猫がかかる可能性のある病気の中でも、特に致死率の高い病気として知られているのが「猫パルボウイルス感染症」です。
愛猫の命に関わるとなると、飼い主さんも気になりますよね。「万が一感染したらどうしたらいいの?」と不安になってしまう飼い主さんもいるのではないでしょうか。
危険性の高い病気という認識の強いパルボウイルス感染症ですが、実は簡単に予防することができます。やみくもに怖がるのではなく、正しい知識を持ち、要所要所をおさえて愛猫の命を守っていきましょう。
パルボウイルスの概要や症状、飼い主さんが普段からできる予防法についてまとめました。
この記事の目次
子猫の致死率9割!?パルボウイルス感染症の症状
猫におけるパルボウイルスによる感染症は、発症から手遅れになるまでが非常に短く、しかも感染力が高いことが特徴です。
- 発熱
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
といった症状が見られるようになります。
もしそのまま放置すれば、症状はさらに重くなり、場合によっては発症から1日~1週間ほどで命を落としてしまうのです。
体がしっかりと出来上がった成猫であれば軽症のままで済むケースもあります。しかし、一方で抵抗力の弱い子猫における致死率は7~9割というデータもあり、多くの飼い主さんが怯える原因となっています。
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パルボウイルスの感染経路と、感染が拡大しやすい理由
パルボウイルスは、ウイルスを猫が舐めたり鼻から吸い込んだりしてしまうことによる経口感染が主になります。
もしくは、感染猫から生まれてくることにより、あるいはその母乳を飲むことにより、いわゆる垂直感染となってしまうケースもあります。
後天的な感染の場合の、主な感染経路としては、
- 既に感染した猫との直接的な接触
- 感染した猫に触った手で、人間が健康な猫に触る
- 感染猫とのトイレの共用
- 外で人間の服や靴などに付着したウイルスが、そのまま室内に運ばれる
などあらゆるものがあります。完全室内飼いの猫であっても、飼い主さんが外からウイルスを持ち帰ってしまうリスクがついて回るということは覚えておかねばなりません。
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ちなみに、人が媒介することはあるものの、猫のパルボウイルスに人間が感染することはありません。
他のウイルスよりも感染が周囲に広がりやすい特徴がある
また、パルボウイルスは非常にしぶといのも特徴です。感染した猫の糞便には、仮に完治したとしてもその後数カ月に渡ってウイルスが排出され続けてしまいます。
しかもこのウイルスは排出された後も、数カ月~1年以上に渡って感染力を持ったまま生き残ります。このため、他のウイルスよりも周囲に感染が広がりやすいのです。
もしも猫がパルボウイルスに感染した場合は、基本的に他の猫との隔離が必須となります。
パルボウイルスはとにかく早期治療が命!
パルボウイルスは子猫の場合、吐き気や下痢などの症状が出始めてからわずか1日で亡くなることもある病気です。
そのため、少しでも助かる可能性を上げるためには、とにかく早期治療が肝心となります。
- 全く元気がなく、うずくまっている
- 朝から何度も吐いている
- 下痢が止まらない
- 触ってみると熱くて、ごはんを食べない
など、明らかにいつもと違うと思ったら、様子を見ずにすぐに病院へ行くことが大切です。
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パルボウイルスは年に1回の予防接種で防げる!
これほど厄介なパルボウイルスですが、実はこのパルボウイルスは、非常に手軽な方法で予防することができます。
実は、猫のパルボウイルス感染症の別名は「猫汎白血球減少症」。名前だけならば知っている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そう、実はパルボウイルス感染症=猫汎白血球減少症は、多くの飼い猫が受けている、年に1度の予防接種の対象疾病となっています。
つまり、毎年必ず動物病院でワクチン接種さえしていれば、パルボウイルス罹患の可能性は限りなく低くなるということです。
健康な成猫であればほぼ100%、感染の心配はいらないでしょう。もし、予防接種を受けていないという場合は、今すぐ病院で予防接種の相談をしてみてくださいね。
▼猫が受けられるワクチンの種類と効能、注意点については、こちらをご覧ください
【猫のワクチンQ&A】予防できる病気と打ったあとの注意点
パルボウイルスの感染例は近年減っている
危険なパルボウイルス感染症ではありますが、実は近年では感染件数そのものは大幅に減っています。予防接種と室内飼いが普及し、パルボウイルスを保持する猫そのものが減ってきているのが要因です。
そのため、必要以上にパルボウイルスの感染を恐れる必要はありません。
パルボウイルスに感染しているかは病院で検査できる
感染例が減ってきているとはいえ、「本当にうちの子は大丈夫なの?」と心配になってしまう飼い主さんもいるかもしれません。
- 不特定多数の猫がいる場所に行った後、うっかりそのまま愛猫を触ってしまった
- 野良猫を拾ってきたため、パルボウイルスに感染していないかどうか不安
