猫を飼っていると、何かと衛生面で気になることが出てきますよね。突然毛玉を吐いたり、トイレ以外で粗相してしまったり、汚れたまま外から帰って来たり。
でも、そんな時に市販のアルコール消毒スプレーや消臭剤などを使うのは、猫に悪影響がないかどうか心配です。
ペット用と書いてある製品を購入しても、たまに猫がうっと顔をしかめるような香料が使われていたりして、本当に大丈夫なの……?と疑ってしまうことがあります。
そんな時におすすめしたいのが、次亜塩素酸水と呼ばれる除菌水です。猫に非常に安全な除菌方法として、次亜塩素酸水は今とても注目を浴びているんですよ。
この記事の目次
原料は水と塩だけ!次亜塩素酸水の強力な除菌性能
次亜塩素酸水は、その名のとおり次亜塩素酸を主成分とする水溶液で、強力な除菌効果、また消臭効果を持っています。次亜塩素酸水の原材料は、なんと水と塩だけ。水と塩を電気分解することにより次亜塩素酸水が生成されるのです。
水と塩だけでできているため、当然人体や猫にも安全で、なんと厚生労働省から食品添加物として指定されています。
そしてこの次亜塩素酸水のすごいところは、安全にも関わらずその除菌力は一般的なハイターよりもさらに上だという点です。
実は次亜塩素酸水の元となる次亜塩素酸は、ハイターの原料である次亜塩素酸ナトリウムの80倍もの除菌力を持っているのです。
水と塩だけで作られているため、素手で扱っても手肌が荒れません。こんな便利な除菌水があるなら、じゃあ今まで使っていたハイターはなんなの?と言いたくなってしまいますが、実は次亜塩素酸水にも弱点はあります。
水と塩だけで作られた次亜塩素酸水は、有機物に触れると除菌しながら水と塩にすぐに戻ってしまうのです。
ハイターなら有機物に触れて数時間してもまだ除菌性能を有しますが、次亜塩素酸水の場合は数時間も触れていたら、ただの水と塩になってしまいます。一瞬の除菌性能というわけです。
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混同しちゃダメ!次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムは別物
次亜塩素酸水と間違われやすいのが「次亜塩素酸ナトリウム」。名前は似ていますが、全く違う別のものなので注意が必要です。次亜塩素酸ナトリウムは身近なところではハイターやプールの消毒などに使われているものになります。
次亜塩素酸水は原液のまま舐めても安全ですが、次亜塩素酸ナトリウムはハイターの原料だけあってそのまま人体に触れると大変危険です。混同されがちなので注意しましょう。
いったいどこで売ってるの?次亜塩素酸水の入手方法
次亜塩素酸水は市販されている他、市販の場合は「Meau(旧名称AP水)」が動物病院でも使用されていて有名ですが、1L~10Lの大容量になってしまいます。
初めて購入する場合はドラッグストアやネット通販で入手できる、少量のスプレータイプになっている次亜塩素酸水がおすすめです。だいたい500mlあたり500円前後の価格で売られています。
また、動物病院でも販売されていることがあります。動物病院では次亜塩素酸水を生成するための業務用機械が設置されていて、その場で作ってくれることもあります。こちらも500mlで100~500円ほどで購入可能です。
近所に大きな動物病院があったら「次亜塩素酸水」あるいは「AP水」「Meau(エムオー)」というものを扱っていないか問い合わせしてみるとよいでしょう。
次亜塩素酸水はなんと手作りもできる!
