猫へのビオフェルミンの与え方。動物病院でも使用される薬の活用法

人間がお腹の調子を悪くした時、手軽に飲むことができるビオフェルミン。人間にとって副作用がほぼなく、薬の成分もほぼビフィズス菌をはじめ乳酸菌で構成されていることから、猫にあげてもいいのでは?と考える飼い主さんも多いようです。

実際獣医さんから処方されたり「とりあえずビオフェルミンをあげてみて」とおすすめされることもあり、猫のお腹の調子で悩んでいる飼い主さんにとっては興味深いお薬ですよね。

でも、いくらビオフェルミンとはいえ、人間用のお薬であることには変わりません。そこで本当に猫にビオフェルミンを与えても平気なのか、もし与えるとしたらどのようなことに注意すればいいのかなどをまとめました。

人間用のビオフェルミンは、実は動物病院でも使われていた!

猫にビオフェルミンを与えると聞いて、飼い主さんが一番不安になるのはビオフェルミンが「人間用の薬」であるという点ではないでしょうか。

ビオフェルミン商品イメージ
(出典:新ビオフェルミンS-ビオフェルミン製薬株式会社 より)

しかし、実は動物専用の医薬品は意外と数が少ないのです。動物病院に行くと様々なお薬を処方されますが、実は人間用に開発された薬を、猫用に量を減らした上でそのまま使っているということもしばしば。

もちろん猫に安全な薬、安全な量しか処方されることはありませんが、少なくとも「人間用」というだけで猫に危険かというと、決してそういうわけではないのです。

そして「ビオフェルミン」もまた、人間用ではありますが、猫にとって安全なお薬のひとつです。

動物病院でたまに処方されるビオフェルミンも、実は量が調節されているだけで人間用のビオフェルミンと全く同じものになります(病院あるいは症状によっては「動物用ビオフェルミン」が処方されることもあります)。

用法、用量に注意すれば、ビオフェルミンを与えることで、猫の腸内環境を整える効果が期待できるでしょう。

注意!猫にあげてはいけないビオフェルミンもある!

「ビオフェルミン」を製造、販売するビオフェルミン製薬では、実は「ビオフェルミン」と名が付く商品を何種類も扱っています。

その中には「ビオフェルミン下痢止め」や「ビオフェルミン止潟薬」など、同じビオフェルミンでも猫に処方されるビオフェルミンとは成分が全く違うものも存在します。

これらの製品については猫にとって余計な成分が含まれているため、猫に与えるのは控えましょう。

猫にあげてもいい人間用のビオフェルミンは「新ビオフェルミンS(指定医薬部外品)」もしくは動物病院で処方される「ビオフェルミンR(医療用医薬品)」です。

「たまたま家にあったし同じビオフェルミンなんだからいいだろう」と与えてしまうと大変なことになりかねませんので、与える際は製品名に十分注意してくださいね。

ビオフェルミンRとSとの違いはずばり「耐性乳酸菌」か否か

猫にあげてもいい人間用の「新ビオフェルミンS」と「ビオフェルミンR」。せっかく与えるのであれば動物病院と同じ「ビオフェルミンR」をあげたいという飼い主さんもいるかもしれません。

しかし、一般の飼い主さんがこの「ビオフェルミンR」を薬局やネットショップなどで探しても、基本的に入手することはできません。「ビオフェルミンR」は病院でしか扱われていないお薬だからです。

そのため一般の飼い主さんが入手できるのは、薬局でだれでも購入できる「新ビオフェルミンS」だけとなってしまいます。

しかし、同じビオフェルミンでも名前が違う以上、与えても大丈夫なのか、また2つにどのような違いがあるのか気になるのではないでしょうか。

実はこの2つのビオフェルミンにおける最大の違いは「抗生剤に対する耐性があるかないか」です。

例えば動物病院で抗生剤が処方される場合、抗生剤は猫の胃腸のあらゆる細菌を死滅させてしまいます。悪い菌はもちろん、乳酸菌などの良い菌まで死滅させてしまうため、抗生剤を与えると猫にとっては下痢などの原因となるのです。

そこで下痢などの副作用を防止するために一緒に処方されるのが「ビオフェルミンR」となります。ビオフェルミンRには特別に、抗生剤に対する耐性を持つ乳酸菌が含まれているので、抗生剤と一緒に使っても効果を見込むことができるのです。

つまり、「ビオフェルミンR」は基本的に獣医さんが抗生剤と一緒に使うためのお薬なので、動物病院でしか扱っていないというわけです。

一方、誰でも入手が容易な「新ビオフェルミンS」にはこの抗生剤に対する耐性がありません。抗生剤と一緒に飲んでしまうと、抗生剤が新ビオフェルミンSに含まれる菌まで殺してしまうので、効果を得られなくなってしまいます。

「新ビオフェルミンS」を与えるのは他に一切お薬をあげていない時だけにしましょう。

猫に安全な分量を守ろう!ビオフェルミンの猫への与え方

便秘、下痢などが続く場合、ビオフェルミンを与えることで、人間に使う場合と同じように猫にも整腸作用を期待できます。

しかし、いくら副作用が少ないとはいえビオフェルミンはれっきとした薬です。使用の際は以下のように、正しい用法・用量を守って与えるようにしましょう。

ビオフェルミンの用量

猫にビオフェルミンを与える際の、1回あたりの適量は以下のとおりです。

錠剤:4分の1錠~2分の1錠
細粒:付属の匙1杯

上記を目安に、最初はやや少なめから始めましょう。

回数は1日2回、朝晩の食事の時を見計らって与えるようにしてください。タイミングとしては食後が理想的ではありますが、毎回猫を保定して投薬していては猫もストレスになってしまいます。

