猫は自分のテリトリーを主張するために、尿をスプレーするといったようなマーキングを行います。猫にとっては動物としての本能に従っただけのごく自然な行動ですが、これが続くと飼い主は困ってしまいます。
猫にマーキングをさせないようにするために、どのような対策ができるのでしょうか。猫と飼い主がずっと良い関係でいるためにも、猫の気持ちになってマーキングをしてしまう理由を考えてみましょう。
自分のテリトリーを主張するためのマーキング
「マーキング」とは動物たちが自分のテリトリー(縄張り)を示すために目印をつけることです。その手段は尿をスプレーすることだけではありません。
猫の行うマーキングには次のようなものがあります。
- 尿スプレー
- 爪とぎ
- 好きなものにスリスリする
猫はニオイを付けることによって自分のテリトリーを主張します。尿スプレーはもちろん強烈なニオイを残しますが、一心不乱にに爪とぎしているときや甘えてスリスリしてくるときにも、実はニオイを付けようとしています。
爪とぎには、もちろん古い爪を剥がしいつでも鋭い爪をキープしておくという目的があります。しかしそれだけでなく、足の裏から出ている独特なニオイ(フェロモン)を付けるためでもあるのです。そしてストレス解消の意味もあります。
また猫はよく、飼い主の足や家具などに頭から首の辺りを擦り付けます。こんな風にスリスリしている様子を見ると愛おしくて仕方なくなりますが、実はこのときにも分泌腺から出る自分のニオイをつけようとしています。
これは安心してリラックスしているときに行うことが多いでしょう。そしてスリスリすることで飼い主のことも癒してくれます。
爪とぎやスリスリしてくるときのニオイはかすかで、人間には感じ取れないため特に問題にはなりません。(ただし爪とぎにはニオイ以外の大きな問題がありますが・・・)
しかし尿スプレーのニオイは強烈です。繰り返し尿スプレーをされてしまうと、飼い主は困ってしまいます。なぜ尿スプレーをしてしまうのか、そしてそれを止めさせるために何か良い方法はないかを考えてみましょう。
なぜ尿スプレーをしてしまうのか
尿スプレーによるマーキングでは、少量の尿を飛ばすように放尿します。これは膀胱に溜まった尿を出しきるための、自然な排尿とは全く違うものです。
尿のニオイには様々な情報が入っているとされ、それによってコミュニケーションをとったりテリトリーを主張していると考えられています。
これは主に去勢していないオス猫が行うとことの多い行動です。そのためオス猫の性行動のひとつとも考えられていますが、去勢したオス猫が行なうこともありますし、メス猫がやることもあります。
スプレーをした猫は、スプレーをした後の自分の尿のニオイを嗅ぐことはあまりないようです。しかし他の猫はそのニオイを熱心に嗅ぎにきます。
なぜ尿スプレーをするのかについては、次のような理由が考えられます。
- 発情中のメス猫を惹きつけるための性行動
- 自分のテリトリーを守るための主張
- 生活環境に対する不満や不安
猫が何を思って尿スプレーをしているのか残念ながら正確に知ることはできませんが、なんらかの意思表示であることは確かです。ですから飼い主はスプレーしてしまった猫をむやみに叱るのではなく、その子の気持ちになって理由を考えてみてください。
尿スプレーに性ホルモンが関係していることは多いと思われます。発情期しているメス猫が近くにいると、オス猫はテストステロン(性ホルモン)が上昇してスプレーの回数も増えることがわかっています。
また若いうちに去勢手術をすると、多くのオス猫が尿スプレーをしなくなります。
生活環境が変化したときにも尿スプレーをしやすくなります。
新入りの猫が入ってきたとき、飼い主の家族に赤ちゃんが生まれたりして新しい人間が増えたとき、飼い主が忙しくなって今までより構ってもらえる時間が減ったときなどです。
屋内で何度も尿スプレーをするようになったときには、生活環境に対して何か不満や不安があるとも考えられます。最近、何か変化はなかったでしょうか。
ちなみに複数の猫が同居している家庭に新入りの猫が加わったときには、一番古株の猫がスプレーすることが多いようです。また特定の人間のニオイが付いているものといった、猫にとって重要なものに対してすることもあります。
尿スプレーを止めさせる7つの方法
尿スプレーをすることは、猫にとっては何らかの意思表示だったり、動物としての本能なのかもしれません。しかし飼い主にとっては困ってしまう問題行動ですから、止めさせられる方法があると助かります。
尿スプレーを止めさせるにはどのような方法があるのでしょうか。
オス猫は去勢をする
尿スプレーを止めさせるために一番良い方法は、去勢手術です。去勢手術をすることで、約90%のオス猫で尿スプレーの回数が減ったりしなくなったと報告されています。
特に、若いうちに去勢すればほとんどスプレーすることはなくなります。
ただし去勢をしても、10%ほどの猫は特に変化がなかったようです。野良猫生活が長かったような猫では、尿スプレーを完全に止めさせるのは難しいかもしれません。
不満や不安の原因を見つける
猫が不満や不安を感じていることはないか、生活を見直してみてください。最近急にスプレーをするようになったのでしたら、猫は不満や不安があって何か言いたいのかもしれません。
例えば最近、次のようなことはありませんでしたか。
- 新入りの猫が入ってきた
- 飼い主に赤ちゃんが生まれたりして、家族が増えた
- 飼い主の生活が変化し、あまり遊んでもらえなくなった
