ワイルドな猫種ソコケの特徴や飼い方。元はアフリカの森の野生猫!

なんとも耳慣れない響きの文字列、ソコケ。これはコケではなくて猫の種類の名前です。

スレンダーなボディにしま模様の被毛が美しい猫ですが、彼らは人の手でそのように改良されてきたわけではなく、アフリカの森の中で何百年も前から生息し続けてきた猫の一族です。

サバンナ仕込みの大きな耳と長い後足、ジャングル向きの薄くなめらかな被毛を持つ彼らは、現地の言葉で「樹皮みたいなの」と呼ばれて古くから親しまれていました。

どんな猫なのでしょうか。野生に生きてきたのにサーバルのようなワイルドキャットではなくイエネコとはどういうことなのでしょうか。アフリカの森からやってきた神秘的な猫ソコケについてご紹介します。

ソコケの歴史

アフリカ、と言えば見渡す限りサバンナ!というイメージが強いのではないでしょうか。東アフリカに位置するケニアもご多分に漏れず半砂漠やサバンナが多くの面積を占めていますが、西には高山森林もありますし、東の一部は海に面していて豊かな熱帯雨林が展開しています。

ケニア第2の人口を誇る海沿いの都市モンバサから北へ110kmほどのところには東アフリカ最大の沿岸森林があり、希少な絶滅危惧種の最後の生息地でもあることから国立公園として保護されています。このあたりには古くからギリアマ族と呼ばれる人たちが暮らしていました。

ケニアには42もの民族が多様に暮らしていますが、中でも沿岸部に住む似通った文化を持つ9つの部族の総称をミジケンダ(9つの町)と言い、ギリアマ族はそのうちの一つに含まれています。

彼らは身近な森に棲んでいる猫の事を「Kadzonzo」(あるいは「Khadzonzo」)と呼んでいました。これは「樹皮のように見える」という意味です。

なるほど木の皮にも似た茶色いしま模様を持つこの猫種は野生の猫科肉食動物とはいえ脅威となるほど大きくなく、ネズミなどを狩ってくれる存在として農耕民族であるギリアマ族と共存していました。

ここからお話は現代に移ります。競走馬のブリーダーであり、野生動物のアーティストでもあるJeni・Slaterはこのギリアマ族の森に隣接したココナッツ農園を営んでいました。

1978年のある日、庭師が農場内にあるSlater家の裏、大きな木の下の穴に猫がいるのを発見しました。それは母猫とまだ授乳期の子猫たちで、小さな頭に大きな耳、珍しい毛色に普通の猫とは違う雰囲気を感じたSlaterは子猫の中から雄雌2匹を選んで飼う事にしました。

漁師をしていた夫と協力して猫たちのために魚を用意したのでそれからも自発的に”森の猫”はSlater家に集まってきました。最初の2匹から生まれた子猫たちや後からやってきた猫たちの美しさはSlater家の客人たちをも魅了し、中には猫を譲り受ける人もいたようです。

デンマーク人のGloria・Moeldrupもその一人。1984年、彼女は休暇を利用してケニアのSlater家を訪れ、帰国する際に1対のつがいの猫を贈られます。これはこの稀有な猫たちが、土地開発で徐々に縮小していく森の環境下で絶滅することを案じ、本格的な繁殖プログラムに乗り出すためでもありました。

デンマークに渡った2匹の猫JeniとMzuriはコペンハーゲンで初めてキャットショーに出品され、翌年には最初の子猫をもうけます。1990年代には更に多くの猫が追加で輸入され、ケニア国外で繁殖し、純血の種として固定化していきました。

当初はアフリカンショートヘアと暫定的に呼ばれていましたが、1993年にFIFeに登録されるにあたっては品種規格や猫種としての名前を決めなければなりません。

彼らがやってきた森の名前はアラブコ・ソコケ。その森の名前に因んでソコケと命名されました。猫種ソコケとして認定される以前の在来種としての森の猫について語るときには今でも「Kadzonzo」の表記が使われます。その後TICAやCCA、UFOなど4つの猫種公認団体において登録を得ました。

ソコケの特徴や性格

ソコケは平均体重が3~5kgと標準的な大きさで体型はほっそりとしたオリエンタルタイプです。

非常にスレンダーでしなやかな体つきをしていますが、しかし、華奢ではありません。全身が筋肉質でジャンプもダッシュも得意、先の細った長い尻尾までも筋肉に支えられて力強く動くため「鞭のような」と称されます。

四肢もすらりと細く、つま先立ちのような特徴的な歩き方を見せ、興奮したときやテンションが高まっている時により顕著になります。

くさび型の小さな頭部に目の形はアーモンド型、カラーリングは淡い緑からアンバーの範囲で様々ですが、品種としての公認色は黄色と緑色です。

小顔に反して大きな耳は非常に可動域が広く、先端に丸い房毛をわずかに帯びています。後ろ足が発達していて前足より長く、首も平均的な猫に比べて長めです。

大きな耳と長い後足に長い首と言えばアフリカの野生猫サーバルキャットを彷彿とさせます。大きな耳は熱の発散に役立ち、発達した後足は平原や森を駆け回るのに適しています。つまりソコケには暑い地域に暮らす野生猫の特徴が強く表れているんですね。

アフリカ仕様なのは体つきだけではありません。短く薄い被毛はアンダーコートをほとんど持たず、熱の発散に特化しています。公認されている基本色はブラウンタビーで茶色の濃淡のみで構成されたしま模様はまさに「樹皮みたい」です。