食事に混ぜるなどして、自分からぺろりとたいらげてくれるような工夫をするのがおすすめです。

なお、上記の用量で効果が見られない場合は、自己判断で増やす前に必ずかかりつけの獣医さんに相談してください。

用法を守らないと効果減!猫にビオフェルミンをあげる時の注意点

手軽に与えることのできるビオフェルミンですが、だからといって適当に与えているときちんと効果を発揮できない場合があります。ビオフェルミンをより効果的に使うためのポイントや、使用時の注意点をご紹介します。

空腹時にはあげないようにしよう

人間と同じように、猫も空腹時には胃酸が強くなります。しかし、ビオフェルミンの主成分である乳酸菌やビフィズス菌は胃酸に弱い性質です。

そのため、空腹時にビオフェルミンを摂取してしまうと菌の働きが弱くなってしまいます。より良い効果を得るためにも、ビオフェルミンは必ず食後、あるいは食事に混ぜて与えるようにしましょう。

最初はごく少量から与えて様子を見よう

ビオフェルミンはビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌で構成されているため、副作用が少ないと考えられています。

しかし、副作用がないことと、猫の体に合うことはまた別の話です。実は、人間でも「ビオフェルミンで下痢を止めたら逆に便秘気味になった」という人は結構います。

猫も同じように、ビオフェルミンを飲み続けてもなにも様子が変わらない、あるいは便の状態が悪化する場合も考えられます。最初はごく少量から与えるようにし、便の様子を見ながら徐々に適量へと増やしていくとよいでしょう。

即効性のあるものではないので長い目で見よう

ビオフェルミンはご存じのとおり整腸剤です。飲み続けることによって次第にお腹の調子が良くなってくるというタイプの薬であり、頭痛薬や咳止めなどのような即効性はありません。

猫によって半日ほどで効果を感じられる時もあれば、1ヶ月飲み続けて徐々に症状が改善してくる場合もあります。ビオフェルミンを猫に与える際は長い目で効果を確認するようにしましょう。

効果が現れないときは病気の可能性も疑おう

ビオフェルミンを与え続けているにも関わらず、全く症状に改善が見られない、あるいは悪化したという場合は、そのままにせず必ず病院に相談しましょう。

重大な病気の症状のひとつとして、下痢や便秘となっている場合も考えられます。その場合、根本的な原因の病気を治療しない限りビオフェルミンだけで治すことはできません。

効果を感じられない時は、ビオフェルミンの量を増やしたり他の整腸剤を試したりする前に、まず病院で診てもらった方が安心です。

ビオフェルミン以外にもあった!猫の腸内環境のためのサプリメントいろいろ

猫のお腹の調子が悪い時、手軽に使うことのできるビオフェルミンですが、中には合わない場合も考えられます。また、薬であることからできればあまり常用したくないという飼い主さんもいるでしょう。

実は、ビオフェルミン以外にも乳酸菌が配合してある猫用の製品が多数販売されています。ビオフェルミンで思うような効果を得られなかった場合、以下のような製品を使ってみるのもおすすめです。

なお、以下で紹介する製品は全てビオフェルミンのような薬ではなく、サプリメントになります。

トーラス 3種類の乳酸菌 ヨーグル2

トーラス 3種類の乳酸菌 ヨーグル2商品イメージ

ヨーグルツー、と読みます。

ビオフェルミンは味も匂いもほとんどしませんが、敏感な猫は気づいてしまいます。そこであえておすすめしたいのが、味付きのサプリメントです。

意外にも、ヨーグルトが好きで自分から舐めたがるという猫は結構います。本物のヨーグルトだと乳製品であることから与えるのに不安がありますが、この製品なら猫用として販売されているので安心です。

タブレット状になっているため、指やすり鉢、ピルカッターなどを利用して細かくしてから使用します(そのままの大きさでは猫が飲み込めません)。薬嫌いな猫でも嫌がらずに食べてくれるかもしれません。

青瀛堂 乳酸菌plus食物繊維

青瀛堂 乳酸菌plus食物繊維商品イメージ

「乳酸菌plus食物繊維」はその名の通り乳酸菌だけでなく食物繊維も配合されています。粉末状になっており、付属のさじを使っていつものごはんに混ぜてあげるだけで、手軽に与えられるのが特徴です。

ドライフードの場合は皿の底に残ってしまうため、ウェットフードに混ぜて与えるとよいでしょう。

ビオフェルミンの細粒タイプと使い勝手が似ているので、「粉末タイプは便利だったけど、ビオフェルミン自体がどうも合わないみたい……」という飼い主さんに試してもらいたい製品です。

トーラス アミノス

トーラス アミノス商品イメージ

「アミノス」は、乳酸菌ではなく「乳酸生産物質」つまり、乳酸菌がお腹の中で作り出す成分を直接摂取できる製品です。こちらは液体タイプであるのが最大の特徴。

ビオフェルミンの場合はどうしても粉末、あるいは錠剤のまま与えることになるため、猫に嫌がられることもしばしば。そんな時、こちらの製品を使うといつものフードに1、2プッシュするだけでいいためとても便利です。

ドライフードでもあまり違和感を感じず食べてもらうことができます。

ビオフェルミンに依存せず、正しい使い方で猫の健康を守ろう!

ビオフェルミンは正しい用法・用量を守って使えば、人間と同様に猫の腸内環境改善にとても役立つお薬です。

しかし、薬はあくまでも薬です。より猫が消化しやすいように配慮されたフードや、猫のお腹へのマッサージ、あるいは運動や保温、いつでも清潔なトイレ環境を維持するといったことでも、腸内環境を改善することができます。

普段から猫の胃腸に優しい環境を整えておき、ビオフェルミンは必要な時にだけ使うようにすることも大切です。

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