【猫のワクチンQ&A】予防できる病気と打ったあとの注意点

動物病院から言われるがままに、猫にワクチンを打っている方が多いと思います。

そのワクチンで何が予防できるのか、どんな効果があるのか、きちんと知っていますか。

ワクチンにはさまざまな種類があります。本当に自分の猫に合ったものなのか、どんな病気に効くのか、副作用のような影響はないのか‥きちんと理解するために、今回はわかりやすくまとめました。

ワクチンはなぜ必要?接種の意味とワクチンの役割

人間の場合、冬になるとインフルエンザを予防するためにインフルエンザの予防接種をする人も多いと思います。今年はワクチンが足りない!などというニュースを見かけたりしますよね

ウイルスの病気は薬で予防することができません。

あらかじめ弱まったウイルスを体内に取り込んでおき、次に同じウイルスが入ってきたときにすばやく撃退することができるようにするのがワクチンによる予防方法です。生物の体に備わっている免疫機能を利用しているのです。

少し専門的な言葉を使うと、あらかじめ体内に取り込むものを「抗原」といい、それに抵抗できるものを「抗体」といいます。

  1. ワクチンを打つことで抗体を体内に作っておく
  2. 次に抗原が入ってきたとき抗体がすばやく反応し抗原を撃退する

この「抗原抗体反応」によって、病気を予防したり、病気が発症しても軽くて済むようにするのがワクチンの役割なのです。

もちろん、猫のワクチンも同じような働きになっています。

猫のワクチンを成分で分けると、次の2種類となります。

不活化ワクチン

死んで毒性がないもの

  • 免疫力は弱い、持続期間も短いので追加接種が必要な場合もある
  • 予防対象の感染症を発症することはない
  • 副作用が出ることはまれ

生ワクチン

毒性を弱めたもの、弱いけど生きているもの

  • 強い免疫力がつく
  • 免疫が低下していると、感染症を発症することがある
  • 副作用が現れる可能性が高い

どちらもメリット・デメリットがあります。気になる方は、動物病院で勧められたワクチンがどちらであるのか確認してみましょう。獣医師に聞くか、ワクチンの証明書から名前を検索して調べることができます。

動物病院では、メインで使用しているワクチンの他にも別のメーカーのワクチンを保管している場合もあります。万が一、副作用が出た場合は次回から他の種類に変更するなどの対策が必要となります。

猫のワクチンの種類と、それぞれ効果がある病気

ワクチンの種類は大きく2つに分かれ、さらに予防する病気ごとに種類があります。

混合ワクチン

複数の病気をまとめて予防できるワクチンのことです。

種類 予防できる病気
3種 猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)
猫カリシウイルス感染症(猫カリシウイルス1種類)
猫汎白血球減少症(別名:猫パルボウイルス感染症/猫伝染性腸炎)
4種 3種+猫白血病ウイルス感染症
5種 4種+クラミジア感染症
6種 5種+猫カリシウイルス(3種類)

猫カリシウイルス感染症には多くの型があり、3種と4種では1種類、7種では3種類の猫カリシウイルスを予防できます。

単体ワクチン

1つの病気のみを予防できるワクチンのことです。

  • 白血病ワクチン(猫白血病ウイルス感染症)
  • エイズワクチン(猫免疫不全ウイルス感染症)

猫エイズウイルスには、遺伝子構造によって6つのタイプが存在しますが、これに対して猫エイズワクチンが効くのは2タイプだけと言われていて、ワクチンを接種しても全く効果がない場合があります。

ワクチンで予防できる病気を勉強してみましょう

ワクチンの種類をきちんと理解するために、少し難しいかもしれませんが、予防できる病気のことも勉強してみましょう。特に、病気の症状と感染経路を覚えておくとよいでしょう。

病名 略称 症状 感染経路
猫ウイルス性鼻気管炎 FVR、ビキ 風邪症状、結膜炎など 接触、飛沫
猫カリシウイルス感染症 カリシ 風邪症状、口腔内潰瘍など 接触、飛沫
猫汎白血球減少症 猫パルボ 白血球減少、下痢など 母猫から、経口、経鼻
猫白血病ウイルス感染症 FeLV 白血病、リンパ肉腫、免疫抑制など 唾液、母猫から
猫免疫不全ウイルス感染症 FIV、猫エイズ 免疫抑制、口内炎など 濃厚な接触、咬傷
猫クラミジア感染症 クラミジア 結膜炎など 濃厚な接触、母猫から