- 狭い室内に閉じ込められているのでストレスが溜まった
- 他の猫との距離感、また人間との距離感が近過ぎる
- 庭で野良猫が勝手に散歩している
新入りの猫や家族が増えたといったときには、焦らず、無理せず、猫の気持ちになって少しずつ慣れさせていってあげてください。長いと慣れるまでに半年から一年もかかってしまうこともありますが、叱らないであげてください。
また猫は本来単独で行動し、獲物を取るために広いテリトリーも必要とします。ですから狭い家の中に閉じ込められたような生活、他の猫や人間との距離感が近くて自分だけのテリトリーが十分にないような生活は苦手です。
もしも心当たりがあるようなら、改善するようにしてみてください。猫が1頭で静かに落ち着けるようなこじんまりとしたスペースを作ったり、キャットタワーなどで十分に動き回れる空間を用意してあげると良いでしょう。
トイレは落ち着ける場所になっているか
トイレが落ち着かなくて嫌いな場所だったりすると、尿スプレーをしてしまうことも多くなります。猫にとってトイレの環境は大切です。一番無防備になる状態ですから、人間や他の猫が行き交うような場所では落ち着きません。
トイレの場所は1頭で落ち着ける、静かな場所にしてあげてください。トイレとご飯の場所が近いのもダメです。必ずご飯の場所とは離れた場所にトイレを置くようにしてください。トイレの場所をコロコロ変えたりもしないでください。
また猫は清潔好きですから、汚れたトイレは嫌いです。尿や便はなるべく早く片付けるようにし、いつでもキレイに保っておきましょう。トイレ自体の掃除も定期的に行ってください。週1回は砂を取り替え、トイレも中性洗剤で洗いましょう。
尿スプレーをする前に、猫の名前を呼ぶ
猫が尿スプレーをしようとしていることに気がついたときには、その直前に大きな声で猫の名前を呼んであげてください。猫は急に名前を呼ばれたことに驚いて、スプレーを止めることが多いようです。
スプレーをしてしまった後では、いくら大声で叱っても効果がありません。猫はなぜ飼い主に叱られているのかもわからずに混乱するだけです。
スプレーしようとしている直前に声をかけて、スプレーすることを忘れさせてください。
一度スプレーされた場所を、スプレーされにくいよう改善する
一度尿スプレーをしてしまった場所では、その後もスプレーを繰り返しやすくなります。そうなってしまわないように、対策をとっていくと良いでしょう。
まずスプレーした場所は、ニオイが残らないようにキレイに掃除をしてください。ニオイが残っていると、猫は思い出してまたスプレーしてしまうようです。
スプレーしたあとを見つけたら、すぐに雑巾などで拭き取ります。中性洗剤やアルコールなど使ったり、最後にペット用の消臭剤をまくようにしても良いでしょう。さらにニオイ消しに効果的な方法としては、熱湯をかけることです。
熱湯によって、尿の強烈なニオイをかなり消すことができます。場所やモノによっては熱湯がかけられないこともありますが、問題がないようであれば試してみてください。まず熱湯をかけてから洗濯をするようにしても良いでしょう。
そしてスプレーをした場所には猫の嫌いな音の出るアルミホイルを置いたりして、近づきたくない場所にします。柑橘系の芳香剤を置くことも効果があります。またその場所に何か物を置いてしまって、物理的にスプレーができない状態にしても良いでしょう。
それでも止めさせられない場合には、その場所にペットシーツを貼り付けてしまっても良いかもしれません。
フェロモンを使う
獣医師に相談し、その指導のもとでフェロモンを使うという方法もあります。これは猫の頰から分泌されるフェイシャルフェロモンから開発されたもので、「フェリウェイ」といった商品があります。
尿スプレーした場所をキレイに掃除した後でフェロモンを吹きかけるようにすると、尿スプレーが改善されます。爪とぎなど、他のマーキング行動を止めさせるためにも効果があるようです。
残念ながらフェロモンを使った全ての猫で改善されるわけではなく、またすぐに変化するわけではありません。
いろいろ試してみたがなかなか改善しないといったときには、一度獣医師に相談してみると良いかもしれません。ただし生活環境に不満や不安が残ったままでは効果が出にくいですから、まずはそこを改善するようにしてください。
なおフェロモンは自分の判断で勝手に使うのではなく、獣医師と相談し、その指導のもとで使うことをお勧めします。
医薬品を使う
いろいろやってみたがどうしても尿スプレーを止めさせられず非常に困っているといったときには、抗うつ薬を使うという方法もあります。この薬を使うことで不安感がなくなって、尿スプレーを改善させることができるようです。
ただし日本では現在のところ、犬用の薬として許可が下りているだけになります。使用については獣医師に相談してみてください。
またこの場合にも、尿スプレーをしてしまう環境が何も改善されていないままでは、一度良くなってもまた元に戻ってしまいます。まずは環境を改善することを第一に考えてください。
頭ごなしに叱らないで、理由を考えてあげる
猫が尿スプレーなどのマーキングを繰り返してしまう理由の一つには、ストレスがあります。猫の暮らす環境を改善したりすることで良くなることも多いため、まずは猫の気持ちになって環境を見直してみてください。
爪とぎのような他のマーキングをさせることで、尿スプレーを減らすこともできるようです。
猫がとる行動には、猫なりの理由があります。尿スプレーをしたからといって頭ごなしに叱らず、まずはその理由を考えるようにしてみてください。