飼い主さんなら誰でも目にしたことのあるであろう、猫の毛づくろい(グルーミング)。
ぺろぺろと一生懸命毛を整えている様は、何ともいじらしく見えてしまうものですよね。
しかし、中には舐めすぎてしまってその部分がツルッとハゲてしまうことも!?
我が家の猫、「プリン」も、そんな注意していないと舐めすぎてしまう猫のうちの一匹です。
今回はそのプリンの話を中心に、そんな舐めすぎな猫ちゃんに対してどんな対策を取ったら良いのか、どう接してあげれば良いのかのお話です。
うちの場合、毛がハゲるほどに舐めてしまう過剰グルーミングの原因は手術でした
うちにいる5匹の猫の中でも一番小柄なプリンは、保護された時期の子猫の頃から甘えたな性格でした。
その上、甘え方が少し不器用。ほんとは撫でてほしいのに、中々自分からは寄ってこない……その内素直で甘えん坊な同居猫の「もなか」が先に甘えてきて、なんてこともしばしば。
また、中々お母さんへの恋しさが忘れられなかったのか、1歳をすぎる頃まで、そのもなかの耳をちゅぱちゅぱとおっぱいを吸うようにするのが癖でした。(毛布を吸う場合はウールサッキングといいます)
▼猫のウールサッキングには、ちゃんと理由があるんですよ
猫が布を食べるウールサッキング。原因と家庭でできる対策2つ
おかげでもなかの耳はいつもベタベタになっていたのですが(笑)
そして何より、毛づくろいを丹念にする子なんです。
勿論猫はみんな毛づくろいが大好きですが、同居猫のもなかと比べると何かあればすぐ毛を舐める、というのが顕著な子です。
この毛づくろいという動作は、主に文字通り毛並みを整える意味や、身体の匂いを消したり、体温調節をしたり、ビタミンDを摂取したり、などという役割の他に、ストレスを解消する、という意味もあるんですね。
そういった点では、うちのプリンはストレスを感じやすい少し神経質な子なのかな?という印象は何となく抱いていました。
それでもその時は脱毛するまで舐めるなんてこともありませんでしたし、そこまで舐め方に関して危険視するほどではありませんでした。
しかし、あることをきっかけに、足元の毛をハゲてしまうくらい舐めてしまう癖がつくようになってしまいました。
そのきっかけとは、手術です。
一昨年の冬頃、いきなり原因不明の嘔吐を繰り返し、結局原因が判明できないまま開腹手術で内臓の様子を見ることになってしまったことがありました。
数時間に渡る手術は何とか成功しましたが、その後2週間ほど入院した後、病名までは特定に至らず、「とりあえず様子を見て」と退院することに。
開腹手術をしたので、丸っきりつるつるになったおなかを舐めないようにカラーをさせられました。
当時使ったカラーの写真です。
そして当時のプリンの写真。
さて、そのカラーですが、神経質なプリンにとっては大変なストレスだったようです。なにせ、大好きなグルーミングが全く出来ないわけですから……。
勿論、おなかの縫合の傷がある程度治らないと、間違って舐めてしまえば傷が開いてしまう可能性があり、カラーは外すことは不可能なため、その状態が一ヶ月ほど続きました。
私が側に居られる時はカラーをしている首元を痒がっていたりしていたので、なるべくそこを掻いてあげたりなどしていたのですが……。
ようやくおなかの傷も治り、外してあげたところ「待ってました!」とばかりに毛づくろいを始めるプリン。
やりたかったよね、と微笑ましく見守っていたその数日後。
何だかプリンの足元の毛の様子がおかしいのです。
有り体に言うと…ハゲてしまっている!
ハゲと言っても、その部分の全ての体毛がなくなってしまっている訳ではなく、この写真の通り、よーく見ると、ところどころ毛羽立っているように毛が残っている感じです。
このように、ハゲてしまうまで毛づくろいをしてしまうことを、「過剰グルーミング」と呼びます。
ハゲる、と言ってもハゲた部分の毛が根本から抜け落ちてしまった訳ではなく、猫ちゃんの舌を使って毛がこそげ落ちるまで舐めている訳ですから、上記のように毛羽立っているように見えたりするんですね。
プリンの場合は手術の後のカラーのストレスが大きな引き金となって発症してしまいました。
しかし、一旦発症してからはカラーに関係なく、ストレスが掛かると度々左右の足元どちらかをハゲるまで舐め上げるようになってしまいました。
一体、どのようにしてあげるのがプリンにとって良いのでしょうか……?
