野良猫に多い病気まとめ。ヒトや飼い猫が感染に気をつけたい7つ

厳しい自然環境で生き抜く野良猫は、一見たくましくて体も丈夫そうに見えるかもしれません。しかし、飼い猫よりも病気やケガをしやすく短命です。

私たちが知っておきたいのは、野良猫はさまざまな病気にかかりやすいこと、またその中には、人や飼い猫に感染する病気も多いということです。

野良猫との接触で人やほかの猫に感染しやすい病気にはどのようなものがあるのか、また病気やけがをしている野良猫を見つけたらどうすればよいのか説明いたします。

野良猫は飼い猫より病気にかかりやすく、非常に短命

野良猫も飼い猫もかかる病気は同じなのですが、野良猫は飼い猫よりもあらゆる病気のリスクが高く、この大きさの動物にしては寿命もおよそ3年とかなり短命です。

長生きできないのは、ケガをしたり病気にかかったりしても、飼い猫のようにすぐ手当を受けることができないため、そのまま自然に亡くなりやすいからなのでしょう。

特に、野良猫に多いのは次に挙げる病気です。

  • 伝染性呼吸器疾患(猫風邪)
  • 猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ)
  • 外部寄生虫(ダニやノミ)
  • 内部寄生虫(回虫など)

そのほか、野良猫の取り巻く環境は危険が多いため、飼い猫なら経験することもないような怪我や事故、衰弱死などが多くなっています。

のびのび生きているように見える野良猫ですが、病原菌、飢餓や寒さ、ほかの猫からの攻撃…といった脅威にさらされながら必死に生きているのです。

また、病原菌や寄生虫は飼い猫や人にも感染しやすいので、私たちは野良猫がかかりやすい感染症について正しい知識を持っておく必要があります。

接触を避けて!野良猫から飼い猫への感染が心配な病気

猫の感染症は、猫同士の接触によって広がります。野良猫は、行動範囲が広くさまざまな物に触れているので、飼い猫よりも病原菌を保菌している可能性が高いです。飼い主さんは、飼い猫がなるべく野良猫に接触しないよう注意しましょう。

主な感染症は、ワクチン接種を受けておくことで感染・発症を防げるようになっているので、早めに猫ちゃんのワクチン接種を済ませておくこともおすすめします。

飼い猫が野良猫からうつされやすい病気には、次に挙げる感染症があります。

伝染性呼吸器疾患(猫風邪)

猫の感染症で多いのが、伝染性呼吸器疾患です。症状が人の風邪に似ていて「猫風邪」とも呼ばれています。

猫風邪と呼ばれている感染症には、猫ウイルス性鼻気管炎・カリシウイルス感染症猫クラミジア感染症の3つがあります。

猫ウイルス性鼻気管炎
ヘルペスウイルスが原因で発症し、鼻水、くしゃみ、結膜炎などの症状を伴います。厄介なのは、一度感染するとウイルスが一生体にすみつき、ほかの猫にうつすうようになるところです。
カリシウイルス感染症
カリシウイルスが原因で発症します。ウイルスの型によって、鼻炎、結膜炎、口内炎、肺炎などあらわれる症状が異なります。
猫クラミジア
クラミジアが原因で発症します。特徴的な症状は結膜炎で、くしゃみ、鼻水、咳なども伴います。ほかの猫風邪と混合感染すると重症化しやすくなります。

これらの病気は、残念ながらワクチンで完全に感染・発症を抑えることはできませんが、重症化を防ぐ効果は期待できるので、接種を受けておくのが安心です。

猫風邪の原因はウイルス感染?やっかいな猫風邪の正体とはで猫風邪について紹介しています。

猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ)

猫後天性免疫不全症候群は、猫の間で感染する猫免疫不全ウイルス(FIV)によって発症する病気、猫エイズとも呼ばれます。

FIVは唾液や血液を介して感染するウイルスで、主に猫同士のけんかや母子感染が原因で感染が広がります。

感染から1~2ヵ月の急性期には、発熱や下痢などの症状がみられます。しかし、その後2~4年くらいは特に症状はみられません。この期間を無症状キャリア期といいます。

無症状キャリア期を過ぎると、いわゆるエイズ症状と呼ばれる「後天性免疫不全症候群」を発症します。免疫力が著しく低下してあらゆる病気にかかりやすくなるため、1~2ヵ月で死に至ります。