(クラミジアはウイルスではなく最近の一種、まれに猫から人へ移る:人獣共通感染症)

FVRやカリシは、いわゆる猫カゼです。仔猫が鼻水をたらしたり目をしょぼしょぼさせたりしている姿を見たことがあるかもしれませんが、この病気の可能性があります。

FeLVは、感染経路をみると唾液から移ることがありますので、他の猫と同じお皿を使っていたりすると感染する可能性が高くなります。

FIVはエイズと言われているので少し怖いイメージがあるかもしれませんが、感染経路は限られていますので、室内飼いで他の猫と接触しない猫はほとんど問題ないでしょう。また、この2つは事前にウイルスのチェック(血液検査)をしたうえで打つ必要があります。

実際のところ、エイズワクチンは一般の家庭で飼われている猫には向かないと思われます。

先ほど説明したように、ワクチンのタイプと血液検査で出た抗体のタイプが同じとは限らず、世界的なガイドライン(WSAVA世界小動物獣医師会)でも、2010年では「科学的な根拠に乏しく接種が推奨されないワクチン」と位置づけられていました。

ようやく2015年になって、「ライフスタイルによって感染リスクがある猫に推奨されるワクチン」となりました。日本では特に、シェルターや野良猫の管理など特別なところで使用されていることが多いようです。

自分の猫にはどのワクチンがいいのか判断する方法

ワクチンで予防できる病気の種類と感染経路を理解できたでしょうか。病気が予防できるなら、全てのワクチンを打ちたいと思うかもしれません。

ただ、経済的な負担もありますし、猫の体への影響もありますので、必要最小限で自分の猫に合ったワクチンを選んであげましょう。

簡単な方法ですが、ワクチンを打ちたい猫は次のどちらに当てはまりますか?

A
  • 完全室内飼い
  • 1匹のみ
B
  • 外に出しているか
  • 多頭飼いか(同居している猫はウイルスを持っているか)
  • 家以外の場所に行くこと(旅行に一緒にいく、ホテルに預けるなど)が多いか
  • 外からの猫を預かることが多いか

Aの場合は3種混合ワクチンのみで十分だと思われます。Bの場合はプラスアルファの予防も必要になってきます。

ワクチンで予防できない病気

猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気があります。コロナウイルスが体内で突然変異をして病気になります。きっかけはストレスだと言われており、特に多頭飼いなどの環境で多くみられます。

症状のタイプは2つに分かれますが、主にお腹に水がたまる症状と、神経症状、目の疾患、消化器疾患などの症状が現れるタイプがあります。

一番やっかいなのが、日本で認められているワクチンがなく、治療方法もないということです。症状をおさえるための対処療法のみとなります。

せっかく譲り受けた仔猫がこの病気になり、あっけなく逝ってしまった。という話をよく聞きます。有効的なワクチンがないためか、この病気で残念な最期になる猫が多く感じられます。

打ったあとは安静にして副作用に注意しましょう

猫ワクチンによる副作用の発生率は0.1%以下という報告があるように、極端に神経質になる必要はありません。ただ、猫の体質や当日の体調しだいで副作用が出る場合もあります。次の点に注意しましょう。

打ったあと30分は目を離さない

ごくまれにワクチンを打ったあとにアナフィラキシーショックを起こすことがあります。よだれが出たり顔が腫れたりします。急性の場合は30分以内に症状が出ると言われていますので、打ったあとは動物病院からすぐに帰らずに、しばらく待合室で待機してもいいでしょう。

当日は激しい運動をさせない

相手は猫ですから、「○○ちゃん、今日はお注射したからお遊びはなしよ」「はーい」とはいきません。若い猫は遊ぶことが大好きですから、走り回ってしまうでしょう。

無理に止めることはしなくていいですから、こちらから猫じゃらしなどで遊びに誘うのは控えたほうがいいでしょう。興奮して熱が上がってしまうかもしれません。

シャンプーはしない

猫はシャンプーが嫌いなことが多いので、ストレスを与えてしまいます。また体温も上がりますので、ワクチン後は避けましょう。

打った場所を気にする

打った場所に痛みが出たり腫れたりすることも副作用の1つです。しきりにその場所をなめたり気にしたりする場合は、エリザベスカラーなどの対策が必要になるかもしれません。獣医師に相談しましょう。