稀に誕生する白い毛色の個体はスノーと呼ばれ、足と尾にわずかにしま模様が浮かんだグレーベージュの被毛に青い目をした美しいカラーリングですが、遺伝的な不安要素の懸念から公認色にはなっておらず、繁殖も推奨されていません。

“Kadzonzo”時代には小川を泳いで渡る姿も目撃されているように、猫には珍しく水を怖がりません。

平均寿命は11~15歳。母猫は子猫が離乳食に移行してからも数か月は授乳を続け、父猫も同居している場合には育児に参加することもあり、ペアの仲は非常に親密になります。

この愛情深さは同種のみならず同居の他のペット、飼い主やその子供にも発揮され、上手に付き合っていけます。新しい環境にも慣れやすく、活動的で頭も良いのですが、やや繊細な面も持ち合わせています。

雌の方がより自立心が高く繊細で、雄はそれに比べると甘えるのが好きでおおらか、と性別によって気質の違いが顕著に出やすいようです。

ソコケを飼う時に気を付けたい事

元はジャングルを駆け回っていた在来種の野生猫で、純血を保ったまま育種されていますのでその頃の行動様式も受け継がれています。アクティブでジャンプ力抜群、高いところへ登るのも大好き、広い面積と高低差のあるキャットタワーが必須です。

大人しく腕の中にいるよりは肩の上に登ってしまうタイプなので、例えばあまり一緒になって遊べず、静かに猫をお膝に乗せていたい飼い主さんには不向きかもしれません。

社交性が高いのでソコケ同士は勿論のこと、犬や他の猫種、小さなお子さんとも仲良くなれますが、狩りも上手なので捕食対象になってしまいそうな小動物とは一緒に放牧しない方が良さそうです。

水を怖がらず、被毛もほぼトップコートのみの構造なのでシャンプーも容易に行えます。週に1回のブラッシングをすれば十分なくらい抜け毛も比較的少ないと言われていますが、日本のように季節の寒暖差が大きい環境下ではそれなりに生え変わりで抜け毛も多くなるという報告が上がっています。

アンダーコートが無く寒さには弱いため、室温の管理には充分注意してください。寒冷地で飼う場合には猫用の防寒着を着せる事もあるようです。

あまり大声ではありませんが、”会話”のコミュニケーションを好んでよく鳴きます。いっぱいお喋りしてあげたいですね!

ソコケに気を付けたい病気

人の手を経ずに自然界で長い時間をかけて育種されてきたとも言える猫なので、遺伝子の偏りによる疾患の心配は少ないと言われています。毛が薄いために毛球症も起こりにくい猫ですが、反面、寒い季節や地域では低体温症を起こさせないために注意しましょう。

ケニアからデンマークに持ち込まれた第1世代では他の猫種に比べて感染症にかかりやすい傾向にありましたが、新しい環境で世代を重ねるにつれて現在では克服されています。とはいえ予防接種などの感染症対策は他の猫種と等しく不可欠です。

基本的には頑丈な猫ですが、心臓病や腎不全、尿路疾患など猫が引き起こしやすい病気には日頃から気を付けておきたいものです。

ソコケをお迎えする方法

現在日本国内にソコケの飼育例は確認できず、ブリーダーもはまだ存在していないようです。保護のために繁殖は続けられていますが、それでもまだ世界的にも個体数の少ない猫のため、ブリーダーの数も限られています。

ACFAのソコケの項には6件のデンマークのブリーダーがリストアップされていますが、同サイトで検索するとヒットするのはチェコ共和国の1件のみです。Web検索ではブリーディング団体が2件見つかりましたが、いずれも海外です。

生体価格は15~20万ほどとされていますが、日本国内に居てお迎えするためには輸送費、入国時の検疫にかかる諸費用が発生します。

ソコケの場合は特に英語圏でないブリーダーとのやりとりになるため、対象の言語圏に長けた輸入代行業者などを頼むのが一番スムーズかと思われます。生体価格に加えてそういった諸経費も予算にみておきましょう。

野生の在来種出身ですが、現在ではブリーダーによって繁殖しているイエネコの猫種の一つですので日本国内で飼うにあたり特別な許可を受ける必要はありません。

今は幻のKadzonzo

現在では野生のKadzonzoはほぼ絶滅状態にあると考えられています。

ギリアマ族の生活も随分と変わり、かつての長老たちはKadzonzoについて良い個体の見分け方や3種類のタイプ(毛色の事でしょうか?)、その食味(!?)について口述したとの記録がありますが、現代を生きるギリアマ族には引き継がれていないようです。

ヤマネコなど野生の猫は遺伝的にイエネコとは異なる種族です。子猫のうちから飼い馴らそうとしても人間との暮らしに適応することはできません。

古くから森で生きてきたKadzonzoはソコケとなって人間と暮らせる猫でした。これは果たして馴致可能だった野生の猫なのか、単なる森に居たイエネコなのか、アフリカからヨーロッパに持ち込まれた時には、遺伝学者も巻き込んで度々議論を醸すことになりました。

ソコケの特徴的なタビー模様は自然界では稀で中世以降に都市部の猫に発現した被毛パターンに酷似していますが、中には野生の猫らしいスポット模様の個体が生まれる事もあります。CatGenomeProjectのデータによるとアラビアンワイルドキャットの遺伝的起源を持っていると結論付けられました。

ケニア沿岸部一帯の地域に住む猫たちも遺伝的に近しいというデータがあるので、かつて他国からの入植が盛んだった時代に持ち込まれたイエネコが在来の野生猫と交配した子孫たちなのかもしれませんね。

いずれにせよ真相はアラブコ・ソコケの森の中、そんなミステリアスなルーツもまたソコケの魅力の一つと言えるでしょう。

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