トイレから飛び出して猛ダッシュで走り回ったり、激しく爪を研ぐ様子を見たことがある飼い主さんも多いかと思います。
これは通称「トイレハイ」とよばれる行動です。
愛猫の不思議な行動や仕草はとても微笑ましくかわいらしいですが、真夜中の排便後に行われる大運動会に寝不足になってしまうことも。
特に猫ちゃんを飼い始めたばかりの飼い主さんは、普段とちがう愛猫の様子にびっくりしてしまいますよね。
なぜ猫はトイレハイのように不思議な行動をするのでしょう。
テンションマックスで部屋中を走って暴れる!?トイレハイという行動
トイレハイとは、トイレの後にテンションが高くなり、走ったり鳴き声をあげる行動を指します。
主に排便の後にみられますが、たまにトイレの前からトイレハイになる猫ちゃんもいるそうです。実家の猫は排便をする前から走り回り、そのまま排便後もキャットタワーを駆け上っていました。
トイレハイは部屋中を駆け回るだけでなく、
- 高いところをよじ登る
- 爪とぎで激しく爪を研ぐ
- 発情期のように大きな声で鳴く
など、いつもよりもテンションの高いさまざまな行動が見られます。
さらに、排便のあとだけ豪快にトイレの砂をまき散らす猫ちゃんも。
慣れると当たり前に思えますが、私が初めてトイレハイを見たときは「何があったの!?」ととてもびっくりしたことを覚えています。
もちろん個体差はあるので、トイレハイがない猫ちゃんもいます。絶対にしなければならない行動というわけではないので、安心してください。
猫はなぜトイレの後にいつもより激しく動き回るのでしょうか。
排便後はテンションアップ!トイレハイの主な理由とは
排便後に部屋中を猛ダッシュ!長く猫を飼っている人にとって、トイレハイはもはや日常的な光景ですよね。
しかし実はトイレハイの理由は、まだきちんと解明されていないのです。
そのなかでも主な説をご紹介します。
家のなかだけで飼われている猫にも野生の習性が残っているから
トイレハイの理由のひとつに、排便後の安ど感があげられます。
本来は肉食の猫も、危険の多い野外では大型の動物に食べられてしまうかもしれない弱い立場の生き物です。
何が起こるかわからない外の世界で、排便という行為は無防備な姿をさらすとても危険な行為。大仕事が無事におわったぞという達成感や安ど感で、ついテンションが高くなってしまうのかもしれません。
また、猫にとっていつ外敵に襲われるかわからない排便をするトイレという場所は、非常に大切な環境です。
- トイレの場所がいつもとちがう
- 周囲の環境が騒がしい
- トイレが汚れている
など、排便前に鳴くトイレハイは、落ち着いて排便できる環境ではないよ!と飼い主さんに訴えているのかもしれません。
排便のあとにトイレから飛び出して走り回る理由のひとつに、無防備な排便中に外敵やほかの猫と遭遇してしまうと困るので、すぐにその場から立ち去るためという説もあります。
猫は常に縄張りを意識して暮らしています。それは生まれたときから家のなかだけで飼われている猫にも当てはまるのです。
野生で暮らしていたころ、猫は自分の縄張りとできるだけ遠い場所で排便していたので、早く自分の縄張りへ戻るためにダッシュしているのかもしれませんね。
さらに、猫は狩りをする動物です。
トイレの後に砂をかける行動は、排便のにおいで獲物に自分の存在を気づかせないためだともいわれています。
トイレの後に素早く立ち去ることで、自分のにおいの元から逃げて気配を消そうとしているのかもしれません。
どの理由にしても、家のなかで生まれて飼われている猫にも、野生の習性は強く残っているというわけです。
トイレハイの理由は爽快感?
排便後に走り回る姿は、どこかうれしそうに見えませんか?
トイレハイは単純に、排便後の爽快感から走り回っているという説もあります。
「スッキリした!」と走り回っているのなら、とてもかわいらしく思えますね。
またトイレ中は自律神経のなかでもリラックス感を司る副交感神経が働いています。緊張を緩めた状態で排便しているというわけです。
しかしトイレから出た瞬間に交感神経という、いわゆる動く神経のスイッチがオンになるのでテンションが高くなっているという説も。
みなさんも外出から戻った瞬間に便意を催すことはありませんか?
