いつまでも健康な歯で美味しく食事をするためには、歯石を溜めないようにケアしておくことが大切。これは人間だけの話ではなく、猫の場合だって同じです。
猫も口の中のケアをサボってしまうと、歯石が溜まって歯周病になってしまうのです。
歯周病は一度発症してしまうともう元には戻りません。悪化してから後悔しないように、日頃から歯石を溜めず既に溜まってしまった歯石はしっかり取り除いていくことが重要なのです。
猫の歯石について詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
3歳以上の猫の8割が歯周病かも!?歯石は歯周病の原因になる
中年になるにつれて人間も歯周病になりやすくなりますが、それは猫の世界でも同じです。成猫になるにつれて歯周病になりやすく、3歳以上の猫の約8割は歯周病になってしまっているとも言われます。
歯周病の主な原因は歯垢や歯石が溜まってしまったことです。他に猫エイズなどにかかって免疫力が低下したときなどにも、歯周病になりやすくなります。
猫の寿命は、昔に比べて少しずつ長くなってきました。キャットフードが普及する前の平均寿命は7−8歳とされていましたが、最近は約16歳とかなり延びています。20歳まで生きる子も珍しくありません。
寿命が延びることはうれしいですが、そのおかげで歯周病になってしまう猫も増えてきました。現在の飼い主さんは以前よりも歯周病のこと、歯石の除去や口腔内のケアのことをもっと考えておかなくてはいけないのです。
歯周病になると歯ぐきは炎症を起こし、猫は痛くてご飯が食べられずに弱っていってしまいます。さらに悪化すると歯を支える骨までがダメになって、歯が抜けてしまうこともあります。心臓や腎臓などにまで影響が出てしまうことさえあります。
一度ダメになってしまった歯ぐきや骨はもう元の状態に戻すことはできません。できるのは、これ以上悪化しないようにするための治療だけです。場合によっては、抜歯しなくてはいけないこともあります。
知っておいていただきたいのは、歯周病になる前から予防をしておくことが重要だと言うことです。歯垢や歯石を溜めないように口の中のケアをしていくことで、愛猫を歯周病から守ることができるのです。
歯垢は歯磨きで取れるけど、歯石は歯磨きしても除去できない
歯周病の主な原因は歯垢や歯石が溜まってしまったことです。それが引き金になって細菌が歯ぐきに炎症を起こすようになり、さらに進行すると歯を支える骨までも溶かしていってしまいます。
つまり歯垢や歯石を溜まってしまう前にしっかり除去していくことが重要になるのです。
ただし歯垢や家で除去できますが、歯石はできません。歯石になってしまうと家で除去することは難しく、動物病院で、しかも全身麻酔をして行わなくてはいけないのです。
「歯垢」も「歯石」もよく聞く言葉ですが、改めてこの二つについて説明します。
歯垢(しこう)
「歯垢(しこう)」とは歯と歯ぐきの境目などに付いていて爪で引っ掻くと取れる、白色や黄白色のネバネバしたアレです。「プラーク」とも呼ばれます。
実は歯垢はただの「食べカス」というわけではなく、「細菌の塊」です。歯の表面の、あのネバネバした物体の中には無数の細菌が存在し、増殖を続けているのです。
増殖した細菌は、酵素や毒素を産生して歯の周辺で様々な悪さをします。歯肉が炎症を起こしてしまうのも、症状がもっと進行して歯の根元の骨まで溶けていってしまうのもこの細菌が原因になります。
さらに細菌は炎症を起こした部分から血管内に侵入し、心臓や腎臓といった臓器に運ばれていくこともあります。歯垢の中の細菌が原因で全身に敗血症という感染症を引き起こしてしまうこともあるのです。
こういう話を聞くと怖くなりますが、歯垢は家で簡単に取り除くことができますから必要以上に怖がることはありません。歯磨きをすればきれいになりますし、ガーゼなどを使って拭き取ることだってできます。
歯垢はまだやわらかいですから、この段階でしっかりと取り除いてしまえば良いのです。しかしそのままにしておくと、歯垢は1週間ほどで歯石へと変わっていきます。歯石になると、家で除去することは難しくなります。
歯石(しせき)