このような場合は、動物病院にお願いすれば検査してもらうことができます。
ただし、潜伏しているパルボウイルスの検査の場合は、残念ながら血液検査のようにその場で結果が出るものではありません。病院によっては外部の検査機関に委託して調べてもらうため、日数が必要です。
検査結果を待つだけでなく猫の様子が変わらないかどうかにも十分気を配っておきましょう。また、もし既に下痢や嘔吐など症状があるのであれば、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
子猫がいる場合のパルボウイルス対策
パルボウイルスはワクチン接種によって予防することができますが、子猫の場合はやや注意が必要です。というのも、子猫の場合はもともと抵抗力が弱いために、ワクチン接種していてもまれにかかってしまうことがあります。
ワクチン接種しているため、軽症で済むことが多くなりますが、油断は禁物です。万全な予防のために、子猫の場合は以下のようなことに気をつけてあげるとよいでしょう。
子猫のワクチン接種は2回必ず行う
大人の猫の場合はワクチン接種は1年に1回ですが、子猫の場合は、例外として1年に2回ワクチン接種があります。
子猫は母猫の初乳を飲むことで、母猫から様々な免疫を譲り受けます。しかし、この免疫はずっと有効というわけにはいきません。生まれて2ヶ月ほどで、母猫からもらった免疫は消えてしまいます。
そのため、まずは免疫が消えてしまう生後2ヶ月時点を目安に、ワクチンを1回打つ必要があります。
しかし、この時実際に、まだ母親からの免疫が消えていなかった場合、打ったワクチンの効果は薄くなってしまいます。そのままでいると母親からの免疫も切れてしまい、無防備な状態になってしまうのです。
そこで必要となるのが2回目のワクチンです。1回目のワクチンを打ってからさらに1か月後、生後3ヶ月の時点でもう1度ワクチンを打ちます。
生後3ヶ月の時点では、母親からの免疫も消えていることがほとんどです。1回目のワクチンを補うように、2回目のワクチンを打つことによって翌年まで猫の命が守られることになります。
翌年からは、毎年1回ずつ、定期的にワクチン接種をしていきましょう。
もしまだ子猫にも関わらず、2回のワクチン接種を受けていないという場合は、必ず動物病院を受診してワクチンを打ってもらいましょう。
野良猫を拾ってきた時は他の猫と分ける
当然ながら、野良猫の場合はワクチン接種もできず、パルボウイルスを持っていてもおかしくありません。
もし猫を拾ってきて先住猫と一緒に住まわせる場合、最初は完全に生活空間を分けた方が良いでしょう。特に新入り猫先住猫を問わず、子猫がいる場合これは非常に重要な対策です。
病院で検査をしてもらい、あるいは潜伏期間を過ぎても発症しないことを確認してから、徐々に生活空間を重ねていくことがおすすめです。特に多頭飼いではお互いに移し合ってしまう可能性もあるので、慎重に扱いましょう。
免疫力を落とさないように心がける
人間と同じように、猫も免疫力が落ちるとパルボウイルスだけでなく、様々な病気にかかりやすくなります。また、免疫力が落ちると普段なら大丈夫なはずの菌にも反応してしまうことがあります。
特に子猫はまだ体ができていないため、大人の猫よりもはるかにか弱い存在です。予防を万全にするために子猫の免疫を落とさないような環境づくりを心がけましょう。
例えば、子猫の時期は何にでも興味を持ち、おもちゃを与えると際限なく遊びがちです。しかし、実はこれはよくありません。
子猫はまだ自分の体力の限界がわからないので、「遊びたい」という気持ちのままに遊んだ結果、自分の体力を超えてしまうことがあるのです。必要以上に疲れた結果、免疫が落ちてしまうことがあります。
また、季節の変わり目など朝晩の寒暖差が激しいと、子猫にとっては成猫よりもはるかに大きな負担になります。成猫ですら季節の変わり目になると体調を崩すという猫がいますから、子猫にとっては言わずもがなです。
免疫力が下がりやすいので、暖かい場所や涼しい場所を積極的に用意してあげるなどして、猫が自分で温度調整できる環境を整えましょう。また、1日を通して室温や湿度を一定に保つように心がけましょう。
この他にも、免疫を落とさないためには
- 栄養ある食事をしっかりと取らせる
- 病院で免疫力向上のためのインターフェロンの注射をしてもらう
などたくさんの方法があります。かかりつけの獣医さんに相談しながら、健康的な生活を猫に送ってもらうように心がけましょう。
パルボウイルス予防のために飼い主さんができること
感染例は減っているとはいえ、パルボウイルスはいつ身近なものになるかわかりません。愛猫にいつまでも健康でいてもらうためにも、飼い主さんは以下のようなことに気をつけるとよいでしょう。
まずは予防接種を受ける
パルボウイルス最大の予防は、やはり予防接種です。
パルボウイルスの侵入を完全にシャットアウトし続けるのは不可能です。決して安心せず、いざという時のために毎年1回の手間を惜しまないようにしましょう。
ワクチンには3種から7種までありますが、一番少ない室内飼い用の3種混合ワクチンから、パルボウイルスの予防はすることができます。
ワクチンはパルボウイルスだけでなく、猫カリシウイルスなどあらゆる猫にとって致命的な病気を予防してくれます。まだ受けていない場合は、必ずすぐに受けに行きましょう。
