牛乳よりも少なくなりますが、もしも下痢など体に不調が出た場合はすぐさま使用を中止しましょう。
ヨーグルト以外にも、猫の整腸効果があるサプリメントなどが市販されています。ヨーグルトやサプリメントを上手に使い分け、猫のお腹を守りましょう。