「猫は、マイペースで孤独を好む生き物」というイメージを持っている方は、少なくないかもしれません。確かに、野良猫や自立した大人猫には、このようなタイプを多く見かけます。
ですが、猫には実は、とっても甘えっ子な側面があるのです。ゴロゴロと喉を鳴らして一生懸命に甘えてくる猫は、筆舌に尽くしがたい愛らしさを持っています。猫の性格は、生まれ持った性質や血統にもよりますが、育て方も重要です。
あなたに首ったけの、甘えっ子猫に育てるコツをお教えします。
甘えっ子に育てるために、まずは猫が自立する理由を知ろう
子猫は、親猫が育ててくれなくては、生きていくことができません。親猫に育ててもらうために、子猫は親猫に甘えて自己アピールをします。「自分のお世話をしてほしい」と、懸命に訴えるのです。
親猫から自立を促されなければ、子猫は自立した大人猫にはなりません。大人になっても甘えっ子な猫に育てるためには、まず、猫がどうして自立するのかを知りましょう。
親が新しいこどもを産むための自立
大人になった猫は、相手を見つけてこどもを作り、産んで育てます。子猫が自分で生きていけるくらいに育ったら、親離れさせて自立させ、また新しく子猫を産んで育てます。
子猫がいつまでも自立しなければ、親猫はいつまでも、その子猫にかかりきりになります。その子猫が親猫の手を離れない限り、新しく別の子猫を作って育てる余裕は生じません。
だから、子猫がある程度自分で生きていけるくらいに育ったら、親猫は子猫に自立を促すのです。今まで甘えることを許し、ご飯を分けてあげていたのに、急にそっけなくなります。ときには牙を向いて威嚇することもあります。
そうして子猫は、「もう、親猫に甘えていては、自分は生きていけない」と察します。自分でご飯を探し、自分の身を自分で守って生きていくようになるのです。
これは、自然に生きる動物の、当たり前のサイクルです。
自分自身が生きていくための自立
親猫のもとを離れて一匹で暮らすようになった子猫は、いままでのように、親猫に守ってもらうことはできません。
自分の身を自分で守るために、おいそれと気を抜くことができなくなります。周囲の気配に気を配り、危険なものからは逃げたり戦ったりするべく、ピリピリとした空気をまとうようになるのです。
自分の身を守るのは自分自身であり、なにもかも自分で判断しなくては生きていけません。猫は群れで生きる生き物ではないので、一匹で生きていけるよう、自立しなくてはいけなくなるのです。
苛烈な縄張り争いや、野良猫にあまり優しくない地域で暮らす猫ほど、尖った性格の猫が多いものです。反対に、危険の少ない地域で育った猫は、野良猫でも、比較的のんびりとした性格の猫が多く見られます。
甘えん坊さんな猫に育てるコツ3つ
「どうして猫が自立するのか」を知れば、甘えっ子な猫に育てるコツは、自ずとわかりますよね。甘えっ子な猫に育てるコツとは、猫にいつまでも安心して甘えていられる子猫気分でいさせてあげることにあります。
もちろん、猫の個体差による部分もあります。飼い始めた時期にもよるので、猫の性格を見ながら手懐けていきましょう。
親離れさせない
もともと甘えっ子な子猫時代から飼い始めたのならば、そのまま甘えていられる環境を続けてあげれば、大抵の猫は甘えっ子なまま育ちます。
「甘えた声で鳴けば、美味しいご飯がもらえる」と思えば、猫は甘えた声であなたにおねだりをします。自分でご飯を狩ろうなどという発想は身につけていないので、ご飯が食べたいときには、いつもあなたに甘えることになります。
猫が擦り寄ってきたら、撫でてあげたくなりますよね。猫は、してもらったことやされたことを、よく覚えています。「すり寄って行けば、気持ちのよいところを撫でてもらえる」と思えば、喜んであなたにスリスリしにいきます。
子猫は、親猫に依存することが、生きていく手段のひとつなのです。依存するということが、すなわち、甘えることにつながります。
危険な思いをさせない
危険を体験した猫は、いつでも恐怖に身構えるようになります。自分の身を守るためには、いつでも危険を敏感に察知し、素早く逃げられるように構えていなくてはいけないのです。
見に迫る危険を覚えてしまった猫は、気を抜いていられる時間が短くなってしまいます。甘えるということは、気を許すということですから、危険への察知も遅れます。危険を知っている猫は、気持ちの緩みを持つことが難しくなっていきます。
いつでも身構えてビクビクしている猫は、すこし痛々しくてかわいそうですよね。
一度体験してしまった危険を完全に払拭するのは難しいものですが、時間をかけて、「ここは安全だ」と覚え込ませてあげましょう。気を抜くことができれば、甘えっこな性格になってくれるかもしれません。
あなたがいれば十分だと、猫に思い込ませる
猫は、すこしばかり単純なところがあります。
いつでも食べ物に不自由することなく、あたたかくて安全な寝床があり、安楽に快適に過ごすことができれば、それだけである程度は満足して暮らしてくれます。退屈なのはつまらないので、おもちゃで遊んでくれればほぼ満点の生活です。
本来なら、子猫に安心できる生活を与えてくれるのは、親猫の役目です。生きるのに必要なものをくれるからこそ、子猫は親猫に依存し、甘えるようになります。
飼い猫に、ずっと甘えっ子でいてほしいのなら、その親猫の役割をあなたが代行しましょう。そして、その生活を与えてくれるのはあなたであることを、猫に覚えてもらいましょう。
猫は現金な面もありますから、自分にとって重要な人はよく覚えてくれますよ。
ドライな猫も、個性として楽しく暮らそう
甘えっ子な猫は、なんとも愛らしいものです。ゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄ってこられると、思わず庇護欲をくすぐられてしまいますよね。育て方を工夫して、いつまでも子猫のような甘えっ子でいてほしいものです。
ですが、猫自身にも、生まれ持った性質があります。
育て方によってある程度は誘導できますが、「飼った時点で、もう自立してしまっていた」という場合もあるでしょう。なかには、人間にお世話をされているのに、お世話をされているという認識がない猫もいるかもしれません。
けれど、そんな猫はそんな猫で、味わいのある性格をしているものです。「甘えっ子でないと嫌」と思わずに、その猫の個性を見つけてあげてください。
「あなたといることで、心地の良い生活ができる」と猫が思ったのなら、少なからず猫はあなたに懐いてくれるはずです。あなただけの猫との生活を、楽しんでみてくださいね。