実は次亜塩素酸水は、なんと家庭で手作りが可能です。次亜塩素酸水を手作りする場合、市販されている専用の生成器を購入し、水と塩を用意して生成することになります。
ちなみに我が家で使っているのはヒロセ電機株式会社より販売されている「アクアシュシュ」という商品です。
- 定価6500円(税抜)という生成器の中では比較的手軽なお値段
- 1回あたり30mlという少量から作れる
- 単3乾電池4本で数リットル分生成が可能
という、次亜塩素酸水入門に最適な商品です。「とりあえず試してみたい」という人にはおすすめですが、電池を使うため意外とランニングコストが高くなりがちです。
簡素な作りをしているため電源ON/OFFのスイッチもありません。電池が入れっぱなしだとランプが点灯したままになり、無駄に電池を消耗してしまいます。使用する時だけ電池を入れるか、エネループなどの充電池を用意する方がよいでしょう。
ちなみに上位機種の「アクアシュシュ2」も存在します。こちらは電源コード式になり、生成容量も1回30ccから150ccと5倍にアップしました。
「家中に撒きたいので、大量の次亜塩素酸水を一度に作りたい」という人、「いちいち電池を用意するのは面倒」だという人におすすめです。
「アクアシュシュ」を使った次亜塩素酸水の手作り方法を後ほどご紹介します。
使う前によく考えよう。次亜塩素酸水が使えないもの
安全で便利な次亜塩素酸水ですが、その性質上使えないものや、使っても効果が薄いものが存在します。以下のようなものへの利用を考えている場合は注意しましょう。
金属
次亜塩素酸水は除菌後に水と塩に戻るため、塩分に弱い金属にはできるだけ使用を控えた方がよいでしょう。残留する塩分はごくわずかであるため、全く使ってはいけないというわけではありません。
しかし、長時間塩分が残留したままになっていたり、あるいは除菌した素材が極端に塩分に弱いと影響が出る可能性はゼロではありません。洗い流せるものであれば除菌後水で洗ってしまうというのも手です。
次亜塩素酸水を大事なもの、あるいは高級なものに使用する場合は注意しましょう。
中まで除菌したいもの
次亜塩素酸水は除菌後すぐに水と塩に戻ってしまいます。ということは、言い換えればあくまで次亜塩素酸水がかかった部分しか除菌できないということです。
例えば猫が粗相してしまったので次亜塩素酸水で除菌したい!という場合、汚れた部分に次亜塩素酸水をスプレーしたとしても、除菌できるのはあくまで汚れの表面だけです。中まで除菌することはできません。
次亜塩素酸水の除菌性能は強力なものですが、次亜塩素酸水をスプレーしたからといってなんでも無菌状態になるかというとそういうわけではないのです。
生活用品の除菌や、掃除した後の床にスプレーするなどは有効ですが、スプレーが直接かからないような奥まで除菌するには不向きです。また、洗剤ではないので次亜塩素酸水そのものに汚れを落とすような効果もありません。
表面だけの除菌で足りないもの、中まで除菌したいもの、除菌だけでなく洗浄もしたいものに関しては、次亜塩素酸水以外の方法で処理するようにしましょう。
▼猫が粗相した場合の洗浄方法は対策法についてはこちらをご覧ください
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水分に弱いもの
次亜塩素酸水はあくまで水と塩でできているので、アルコールの除菌スプレーとは違い揮発性はありません。水分の蒸発はありますが、あまりに量が多いとすぐには蒸発しきれず残ってしまう可能性もあります。
水分に弱い電化製品や、ダンボールなど紙製品などへの使用は控えるか、水分が影響しないように慎重に行う方がよいでしょう。
家中に使いまくり!?次亜塩素酸水を使うと便利な場面
便利そうな次亜塩素酸水ですが、実際どんなところに使ったらいいのか悩んでしまう飼い主さんもいるかもしれません。そこで、次亜塩素酸水を使うと効果的なシーンをご紹介します。
普段の猫の生活空間の除菌
猫を飼っていると、例えば粗相した跡など、たまに除菌したい場所が出てくる時がありますよね。でも、アルコールを撒くと刺激があって猫がうっと顔をしかめてしまいますし、下手な洗剤は残留して猫が舐めると大変です。
