猫は全身が毛で覆われているために、ノミやダニに寄生されてしまうこともしばしばあります。もしもしきりに体を掻いているようなことがあれば、放っておかずに詳しく状態を見てあげることも大切です。
痒みの原因はいろいろとありますが、その中でもかなりひどい痒みが出るのはダニが寄生したことで発症してしまう「疥癬」です。疥癬の症状や、原因となるダニについて詳しいことをみていきましょう。
疥癬はヒゼンダニが引き起こす皮膚の病気
「疥癬(かいせん)」は「ヒゼンダニ」というダニが寄生したことで発症してしまう皮膚の病気です。「皮癬(ひぜん)」というのは疥癬の別名になります。
疥癬は猫だけの病気ではありません。人間や犬など、その他多くの哺乳類で発症することのある病気です。ただ原因となるヒゼンダニの種類は、それぞれに違っています。
疥癬になると、ひどい痒みが現れます。痒みが出る皮膚の病気は他にもいろいろとありますが、その中でも疥癬は特に激しい痒みの出る病気とされているのです。
ヒゼンダニは皮膚に穴を掘って生きている
疥癬を引き起こす「ヒゼンダニ」は、肉眼ではほぼ見ることのできない大きさです。その中でも猫に寄生するのは「ネコショウセンコウヒゼンダニ(猫小穿孔皮癬ダニ)」で、「猫疥癬虫」と呼ぶこともあります。
特徴は体が丸く足が短いことです。この短い足を使って、ダニは思いがけないやり方で猫に寄生しています。なんと猫の皮膚の表面(角質層)に穴を開けてそこにトンネルを掘ると、その中で生活しているのです。
ちなみにこのトンネルを掘るのは雌成虫だけです。毎日少しずつトンネルを掘り進めていき、そしてその中で毎日卵を産んでいます。
雄成虫はトンネルを掘ることはなく、皮膚の表面を歩き回っているだけです。
猫はひどい痒みを感じると、ダニのいる場所を激しく引っ掻くように掻いてしまいます。そのために皮膚は傷ついてしまい、ひどい場合には出血してしまうこともあるのです。
疥癬の症状。ひどい痒みで引っかき傷ができることも
ヒゼンダニが寄生して疥癬になると、猫はひどい痒みを感じるようになってしまいます。あまりの痒さのために何度も激しく引っ掻いてしまい、傷が残ってしまうこともあります。そうなると皮膚の状態はさらに悪化してきてしまいます。
痒みが出る場所は、主に頭部です。掻き過ぎてしまうために顔や耳の縁にカサブタができてしまったり、場合によっては脱毛してきてしまうことさえあります。
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そしてさらに悪化すると、次第に全身に痒みを感じるようになってきます。掻き過ぎによって皮膚は厚くなり、フケが出るようになってしまうこともあります。
それでも治療をしないまま放置してしまうと、皮膚の傷は膿んできてひどい炎症を起こすようになります。さらに食欲もなくなってきて、元気もなくなってしまいます。
特に体力のない子猫や老猫の場合には、症状が重くなってしまうこともあるため注意が必要です。気がつくといつも体を掻き続けている、掻き過ぎて傷になっているといったことがあれば動物病院を一度受診してみると良いでしょう。
ごくまれですが、人間にも感染が広がってしまうことがあります。飼い主にまで痒みや湿疹が出てしまうことがあるのです。ただし猫のヒゼンダニは猫とともにしか生きられないため、人間に感染しても一時的な症状で治るとされます。
それでも、もしも改善しない場合には皮膚科を受診するようにしてください。その際には猫が疥癬になってしまい、それが移った可能性があることなども伝えましょう。
ネコショウセンコウヒゼンダニは犬に感染することもあるとされます。ただしまだ、はっきりとしたことはわかっていません。
疥癬の症状をまとめると、以下のようになります。
- ひどい痒みのため、猫はしきりに体を引っかくようになる
- 掻き過ぎによる引っかき傷ができることもある
- 顔や耳の縁など脱毛してくる
- カサブタができる
- フケが出る
- 放置すると症状は全身に広がり、食欲不振になり元気もなくなる
この病気は、以前は子猫や若い猫に多くみられていました。しかし最近は、中年や歳をとった猫にも増えてきています。大人になってからの感染では、なにか他の病気があったり免疫力が下がっているといったことも関係あるようです。
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疥癬の感染経路。感染猫から簡単に移る
ヒゼンダニは感染力の強いダニです。ヒゼンダニに感染している猫と接触すれば、すぐ簡単に感染してしまいます。
感染猫が1匹いると、その周りにもどんどん広がっていってしまうでしょう。自由に屋外へ出かけている猫は、どこで感染してしまってもおかしくない状況ですので、気をつけておいてください。
そして飼い主さん自身が感染源になってしまうこともあるため、注意しなくてはいけません。飼い主さんが外で野良猫を撫でたりしたときに、ヒゼンダニを連れて帰ってしまうことがあるのです。
ヒゼンダニは飼い主さんと一緒に家の中に入り込み、そして猫に感染してしまいます。完全室内飼いだからといって、絶対安心とも言えないのです。
あまり外で野良猫を撫でないようにしたり、野良猫と遊んで帰ってきたときには家に入る前にコートや洋服を払ったりしましょう。もちろん、自分の愛猫と遊ぶ前にはまず手を洗うようにしてください。
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疥癬の治療と予防。感染になるべく早く気づいてあげて
猫が激しく体を掻いたりしている場合には、ダニなどへの感染が疑われます。診断はカサブタの部分をとり、顕微鏡で観察することで確定されます。もしもダニが感染していればダニやその卵、それにフンなどが観察できるようになります。
ただ激しく体を掻いている場合には食物アレルギーやノミアレルギーの可能性もあります。きちんと獣医師の診察を受けるようにしてください。
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もしもダニに感染していることがわかった場合には、ダニの駆除剤を使うことで治ります。感染してからなるべく初期の段階で受診した方が治りやすいですから、猫の異変には早く気づいてあげてください。
感染後時間がたち、慢性化してしまっている場合には治療に時間がかかってしまうかもしれません。猫の体力が低下しているとダニの駆除剤による副作用も出やすくなるため、注意が必要になります。
多頭飼いの家庭でもしも1匹でも感染が確認された場合には、全ての猫が感染している可能性が高くなります。他の猫にダニが残っているままでは、また感染が広がることになってしまいます。どの猫にも、ダニが全くいない状態にしましょう。
▼ダニの感染に早い段階で気付くことと、日頃から予防しておくこともとても大事です
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ダニは猫から離れて2日くらいすると死んでしまうとされます。
普段から猫が自分の体を掻いたりすることはありますが、あまりに激しく掻いているときには何か問題が起きているかもしれません。異変にはなるべく早く気づくようにし、早い段階でダニを駆除するようにしておきましょう。