現代社会では、私たちの身の回りに便利な物がたくさん溢れています。そしてそれが、どんな素材で出来ているのかをそれほど気にしなくとも、普通に生活しています。
しかし、安心・安全の視点から、原料を吟味する必要がある場合なども多々あります。耐性や免疫などの抵抗力の問題で、小さなお子さんやご老人、犬猫などのペット等、弱者の同居人がいるのならなおさら必要になる事でしょう。
そこで、今回は気をつけたい物の一つにエチレングリコールを取り上げたいと思います。ここではエチレングリコールがどういう物質なのか、何に使われているのかを紹介していきたいと思います。
エチレングリコールってどんなもの?口に入れると危険!
エチレングリコールは、石油から精製され、消防法上の第4類危険物(第3石油類)に分類されています。
第3石油類とは、1気圧で、引火点が70℃以上で200℃未満の引火性の液体の事を指します。この化学物質には次のような特徴があります。
- 水に溶けやすい
- 常温で粘り気がある
- 無色透明、臭いがない
- 甘い味がする
それでも口にしてしまった場合、生体内代謝の影響で有毒化し、中毒症状を引き起こす事があります。
エチレングリコールが使用されている身近な物は「古い保冷剤」
エチレングリコールはポリエステルやペットボトルの原料として使用されています。また、車のエンジンの冷却水として使われる不凍液にも含まれています。これは、エチレングリコールには気温が0℃以下でも凍らないという特性を利用したものです。
そして、エチレングリコールが素材として使われている物のなかで、最も気を付けなければいけない身近な物は保冷剤です。
エチレングリコール入りの保冷用品は過去、大量に販促されてきました。ケーキなどの食品の鮮度を保つ為の冷却用や、暑さ対策の為のアイスパックにもエチレングリコールは含まれていました。
飼い猫用にジェル入り冷却マットを購入した飼い主さんもいるのではないでしょうか。
保冷剤に中毒性のある素材が含まれているという事は、それまであまり注意喚起されて来ませんでした。
しかし、認知症のお年寄りがそれらの中身を舐めてしまうなどの事故が起こり、次第にエチレングリコール入りの冷却商品の製造は減っていったという経緯があります。
今現在、保冷用製品には害の少ないゲル化剤や高吸水性ポリマーなどの原材料が使用されています。ですが、元来こういった物は何度も繰り返し使用できる品物ですので、現状、市場に出回っていないからといって安心はできません。
もしかしたら家の冷凍庫の奥に、エチレングリコールを含む保冷剤がしまわれている可能性だってあります。何年も同じ保冷用品を使用している場合などは成分の確認をして下さい。
エチレングリコールは哺乳類にとって毒物であり、体内に摂取してしまうと、大人でも重症化する場合があります。ましてや、体の小さなお子さんやペットでは、死亡する危険性さえあります。
エチレングリコール中毒であらわれる症状
何らかの要因で、エチレングリコールが体内に侵入すると、肝臓で代謝された後、グリコアルデヒドやシュウ酸などに変化します。また、シュウ酸はカルシウムと強く結びつく性質があり、シュウ酸カルシウムという尿結石が生成されます。
それにより低カルシウム血症などの腎障害を引き起こす事もあります。
もしも、猫がエチレングリコールをあやまって舐めたり、飲んだりした場合は、初期の段階で神経症状(知覚障害、痛み、しびれ) が出てきます。
そして、嘔吐やふらつき、元気がない、呼吸促迫などの症状があらわれます。この呼吸促迫とは、呼吸の数と深さが異常に増える状態をいいます。
時間がたち症状が進むと、体内で作られたシュウ酸カルシウムによって腎不全に陥る事もあります。ちなみに現在、飼い猫の死亡原因のトップランカーに腎不全が入っています。
もし、猫がエチレングリコールを舐めてしまったら
猫には、気になったものの匂いを嗅ぐ習性があります。そしてその時に、鼻先に着いたものを舐めてしまうので、エチレングリコールなどの毒性を持った物質を誤飲する事故が起こってしまいます。
またエチレングリコールは甘い味がしますので、興味本位から猫が保冷製品を咬んでしまい、こぼれた中身を舐めてしまうという事例もあります。
エチレングリコールを摂取して1~2時間以内であれば吐かせる、胃洗浄をするなどの処置で対応出来ますが、それ以上時間が経ってしまい、エチレングリコールが体内で吸収されはじめている場合は、解毒剤としてエタノールを注射します。
また、腎臓保護の意味から、カルシウムを補給するなどの加療も行います。この様に、治療法はあるのですが、それは時間との戦いになります。
というのも、更に時間が経過してしまい、代謝物のシュウ酸が増えると、低カルシウム血症やシュウ酸カルシウムの生成による腎障害が引き起こされるからです。
また、大量のエチレングリコール飲用から、解毒用に注入したエタノールの代謝による拮抗作用が追い付かず、エチレングリコールを尿として体外への排出する事が間に合わなかった場合などは、残念な結果になってしまう事もあるのです。
先に述べたとおり、飼い猫がエチレングリコールを口にしたら、助けられるかどうかは摂取から処置までの時間が結果を大きく左右します。
手遅れになる事を防ぐ為にも、飼い猫が保冷剤を食べたかもしれないと思った時には、迅速に動物病院へ連れて行きましょう。
異変の症状だけでエチレングリコール中毒だと判断するのは、素人ではとても困難です。可能であれば、病院には猫がかじった製品その物を持って行くといいでしょう。獣医師に原因となる物品を見せる事が出来れば、診断の判断材料になります。
一番の予防対策としては、身近にエチレングリコールを含むものを、飼い猫の傍に置かない事です。
表面がソフトタイプの保冷剤は、エチレングリコール入り不凍液使用の物の場合、カチカチに凍りません。冷凍庫にある保冷製品を確認し、触って弾力を感じるものがあれば成分表を確認して下さい。
もしも、エチレングリコール入りの商品をお持ちであるのなら、同じ用途の物を新しく買い替える事をお勧めします。
ペットの健康被害を防ぐには、飼い主さんが気を配ってあげるしかありません。猫と楽しく暮らす為にも、エチレングリコールには気をつけてあげて下さい。
エチレングリコールは猫の周りにある危険なもののひとつ
私たちの生活が豊かになればなるほど、身の回りには化学製品が増えていきました。かといって今更、原始的な暮らしにする事はなかなか難しい事だと思います。知識をうまく利用して、猫にとっても、人にとっても安心できるように心がけてください。
みんなのコメント
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分かりやすかったです!