それを続きでお話します。
過剰グルーミングの原因はストレス。カラーはしない方がよかった?
ここまでプリンの過剰グルーミングの事例を見てきましたが、次からは具体的な対策方法についてです。
彼女は元々神経質な性格でしたが、カラーを長期間付けることによって過剰グルーミングという強迫行動を起こすようになってしまいました。
ですが、他の原因でも、猫ちゃんにとってはストレスになりえます。
例えば、
- 環境音がうるさい
- お気に入りのおもちゃがなくなった
- 飼い主と会えない時間が長い(分離不安)
- 同居猫が増えた/減った(亡くなった)
などなど……たとえ人間にとっては些細な事でも過剰グルーミングを誘因してしまう場合があるのです。
▼猫にとって精神的な要因が過剰グルーミングの原因になってしまうということですね
猫にも起こりうる精神病4例。問題行動は性格ではなく病気の可能性も
プリンの場合は、カラーだけでなく病気で入院していた時の不安感や、環境の変化と言ったストレスが溜まりに溜まった結果とも言えるでしょう。
過剰グルーミングの解決方法は本当にシンプルで、ストレスの原因を排除する!というのが一番の近道です。
とは言え、言うのは簡単でも実践するのは難しいですよね。うちの場合もそうでした。
まず、プリンが舐めることに対してかかりつけの獣医さんの見解を伺うと、塗り薬をもらうと同時に「これ以上舐めないようにカラーをしてください」とのこと。
カラーが原因なのにカラーをするなんて本末転倒では!?
と今ならば思えるのですが、当時はハゲていることがとにかく心配で、これ以上脱毛している範囲を増やしたくないがためにカラーを付けてしまいました……ごめんよプリン。
ですが、いくらなんでもプラスチック製のカラーでは行動範囲も狭くなってしまいますし、何より華奢なプリンでは重いだろうと布製のカラーに変えることにしました。
布製ですしプラスチック製のものよりは柔らかく、円周もそこまで大きくないのでプリンにとって普段より通れない!という場所も少なくなり、多少はストレスの軽減になったかと思います。
ただ、やはり長時間のカラーはプリンにとっては辛そうで、飼い主である私やその家族が様子を見られる時は、カラーを外して撫でてあげることも多かったです。
結論から言えば、カラーで物理的に舐めないように阻害するというのは逆効果で終わってしまいました。
カラーをしようがしまいがどうしても舐めてしまうと、セカンドオピニオンで他の獣医さんに診てもらったところ、
「カラーが嫌で舐めてしまっているんだから、そのものを付けて舐めさせないようにするより、ストレスを発散させるために運動をさせたりする方がよっぽど良い!」
とのお言葉が。確かにプリンの気持ちになってみればカラーを付けるなんて以ての外な訳ですから、当然といえば当然の話でした。
というわけで、そこからは作戦変更。
獣医さんからは、グルーミングから興味を逸らすようにと、
- 一日15分程度の運動を行わせる
- 一日の生活リズムをちゃんと守る(9時と12時と18時にごはん、など)
- グルーミングの物理的な阻害はしない(カラーはなるべく付けないように)
というアドバイスを貰ったほか、
- 舐めたことを叱っちゃいけない
ということも教わりました。
▼愛猫のためにも、時にはセカンド・オピニオンを受け入れる必要もあります
後悔しない動物病院の選び方。病院ごとに対応が全然違った!という話
一日15分程度の運動を行わせる
おもちゃを使って遊ばせたり、ベランダがある人はそこに猫ちゃんを出したりなど……。
特におもちゃですと、紐にボールなどがぶら下がっているようなものだと、上下運動も出来て◎です。
我が家では、
- チョウチョ型のおもちゃが付いた紐で遊ばせる
- 基本的には一室で過ごさせているのをドアを開放して別の部屋や廊下を探検させる
- ベランダで日向ぼっこがてら外の匂いを嗅がせる
などということを毎日するようにしました。
これは日課のベランダ遊びをしているもなかを見守る母猫、シナモンです(笑)
一日の生活リズムをちゃんと守る
食事は勿論として、上記の運動の時間であったり、撫でたりするふれあいの時間も一定のリズムで行ったほうが、猫ちゃんにとって不安な要素が減るようです。
毎日の仕事の終わるタイミングがどうしてもバラバラで……という人もいるかも知れませんが、なるべく幅が出ないように、猫ちゃんの生活リズムを整えてあげましょう。
