猫の安楽死と私の体験談。最後の選択を後悔しないためにできること

猫の安楽死と聞くと「猫の命を人間の勝手で奪ってなにごとか!」「治療するお金が惜しいから殺すというのか!?」と、マイナスなイメージが湧いてくるかもしれません。

しかし、愛猫に生きてほしい、病気や怪我が治ってほしいと願っていても、状況によっては安楽死を選択したほうがいいのでは?という考えが浮かぶこともあります。

安楽死を選択するほうが幸せなのか?それとも苦しくても最後まで生きるほうが幸せなのか?

今まさに選択を迫られている方も、これからそのような状況になるかもしれない方にも知ってほしい安楽死について今回は私の体験談をもとにお伝えしましょう。

猫の安楽死の選択に直面した体験談

私が安楽死の選択を迫られたのは、生後半年の愛猫がFIP、猫伝染性腹膜炎に感染しているとわかったときでした。発見をしたときはすでに末期の状態で、インターフェロンを投与しましたが回復することはありませんでした。

FIPはまだ治療法が確立されていない病気のため、ステロイド剤やインターフェロンを投与して症状が楽になることはあっても、治ることはないと言われました。

痛い注射やツライ思いをしている愛猫の姿はとても見ていられるようなものではなく、泣きながら愛猫と過ごしていた記憶があります。そうして発見から2日目、自分で立ち上がることすらできなくなった愛猫を見た獣医師から1つの選択肢が与えられました。

「安楽死をするか、このまま延命治療を続けるか」という究極の二択です。それまでの私は、安楽死なんて猫の命を冒とくしている!生きている限り最善を尽くして最後まであきらめないことこそ飼い主の責任と思っていました。

しかし、いざ自分がその立場になると「こんな苦しみ続けて生きながらえさせて、果たして愛猫は幸せなのか?」という思いが芽生えていました。

愛猫の主治医は猫を深く愛している先生のため、軽々しく安楽死なんて言葉を出す先生ではないことはわかっていました。

だからこそ「手は尽くしたけど、これ以上どうしようもないんだ」というのがわかったのと同時に、獣医師が「これ以上苦しめないために、安楽死という選択もある」というのを教えてくれたのもわかりました。

目の焦点も合わず、弱弱しく息をする小さな愛猫を見つめながら私はそのとき選択はとてもじゃないけどできそうにありませんでした。しかし、愛猫を自分の判断で見殺しにはできないという思いから私は延命治療を選びました。

結局、愛猫にインターフェロンを投与してもらいましたが効果はなくその翌日の早朝に私の腕の中で息を引き取りました。今でも愛猫の最後の姿を思い出すと「本当は苦しまないように安楽死を選択してあげたほうが良かったのでは?」という後悔が押し寄せてきます。

ただ、あのとき安楽死を選択していたら、それはそれで後悔をしていたような気がします。

愛猫の死の間際に直面をしたとき、延命治療か安楽死の選択に迫られたとき、普段考えていたこととは全く違う思いや考え、悲しみが押し寄せて、しっかり考えることも、後悔のないように思案する時間もありません。

だからせめて、今回の安楽死のメリットとデメリットを知っておき、その選択のときがきたときに後悔のない方法を選んでいただければと思います。

ただ一つお伝えしておきたいのが安楽死は最後の手段だということです。動物は命がある限り必死に生きようとします。

そのため、どんなに絶望的な病気でも持ち前の生命力で回復することもありますし、動物病院で治らないからと安楽死を勧められたとしても、セカンドオピニオンを受けたら手術をすればすぐに治る病気だった!なんてこともあります。

また、猫が高齢だから、病気の看病が面倒だから、お金がかかるから、何だか生活がしんどそうだから、なんていう身勝手な理由で安楽死という選択は選ばないでください。

安楽死とは最後の手段です。今回の記事は安楽死を推奨する記事ではありません。最後の時に直面したときに、後悔のないように選択をしてもらいたいがために執筆をさせて頂きました。

前置きが長くなりましたが、猫の安楽死か延命治療か、今迷っている方も、今は元気な愛猫を飼っている方も、ぜひ考えて頂ければと思います。

猫の安楽死のメリットとデメリット

安楽死という言葉を見ただけではメリットと言われてもイヤな気持ちしかしませんよね。しかし、安楽死というのは状況によっては決して間違った選択ではありません。

愛猫のことを愛しているからこそ、愛猫がこの世で一番大切だからこそできる選択だともいえます。

しかしその反面、安楽死というのはデメリットも存在しています。まずは安楽死のメリットとデメリットを見ていきましょう。

安楽死のメリットは猫の苦痛を和らげられる

安楽死を進められるくらいの病気だとすると、愛猫の体には相当の苦痛があると思われます。息をするのもしんどく、歩くことも遊ぶことも、ごはんを食べることも水を食べることもできない、もしかしたら意識すらないかもしれない。