無症状キャリア期の野良猫は元気に活動できるため、ケンカや交配をきっかけに、ほかの猫へウイルスをひろげてしまいます。

しかも、猫後天性免疫不全症候群はまだ完治させる治療法が見つかっておらず、飼い猫が野良猫からウイルスに感染するととても危険です。

ワクチンで予防できるので、ぜひ子猫のうちにワクチンを接種しておきましょう。

猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)

猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)は、猫の間で感染するパルボウイルスが原因で発症する病気です。

感染・発症すると嘔吐、下痢や血便、脱水を起こして数日間に死に至ります。

完全に屋内で飼育していれば、感染する可能性はきわめて低いウイルスです。しかし非常に強力なウイルスで、野良猫から人を介して飼い猫にウイルスが付着し、飼い猫が発症する可能性もあります。

ワクチンで感染が防げるので、重症化しやすい子猫や若い猫はぜひ接種を受けておきたいです。

猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス感染症は、猫の間で感染する猫白血病ウイルス(FeLV)によって発症する病気。野良猫から感染することは少ないですが、子猫が感染すると危険なので、病気のことはぜひ知っておきたいです。

ウイルスに感染した直後の急性期に白血球が減少し、発熱や貧血が起こります。回復する猫もいますが、急性期の後にウイルスがそのまま体内に残ると、血液疾患や腫瘍などさまざまな症状を伴って、数年で死に至ります。

ウイルスに感染した猫と直接接触することで、唾液や糞便を介してウイルスに感染します。ワクチン接種を受けておくと安心です。

人にもうつる!野良猫から感染する寄生虫・人畜共通感染症

野良猫が持っているウイルスや寄生虫には、ネコ同士またはネコからヒトへ感染・発症する「人畜共通感染症(ズーノーシス)」もいくつかあります。

飼い猫が外出した時、または人が野良猫に接した時、知らない間にウイルスや寄生虫をうつされ、感染症にかかってしまうことがあるので注意が必要です。

猫ひっかき病

猫ひっかき病は、猫から人に感染する人獣共通感染症のひとつです。猫が持っているバルトネラ・ヘンセレという細菌に感染することで発症します。猫同士では感染・発症しません。

名前のとおり、ひっかかれることで傷口から菌に感染して発症することが多く、ひっかかれてから10日くらいで、傷の腫れ、リンパの腫れ、発熱、倦怠感などの症状が起こります。

バルトネラ・ヘンセレは、ネコノミというノミが媒介する細菌で、日本では9~15%の猫が保菌しているといわれます。

もちろん飼い猫からも感染する菌ですが、野良猫のほうがノミがつきやすく、この菌を持っている可能性が高いです。野良猫と接するときは、ひっかかれたり噛まれたしすることのないよう、慎重に手を差し出す必要があります。

野良猫から感染しやすい外部寄生虫、ノミ・ダニ

野良猫の体表には、目には見えにくい小さなノミやダニが寄生している可能性があります。

猫同士または猫から人へ感染し、被害をもたらす場合があるので注意が必要です。

  

 

外部寄生虫の種類 寄生の対象 症状
ネコノミ 猫・犬・人など 吸血
かゆみ
皮膚炎
貧血(猫)
ネコショウセンコウヒゼンダニ
人にも一時的に寄生
疥癬症(猫)
発疹(人)
ミミヒゼンダニ 耳疥癬

ノミやダニに刺されたときには、かゆみや湿疹などの皮膚症状が起こるだけでなく、ノミやかき傷からほかの病気(猫ひっかき病、マイコプラズマ感染症・瓜実条虫症など)に感染する可能性もあります。

マダニの被害にも注意
また、レアなケースですがマダニの被害にも注意が必要です。

マダニは草むらにいる大型のダニで、マダニに直接噛まれた人が「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症して死亡する事故が知られています。

もしマダニがSFTSウイルスに感染していると、そのマダニに噛まれた動物はSFTSウイルスに感染してしまいます。

猫から人へマダニがうつることはありません。しかし、マダニに噛まれた野良猫がSFTSウイルスを保菌していると、野良猫に接触した人が猫の唾液などを通してウイルスに感染し、SFTSを発症してしまうことがあるのです。

実際に2017年7月には、野良猫を保護しようとした女性がSFTSで死亡する事故が起こっています。現時点ではまだSFTSに対する有効なワクチンや治療法がないので、こういったケースがあることを知って気を引き締めたいです。