▼今日は猫のご飯をあげ忘れた…なんてことがないようにしましょうね
猫の餌をやり忘れた!猫へのフォロー&うっかり防止の便利グッズ
我が家では基本的に、旅行の時以外に誰も家に居ないということがないので、家族の誰であれ、同じ時間にご飯をあげたり、様子を見たり、運動をさせるように努めています。
プリンが過剰グルーミングをするようになってからは、プリンやもなかと一緒に寝ることにしたので、夜寝る時にプリンの頬を撫でてイチャイチャすることが習慣になりました。
グルーミングの物理的な阻害はしない
エリザベスカラーはなるべく付けずに過ごしましょう。
どうしても舐めすぎて血が出てしまっている、という場合や、獣医さんの指導があった場合のみ付けるようにしてあげてください。
うちのプリンの例の通り、殆どの場合逆効果にしかなりませんので……。
舐めたことを叱っちゃいけない
「なんで舐めたの!」などと強い言葉で叱られると余計に猫ちゃんは不安になるものです。
舐めたことを叱ったり、舐めた部分を弄ったり、ましてや罰を与えたりなど、猫ちゃんに更にストレスを与えるような行動は控えるようにしましょう。
私も「あ~、また舐めちゃったの~、大丈夫~?」などとついつい心配の声を挙げてしまうこともありますが、それ以上は何も言わず、患部にも触れないようにして過ごしています。
獣医さんに言われた通りに実践してみると、常に右か左かはハゲていたプリンの足が、すっかり元のフサフサに戻りました。
ただ、忙しくて運動できない日があったりすると、「ちょっと今日は足の毛が多めに濡れてる……」なんてこともあるので、今後も注意深く見守る必要はありそうです。
それでも、以前のように人間で言う太もも部分あたりがごっそりと毛がない……!といったショッキングな画は全く見られなくなったので、そこは安心といえます。
因みに、今までストレスが原因の心因性の過剰グルーミングについて見てきましたが、必ずしもストレスが原因ではない場合があります。
アレルギーやノミ・ダニ、その他の皮膚トラブルで過剰グルーミングをしている時は、きちんとカラーをして投薬などの治療を受ける必要があります。
どちらか判断がつかない!という場合でも、飼い主さんも不安でしょうし、何より猫ちゃんのためにも早めに獣医さんの診断を受けるようにしてくださいね。
猫の個性と上手に付き合っていきましょう
最後になりますが、猫ちゃん一匹一匹に個性というものがあります。
例えば、うちのプリンは本当に引っ込み思案なのに甘えん坊で神経質と、猫らしいと言えば猫らしい性格なのですが(笑)、対して兄弟猫のもなかはどっしりと構えてのんびりとしている、プリンの良いお兄ちゃんです。
プリンのほうは、過剰グルーミングの影響か、嘔吐もよくしてしまうので、そこそこ病院に連れて行く回数も多いのですが、その時の怖がる「にゃー」という声に即座に駆けつけるくらいの紳士的な部分もあるんですよ!
そんなもなかとプリンは全く同じ環境で生活しているにも関わらず、片やプリンはこのように過剰グルーミングをしてしまう癖が。
片やもなかはプリンと同じく手術をしてカラーを付けたことがあるにもかかわらず、一切そんな兆候は見せません。
ですから、同じストレス要因があったとしても、発症するかしないかは猫ちゃん次第です。
逆に、同居猫が大丈夫だから、と言って普段何気なくやっていることを別の猫に安易にしてしまうのも、もしかしたら過剰グルーミングを誘発してしまう可能性があります。
そのため、当たり前のことではありますが、猫ちゃんの個性をしっかり見極めて、その猫ちゃんに合った接し方をするようにしてくださいね。
この当たり前が、結構難しかったりするんです。多頭飼いだと個性は見えやすい分、それぞれの対応をどうやってやるのがベストか、というのは常に悩みどころだったりします。
▼猫種によっても猫の性格は全然違います。多頭飼いをしている飼い主さんは、それぞれの猫の性格に合わせた対応ができるように心掛けたいですね
性格別にみた猫の種類。甘えん坊、元気、おとなしい猫種とは
それでも、猫ちゃんが幸せに過ごしてくれるなら、これからも努力は惜しまず、それでいて楽しく生活を送っていこうと思っています。
猫も人も、ストレスフリーが一番ですよね!それでは、今回のお話はここまでです。