猫に触ったら必ず手を洗う
愛猫はもちろん、他の猫にも移さないためにも、基本的な対策として「猫に触ったら必ず石鹸で手を洗う」ということを徹底しましょう。菌を洗い流すことで、感染のリスクを少しでも下げることができます。
また、例えば外の猫を抱っこした洋服で、家の猫をさらに抱っこしないようにするというのも大切です。
手だけではなく、ウイルスは人間の服や靴、鞄などあらゆる場所に付着する可能性があります。また、付着するのはウイルスだけでなく、猫にとって有害な寄生虫などである可能性もあります。
他の猫に触ったら手を洗い、できれば洋服も着替えてから自分の家の猫に触れましょう。まめな対策を怠らないことが、愛猫を守ることに繋がります。
不特定多数の猫のいる場所に必要以上に行かない
病気を持ち運ばないためには、ペットショップや猫カフェなど、不特定多数の猫に触ることができる場所にも、あまり出入りしない方が良いでしょう。特に、子猫など免疫の弱い猫を飼っている時は思い切って入店を我慢するという決断も必要です。
ペットショップや猫カフェでは、不特定多数の人が来店し、またたくさんの動物がいるために他の場所よりはウイルスなどが蔓延しやすくなります。
多くのお店では猫たちの健康を考えて、予防接種など適切な飼育を心がけているはずです。しかし一部のお店ではお世話が追いついていないことも考えられます。
残念ながらパルボウイルスの場合は、感染してからでは遅いことが多いので、パルボウイルスの予防としてはこうしたお店への出入りを控えるのが有効です。
気になるところはハイターで消毒する
猫のパルボウイルスは、実は一般的に行われている殺菌方法である
- 煮沸消毒
- アルコール消毒
- 日光消毒
などが効きません。代わりに有効とされているのが、ハイターによる消毒です。
また、ハイターなので、金属製品や色の濃い布製品など、一部使えないものがあることにも注意が必要です。
使い方の例としては、雑巾がけした床などに対し、仕上げとして薄めたハイターを振りかけ殺菌し、拭きあげます。また、丸洗いした後の猫のトイレや、粗相した後の床なども、ハイターで消毒することで有効な対策となるでしょう。
▼近年注目を集めているハイターよりも除菌パワーが高いと言われている次亜塩素酸水もオススメです
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免疫力を保つ工夫をする
子猫と同様、大人の猫であっても免疫力を保つように心がけましょう。免疫力はあるに越したことはありません。
- 朝晩の寒暖差を埋める
- 運動不足にならないように注意する
- よく眠らせる
- ストレスになるものを減らす
といったことを心がけましょう。
また、免疫力向上に秀でたフードを選んだり、猫の免疫力を上げるサプリメントを日常的に与えたりするのもおすすめです。
子猫に比べれば、成猫(特に1~7歳未満の若い猫)の免疫力はかなりしっかりしていますが、猫によっては敏感な場合もあります。
免疫力を高めることはパルボウイルスに限らず他の病気の予防にもなりますので、是非日頃から意識して取り組んでいきましょう。
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1日のうちから猫の様子をよく観察する
毛玉など、比較的猫はよく吐きやすい生き物です。また、猫の平熱は38~40℃と人間より高く、熱があっても人間からするとなかなか気づきにくくなってしまいます。
万が一感染した場合に早期治療ができるように、日頃から愛猫の様子をよく観察してみましょう。「早期治療」というからには、ほんのわずかな症状しか出ていないような初期の段階が非常に重要となります。
いつもと違う、ちょっとした行動を見逃さないようにしましょう。
- 元気食欲はあるか
- トイレの回数や量、色は正常か
- 最近何か変わったことがないか
など毎日必ず確認しましょう。また、よくスキンシップしておくことも重要です。耳に触れたり、全身を撫でたり、顔を覗き込んで話しかけてあげたりすることで、いざという時猫の異変に気がつきやすくなります。
猫は体調が悪いのを隠したがる生き物です。飼い主さんが意識して、猫からのわずかなサインに気づけるようにしておきましょう。
▼猫の異常事態に飼い主さんがいち早く気づくことができるように、毎日スキンシップしながら健康チェックをしてあげてください
猫の健康チェック項目。部位ごとに、毎日おうちで簡単に
予防接種と日頃からのケアで猫の安全を守ろう
パルボウイルスは、一度感染してしまうと治療困難な病気です。発症からわずか数日で命を落とす場合もあるため、パルボウイルスから愛猫を守るには、そもそも「パルボウイルス感染症にかからない」環境作りが大切となります。
まずは、室内飼いであっても年に1回の予防接種を徹底しましょう。
その上で、ペットショップや猫カフェなど不特定多数の猫がいる場所に行った時は、手を洗ったり服を着替えたり、ハイターで消毒したりして、ウイルスを家に持ち帰らないような対策をすると良いでしょう。
また、特にパルボウイルスにかかりやすい子猫を飼っている場合は、そもそもそのような場所に行かないという決断も大切です。
愛猫の命を守ることは、飼い主さんにしかできません。パルボウイルスは危険な病気でありながら、予防はとても簡単です。必要以上に恐れず、確実に対策をしておきましょう。