歯の表面に歯垢が付いたまま放置してしまうと、やがて石灰化していき歯石になります。歯垢が歯石になるまでの期間は約1週間くらいで、人間の場合よりもやや早くなります。
また歯石の表面はかなり凸凹しています。その凸凹した表面には歯垢がもっと付きやすくなり、そのために状態はさらに悪化しやすくなっていくのです。
そして動物病院で処置をするにしても、全身麻酔をしなくてはいけません。歯垢や歯石の程度によっては麻酔なしで行うこともありますが、基本的には全身麻酔をして行うことがほとんどです。
全身麻酔は、猫の体に大きな負担をかけてしまいます。病気を持っている猫や高齢の猫の場合には、全身麻酔を行えないこともあります。元気な猫であっても、全身麻酔にはある程度のリスクが伴うことを忘れてはいけません。(人間の場合と同じです。)
ですから歯石がひどくなって動物病院へ行かなくてはいけないとなる前に、家で口の中のケアをしっかり続けていくことが重要なのです。
なお歯石を取り除いた後には、歯の表面の研磨も行われます。歯の表面をなめらかにしておくことで、歯垢や歯石を付きにくくするのです。ただし壊れてしまった歯周組織は、もう元には戻せません。
歯石を予防するには歯磨きが一番!他にもある歯石予防法
歳をとるにつれてどうしても歯石は付きやすくなり、歯周病などのリスクも高くなってきます。歯石を溜めないようにするために、やはり一番大切なのは歯磨きをしていくことです。
歯石予防のためにどんな方法があるのかみていきましょう。
歯磨きをする
歯石を予防するのに一番良いのは、歯垢の段階でしっかり取り除き歯石にしないことです。そのためには歯磨きを続けることが効果的でしょう。
できれば毎日行うとよいのですが、それが無理な場合でも3日に1回くらいはするようにしてみましょう。子猫のうちはまだ歯周病の心配はありません。しかし歯磨きに慣れるためにも、子猫のうちからやるようにしましょう。
大人になってからでは、歯磨きをしたくてもなかなか口の中をいじらせてもらえません。ですからまだ子猫のときに、スキンシップの一環で口の中をいじられることに慣れさせておくことが大切なのです。
普段から口の中を見る習慣があれば、歯石が付いたり歯周病になったりといった口の中の変化にも早い段階で気が付くことができます。
ドライフード中心にする
ドライフードに比べてウェットフードは歯につきやすく、歯垢や歯石になりやすくなります。ドライフードは噛んだときに歯の表面に摩擦が起き、歯垢や歯石を除去してくれるとされます。
そのため、できればドライフード中心の食事にしたほうがよいでしょう。たまにはウェットフードも良いですが、普段のご飯はドライフードにしてみてください。硬いフードは歯ぐきへの刺激にもなります。
歯石予防効果のあるフードやオヤツをあげてみる
歯石を予防し歯磨きの効果もあるというような、フードやオヤツも市販されています。毎日の歯磨きが難しいようでしたら、このようなものを試してみてもよいでしょう。
ただし、通常のフードなどよりやや割高になってしまいます。動物病院にはサンプルが置いてあることもありますので、まずは一度獣医さんに相談してみるとよいでしょう。
サンプルを試してみて、嫌がらずに食べてくれるようなら市販品を買ってみてください。また歯石予防効果のあるオモチャもありますので、一度試してみてもよいかもしれません。
歯石除去スプレーを使う
歯磨きがどうしてもできないというようでしたら、歯石を除去するスプレーというものもあるので試してみてください。一日一回スプレーすることで、徐々に歯石が取れてくるとされます。
このサンプルについても、置いてある動物病院があります。一度相談してみてください。
歯磨きの習慣化、定期的なお口のチェックを!
このように、歯石を付けないようにする方法は歯磨き以外にもいくつかあります。ただし一番効果的なのは、やはり歯磨きを習慣にすることに尽きます。
定期的に口の中の様子を見てあげることで、何か異常が起きたときにもそれに早く気がつくことができます。そして口の中をいじられることに慣れておくことも大切です。
まだ歯周病などの心配のない子猫のうちから、今後のことを考えて歯磨きなどをしておくようにしましょう。大人になってから突然やろうとしても難しいですから、子猫のときから遊びながらやってみてください。