打った当日でなくても、翌日以降に元気がない、食欲がないなどの症状が出る場合もあります。直接ワクチンの副作用ではなく、動物病院に行ったストレスで体調不良になったのかもしれません。

先ほども書きましたが、万が一、副作用が出た場合は、打ったメーカーのワクチンが合わない可能性もあります。次回から他の種類に変更するなどの対策が必要となりますので、必ず獣医師に報告しましょう。

猫のワクチンについてよく聞かれる質問4つ

猫のワクチンは一番基本的な病気の予防方法ですが、個体差もあり、日々研究開発が進んでいますので、さまざまな疑問点が出てきます。よく聞かれる質問をあげてみました。

Q1 室内飼いでもワクチンは必要ですか?

A1 必要です。

先ほどのAのケースになります。直接他の猫との接触がないので、ワクチンは必要ないと思われますが、人間の衣類や靴にウイルスをつけてしまう場合もあります。

猫好きな飼い主さんですから、野良猫を見つけると触ってしまうかもしれません。その手で飼っている猫に触り、猫がそこをなめることで感染する場合もありますので、ワクチンは必要だと考えます。

Q2 初めてのワクチンは何回打てばいいの?

A2 世界のガイドラインでは、生後8~9週齢で1回目、その後12~13週齡で2回目、14~16週齡で3回目、その後は1年おき、もしくは3年おきに打つとよいと言われています。

生年月日が分かっていて、母猫の免疫を得られる初乳をきちんと飲んでいる仔猫については、この周期でワクチンを打てば問題ありません。ただ、野良猫など保護された猫で仔猫時代の状況が分からない猫については、このプログラムが当てはまらない場合があります。

獣医師と相談のうえ、ワクチンを打つ時期を決めていくことになります。

Q3 猫の体のどこに打つべきですか?

A3 こちらも世界のガイドラインでは、肩甲骨の間:×、後ろ足の先:○、尻尾:◎となっています。

これまでは、痛みが軽減されるという理由から肩甲骨の間に打つことが多くありました。

実は、ワクチンなどの注射を打った場所に肉腫(筋肉や骨などにできるガンのこと)ができるという事例がまれにあるのです。肩甲骨の辺りに肉腫ができると切除するときに、最悪腕を取らなければならない場合もあります。

腕(前肢)を切除するリスクより、足(後肢)や尻尾の方が負担が少ない、という理由から打つ場所も変わってきています。日本では臀部(おしり)に打つことが多いようです。

Q4 死ぬまで毎年打たないといけないの?

A4 打たなくてもいいです。

年に1回打つように言われることが多いですが、先ほど説明したとおり、最近の研究では3年に1回でも効果があるという結果もあります。高齢になってくると他の病気のケアも出てきますので、優先順位を考えながら打つ必要があります。

私の猫は11歳です。前回のワクチン接種のときに「もう3年に1回くらいでいいよ。」と言われました。先日、3年経ったので再度獣医師に確認しましたが「高齢だから、あの子はいいです!」とあっさり言われてしまいました。

世界のガイドラインでは、仔猫のときからのワクチン接種がきちんと行われていて長期間完全室内飼いの猫は予防の持続期間は長く続くと言われています。

動物病院によっては、診察料を確保するために継続的にワクチン接種を勧めるところもありますが、かかりつけの動物病院の獣医師は、利益重視ではなくそれぞれの猫を見極めて判断しているのだと思いました。

ワクチン接種の必要性を考えながら健康管理をしましょう

猫のワクチンには各種あり、予防できる病気も分かれています。また副作用などの注意点もあります。獣医師任せにしないで、不明な点は動物病院に確認し、自分の猫に合ったワクチンを選んであげるようにしましょう。

獣医学は日々進歩しています。最新情報や経験値は現場にあります。なかなか聞きづらいこともあるかもしれませんが、相談しながら猫のためのケアに努めていきましょう。

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