ペット用と書いてある除菌グッズもありますが、香料が使われていることも多く、猫が嫌がることがあります。
そんな時次亜塩素酸水を使えば、何せ水と塩に戻るため非常に安全です。猫が舐めても全く問題ありません。若干塩素のにおいはしますが、ハイターほどきついものではないので換気に躍起になる必要もありません。
床やベッド、食器やおもちゃはもちろん、カビが生えやすい窓際や玄関にもじゃんじゃん撒くことができます。
▼なかなか普段洗えない猫ベッドの除菌にも役立ってくれそうです
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煮沸消毒できるものであれば煮沸消毒してしまえばいいのですが、煮沸消毒、あるいは洗濯などできないものに対しては、次亜塩素酸水がおすすめです。
猫の空間の消臭
次亜塩素酸水には消臭効果もあります。猫の粗相などはにおいが残ると粗相を繰り返す原因となりますから、次亜塩素酸水できっちり消臭すると安心です。おしっこや便のにおいも綺麗にとれます。
また、猫用ベッドなど「なんとなくにおってきた……でも洗えないしどうしよう」という場合に次亜塩素酸水をスプレーすることで消臭することができます。
次亜塩素酸水を撒いた直後はほんのりと塩素のにおいがしますが、すぐに消えるので猫が嫌がることもありません。
真菌
猫にとってよくある病気である真菌(皮膚糸状菌症)。この真菌への対処にも次亜塩素酸水が非常に便利です!
▼猫の真菌についてはこちらをご覧ください
猫の真菌の治し方。黒いカビのような症状は感染するので注意!
真菌となると猫の使ったベッドや食器まで除菌しないと残っている真菌が猫に移って再発することがあるため、猫の生活空間全ての除菌は重要な対策となります。
除菌性能のあるものというとすぐに思い浮かぶのはアルコールではないでしょうか。しかし、アルコールは猫にとって刺激が強く、治療中毎日使い続けるとなると不安が残ります。そこで出てくるのが次亜塩素酸水です。
実は次亜塩素酸水は真菌も除菌することが証明されています。動物病院でも、真菌への対処の一環として次亜塩素酸水を使った製品である「AP水」を処方してくれるところが多くあります。
真菌のしつこさに参っている飼い主さんにとって、次亜塩素酸水があるかないかは大きな違いです。
実は弱点も……。次亜塩素酸水を使う上での注意点
次亜塩素酸水は便利ですが、欠点もあります。次亜塩素酸水を使う上では、以下のようなことに注意しましょう。
使用期限に注意
次亜塩素酸水は除菌した後はすぐに水と塩に戻ります。そのため、開封後長期間置いておくと、使わなくとも水と塩に戻ってしまい効果がなくなってしまうことがあります。使用期限には十分注意しましょう。
一般的に、市販されている次亜塩素酸水の使用期限は開封後約1ヶ月~3ヶ月程度、手作りの場合は1週間程度が目安となります。効果が薄くなってくると、塩素のにおいも薄くなってきます。
古いまま使うと次亜塩素酸水ではなくただの食塩水を撒いていたということになりかねないので、できるだけ新しいものを使うようにしましょう。また、一度開封したら早めに使い切るようにしましょう。
除菌しすぎに気をつけよう
次亜塩素酸水がいくら安全であるからといっても、使用のしすぎはよくありません。次亜塩素酸水はあらゆる菌を除菌するため、普段の生活空間、あるいは猫の体にある常在菌まで除菌してしまいます。
無菌状態はかえって菌に対する抵抗力を下げてしまうことにも繋がるので、次亜塩素酸水の過度な使用は控えるのがおすすめです。
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かえって菌を繁殖させないように気をつけよう
次亜塩素酸水で除菌後も、使用した場所には水分が残ります。水なので、少量であれば自然と蒸発しますが、あまり大量にふりかけてしまうと蒸発しきれず長時間水分が残り、逆にカビなどの温床になってしまうこともあります。
適切な量を適切な場所に使用し、使用しすぎには十分注意しましょう。
誰でも簡単30秒!次亜塩素酸水を手作りしよう