そんな愛猫の生きているだけで苦しいという状況を和らげてあげられるのが、安楽死という選択です。猫は自分の命がある限り懸命に生きようとしますし、飼い主が生きてと願えば死よりも苦しい思いをして必死に生きようともがきます。

そんな愛猫に「もう苦しまなくていいよ」という気持ちをこめて安楽死を選択するのは、場合によっては愛猫に愛があるからこそできる選択だと言えるかもしれません。

また延命治療を行うことで愛猫にツラく苦しく痛い思いをさせたくないという思いもそこにはあるでしょう。

大切な愛猫だからこそ、死ぬときは穏やかに苦しまないように虹の橋を渡ってほしいという思いも、愛猫への愛情といえるかもしれませんね。

他にも、安楽死を選択するというのは愛猫の死の瞬間に立ち会えるという大切な事項もあります。ペットロスに陥る原因が「愛猫の死に目に立ち会えなかった」というものが多いのも事実です。

愛猫を入院させて延命治療を行ったとしても、入院中にたった一匹で死なせることになってしまった。そんな後悔をしたくないという方は、安楽死を選択する意味はあるとも言えます。

安楽死のデメリットは人間の判断で愛猫の命を絶つという責任

安楽死を選択するということは、人間の身勝手な判断で愛猫の命を絶つ責任が生じるということです。もし安楽死を選択せずに、治療を続けていたら愛猫の命は奇跡的に救えたかもしれない。

一つ目の病院で治らないから安楽死を勧められて、その通りに従ったけどセカンドオピニオンを受けていたらもしかしたら助かったかもしれない。愛猫はもしかしたら苦しくてもツラくても一分一秒でも長く生きたいと望んでいたかもしれない。

そんな「かもしれない」という思いと、愛猫の死を飼い主が決めたという事実、それらが相まって、安楽死を選択した飼い主は重いペットロスに悩まされる傾向にあります。

また、実際にあきらめずに治療を続けていたら治る可能性があったと、安楽死を選択した後に知ったら後悔をしてもしきれませんよね。

安楽死とは人間の身勝手な判断で、猫の尊い命を奪う行為だと感じる人もいますし、実際にその考えは間違いではありません。

ただ、安楽死はしたくないからといって、愛猫が苦しんでいるのに延命治療を続けることが果たして愛猫の幸せなのか?その点を考えて、選択をして頂ければと思います。

安楽死の流れと費用

愛猫家としては考えたくもないでしょうが、もし安楽死を選択せざるを得ない状況になったときのために簡単に安楽死の流れをお伝えしましょう。

動物病院によりますがまず、安楽死を飼い主が選択すると安楽死用の処置室に連れていかれます。小さな病院の場合は、処置室でそのまま行われることもあるようです。

次に後ろ足の静脈にカテーテルを挿入し、カテーテルの状態を確認するために生理食塩水が注入されます。その後、リラックスさせるための薬剤が投与され猫が落ち着いたのを確認したら、安楽死用の薬剤が注入されます。

安楽死用の薬剤は注入されるとすぐに心臓、脳、内臓器官に作用し、一瞬で停止させます。そのため苦痛はなく安らかに眠るように猫生に幕を落とします。料金や費用については動物病院によって異なりますが、5000円~30,000円ほどです。

この金額を安いと思うか、高いと思うかはその人の感じ方でしょうが、私は命を奪うにしてはあまりにも安すぎるような気がして切なくなります。皆様はどう感じますか?

猫の命の重さを十分に理解しているからこそ考えたい安楽死

安楽死と聞くとマイナスなイメージしかありませんし、安楽死という選択をする人は悪だ!と感じる方もいるでしょう。

実際に「世話が面倒になった」「いらなくなった」「うっとうしくなった」なんていう身勝手な理由で動物病院に安楽死をお願いする人もいるそうです。

愛猫家である皆様からすれば、そんな身勝手な人から猫を守るために安楽死は禁止にすべき!という気持ちになるかもしれませんね。

ただ、安楽死という選択は時と場合によっては、猫のためにも飼い主のためにも救いになることもあるかもしれません。

私は愛猫を安楽死させずに延命治療をしたことで、亡くなるまでの数時間ツラそうにしていた姿を思い出して、どこか後悔をしています。ただ、愛猫は最後まで精一杯生きられてよかったのかもしれないという思いもあります。

安楽死とは決して軽いテーマではありませんし、安楽死を推奨するつもりも、安楽死は素晴らしいなんていうつもりもありません。逆に安楽死は絶対に選択してはいけない悪魔の所業ともいえません。

ただ、後悔をしないためにも安楽死という選択があることは知っておいてもいいかもしれません。皆様は安楽死についてどう思いますか?

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