それは家の外で強く働いていた交感神経が、部屋のなかという自分だけのスペースに戻った瞬間副交感神経に切り替わるためです。
猫も同じように、リラックスしたトイレのなかの状態から、また外の世界へ走って戻ってきているのかもしれません。
こんなトイレはいやだというアピールの可能性も
猫は自分の便をきちんと埋める習慣があります。
もし猫が排便のあとに砂をかけずにトイレから飛び出し、そのままトイレハイに突入するようなら、そのトイレが気に入っていないというサインかもしれません。
排便前に激しく鳴くトイレハイも、このトイレが気に入らないというアピールの可能性が高いです。
トイレを大きめのものにかえたり、トイレの数を増やすことでトイレハイが見られなくなることがあるので、まずは今置いてあるトイレを見直してみてください。
特に多頭飼いの家庭は、トイレがひとつでは絶対に足りません。トイレは猫の数+1つ用意してあげましょう。
トイレが2個あれば、飼い主さんが留守のときに1つ目のトイレが汚れてしまっても、2つ目のきれいなトイレを使うことができます。
猫はとてもきれい好きで神経質な生き物なので、トイレが汚いことは大きなストレスの原因になります。
こまめに掃除し、排便しやすい環境をつくってあげてください。
猫は自分のにおいを隠したがる習性があるので、人がよく通る場所や洗濯機の横など大きな音がする場所は避け、猫が安心して排便ができる静かな場所にトイレを設置してあげましょう。
トイレハイは病気ではない
排便後、愛猫の突然のテンションの変化に「どこか痛いのかな?」心配になる飼い主さんもいるかと思います。
トイレハイは病気ではなく、習性からくる日常的な行動なので安心してください。
しかし、排便後にいつまでも泣き続ける場合は注意が必要です。
排せつ中に苦しそうな様子や
- 何度もトイレに行くけど便が出ていない
- 便の量がいつもより少なく乾いている
- 下腹部をさわると硬い何かがある
などの様子が見られた場合、便秘や胃腸疾患など、なにか身体に問題を抱えていることがあります。
また、トイレハイ以外に
- 発熱
- 食欲不振
- 鼻水
- 体重減少
- せき
などの症状が見られたら、すぐにかかりつけのお医者さんに診察してもらってください。
おしっこの後なのに鳴いているのもトイレハイ?
基本的に、トイレハイは排便の後に見られます。
排尿後も鳴いているようなら、膀胱炎の疑いがあるので注意しましょう。
膀胱炎は、排尿中や排尿後に痛みを伴うことが多いので、痛みからに駆け回ったり、大声で鳴いて訴えているのかもしれません。トイレハイのときよりも悲痛な鳴き声になっているので、よく聞いてあげてください。
膀胱炎にかかってしまったときは、尿の色が濃くなり、においも強くなります。
尿の回数も多くなるので、いつもと変わった様子がみられたらすぐにお医者さんへ連れて行きましょう。
また、膀胱炎になるとトイレとはちがう場所で排尿をすることもあります。
排尿後のトイレハイだけでなく、今までとはちがうさまざまな異常が見られたら膀胱炎の可能性が高いといえます。
膀胱炎には
- 膀胱炎
- 突発性膀胱炎
の2種類があり、膀胱炎は細菌感染によって引き起こされるので、検査ですぐに感染がわかり、治療をはじめることができます。
しかし突発性膀胱炎は細菌感染ではないので、尿検査で膀胱炎であることがわかりにくく、 症状から判断するしかありません。
突発性膀胱炎は、
- 過度のストレス
- 肥満
- 寒さ
- トイレが汚い
など、引き起こされる原因もさまざまです。
最低限の予防として、トイレを清潔に保ち、水をたくさん飲ませることを意識してください。
どんな病気にも当てはまることですが、ストレスなく健康に過ごすことがいちばんの予防になります。
膀胱炎は猫にとってとても痛く、つらい病気なので、排尿後の鳴き声をトイレハイだなと聞き流すのではなく、いつもと様子がちがうと感じたらすぐに病院で診察を受けましょう。
排便チェックで健康な毎日を
野生の習慣が残る猫にとって、排便は危険を伴う大仕事なのかもしれません。リラックスした環境で排便させてあげましょう。
ドーム型の屋根がついた個室のようなトイレの方が安心して排便できる猫ちゃんもいます。 試してみてあげてください。
また、排便後に鳴くトイレハイは、飼い主さんにうんちが出たよと知らせているという説もあります。
きれい好きな猫は汚れたトイレが嫌いなので、早くきれいにしてよと飼い主さんに頼んでいるのかもしれません。このトイレハイは、排便後の合図としてとても便利ですね。
汚れたトイレは猫のストレスにもなるので、特に多頭飼いの家庭はこまめな掃除を心がけてください。
排便の様子を飼い主さんが毎日チェックすることで、愛猫の体調の変化を敏感に感じ取り、疾患を防ぎましょう。