次亜塩素酸水は生成器を購入すれば、水と塩だけで手作りすることが可能です。次亜塩素酸水を末永く愛用したい!という人、あるいは一度に大量に使いたいので、できるだけ安く済ませたいという人は生成器で手作りするとよいでしょう。
参考までに、我が家で使っている次亜塩素酸水生成器「アクアシュシュ」の使用方法をご紹介します。
「アクアシュシュ」は電池式で、単3乾電池4本が必要となっています。大きさは500ml程度のペットボトルよりやや背が低い程度です。
電源スイッチはなく、原料となる食塩水を上から流し込むと、流し込んだだけ次亜塩素酸水が下のノズルから出てくる仕組みです。
用意するもの
- 水30cc
- 天然塩0.3g
- アクアシュシュと付属品各種
- アクアシュシュに乾電池を入れ、付属のスプレーボトルをセットします。
- アクアシュシュの蓋に水を入れます。内側の線まで入れるとちょうど30ccです。
- 付属のさじで塩を計量します。すりきり1杯が約0.3gです。
- 計量した塩をそのまま蓋の水に投入し、混ぜて食塩水を作ります。
- アクアシュシュの中に食塩水を流し入れます。
- 下のノズルから次亜塩素酸水が出てきて、セットしたボトルの中に収まります。
なんとたったこれだけで次亜塩素酸水が手作りできてしまいます。機械ではありますが、電気分解しているだけなので余計な駆動音は一切しません。夜中でも何の気兼ねもなく作ることができます。
注ぐのと次亜塩素酸水が出てくるタイミングはほぼ同時です。ノズルは細いものの、たった30ccなので食塩水を注ぎ終わって30秒もすれば30ccの次亜塩素酸水がスプレーボトルの中に出来上がります。
アクアシュシュは基本的に少量作りたい場合に向いていますが、やろうと思えば数リットルを一度に作ることもできます。
例えば1Lの計量カップに900ccの水と9gの塩を入れて混ぜ、その計量カップの食塩水をゆっくりとアクアシュシュに注いでいけば、10分以上はかかるものの900cc程度の次亜塩素酸水を作成することが可能です。
ノズルの下にはスプレーボトルを置くとあふれてしまうので、水差しのように先が細くなっているタイプの1L計量カップを置いてうまくノズルから出る次亜塩素酸水が計量カップの中に流れ込むように工夫します。
少し手間はかかりますが、我が家ではそうしていつも週に1Lほど次亜塩素酸水を作成して家中にばらまいています。
- 手作りの次亜塩素酸水は作ったらすぐに使い切ろう
-
注意点としては、手作りの場合は市販のものより圧倒的に有効期間が短いということ。さすがに業務用の機械よりは純度が低いようです。
一週間も放っておくとほとんど塩素のにおいがとんでしまいます。より確かな効果を得るためにも、できればこまめにその時使う分だけを作る方がよいでしょう。
ご紹介したのはアクアシュシュの使い方ですが、他の生成器を使用しても作り方にさほど違いはないはずです。
適切な濃度の食塩水を用意して製品内に入れることで、それほど時間もかからずに次亜塩素酸水を生成することができるでしょう。生成器を選ぶ時は
- 電源式か、電池式か
- 作れる容量はどのくらいか
- どのくらいの濃度の次亜塩素酸水が作れるのか
- 生成器本体の価格
などを参考にして選ぶのがおすすめです。用途にあった生成器を購入して、気軽に次亜塩素酸水を試してみてください。
次亜塩素酸水で猫に優しく、安全な除菌をしよう
次亜塩素酸水は食品添加物としても認められている、人にも猫にも安全な除菌水です。安全でありながらも除菌力は高く、猫と暮らす飼い主さんにとっては非常に重宝するでしょう。
次亜塩素酸水を適切に使えば、ハイターや洗剤、アルコールなど猫が触れるものに使うには不安な製品の使用を必要最低限に抑えることができます。また、猫だけでなく、人間のインフルエンザやノロウイルスの対策も可能です。
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猫と飼い主さん両方に恩恵があるので、興味のある方はぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。