猫に寄生するノミ・ダニの種類、さされた時の症状については猫のノミ駆除は必須!キャットフードとブラッシングで寄生を防ぐ方法でも詳しく説明しています。

野良猫から感染しやすい内部寄生虫、猫回虫

猫回虫は、猫の体内に寄生する、白くて細長い寄生虫です。猫の糞便に含まれる卵を介して、猫や人の口から体内に侵入し、全身を移動しながら成長していきます。

成虫は腸で産卵し、猫の糞便と一緒に卵を排出します。庭や公園の砂場に落ちている野良猫の糞便は、猫回虫の卵が含まれている可能性があるので、触れてしまった時にはよく手を注わなければなりません。

猫に寄生しても無症状ですが、人に寄生すると「猫回虫症(トキソカラ症)」を発症し、猫回虫の移動の仕方によって、腹痛、発熱、筋肉痛などさまざまな症状が起こります。まれですが、失明、脳や肝臓の障害を起こしたり、死に至ることもあります。

考えただけでゾッとする病気ですが、発症後は駆虫薬で駆除することが可能です。飼い猫もうんちから卵が見つかれば、駆虫薬で容易に駆除することができます。とにかく手洗いが大切ですね。

野良猫と接触・保護する時に注意すること

野良猫と接触する場合は、猫がなんらかの病原菌を持っている可能性を考え、濃密な接触は避けましょう。

猫の見た目がきれいで健康そうに見えても、症状が出ていないだけで病原菌や寄生虫を持っていることも少なくありません。

また、人慣れしていない野良猫は警戒心が強いので、あまり近づき過ぎるとひっかれたり噛まれたりして怪我をする危険性があるので、油断は禁物です。

逆に人なつっこくて「かわいい!」と思っても、ベタベタ触ったりキスしたりすることも我慢しましょう。

そして、野良猫の体、排泄物、野良猫が口にした食べ物などを触った後は、石けんを使って十分に手洗いをしてください。

できれば、飼い猫は猫の感染症を予防するためのワクチン接種を受けさせ、外出させないのが安全です。

もし、野良猫と接触のあった人や外出する習慣のある飼い猫に、思い当たりのない体調の異変があったら、すぐ受診して医師に野良猫に接触のあったことを伝えましょう。

時には、病気やケガをして動けない野良猫を見つけることがあるかもしれません。

もし弱っている猫を見つけたら、動物病院や動物愛護団体などに連絡して、どうすればよいか相談されることをおすすめします。

そして、なるべく保護した方が野良猫を動物病院に連れて行って、検査、必要な治療、ワクチン接種を受けさせてくださると嬉しいです。

病気の野良猫を保護するのも勇気がいりますよね。しかし、そのまま放置すると最悪の場合、自然死するか保健所に引き取られて処分される可能性があります。それならば、見つけた人ができることをしてあげると、不幸な猫が1匹でも減ることになります。

弱っている野良猫を保護する方法については野良猫が怪我をしているのを発見したら。保護する方法、実費負担は?で、わかりやすく説明しています。

野良猫がかかりやすい病気をきちんと把握しておこう

野良猫がかかりやすい病気の中には、思わぬ形で人やほかの猫がうつされてしまうものがあります。

野良猫がかかりやすい病気の特徴を知り、野良猫を見かけたときには適切な形で接することができるようにしておきたいですね。

また、病気や怪我をしている猫を見かけたら、できる範囲であたたかい対応をお願いしたいと思います。

野良猫に病気やケガが多い理由については野良猫の寿命が3年ほどと短い理由。見るのが辛い、過酷な生活の現状を参考にしてみてください。

みんなのコメント

  • 猫好きの心配性 より:

    野良猫を触ってしまったのですが病気にかかったかしんぱいです。
    もし野良猫を触ってしまったら死んでしまう病気とかありますか?

    • 猫好き より:

      爪などに引っかかられて出来た傷口に病原菌が侵入して病気になるのがほとんどですので、触ったぐらいで簡単に病気になったりしません。ですがダニなどが付く事もありますので、肌でも衣類でも触れた後はしっかり洗う事が大事です。

  • () より:

    動物病院に行って、診察はお金がかかるんですか?

  • るるー より:

    私は今日の朝死んだばかりの野良猫の死体を触ってしまいたした。手に血がつきました。もちろん石鹸でよく洗い数十分してからアルコールで拭きました。何に気をつけていればいいですかどうすればいいですか?

  • たまごママ より:

    ペット可のマンションに住んでおり、猫を飼って居ます。ただいま妊娠9ヶ月です。
    最近マンションの下にガリガリに弱っている野良猫がいます。
    ペット可のマンションのため、住人の方々はやはりペット好きな方ばかりで、その姿を見てられず…みんなこの猫に餌をあげています。
    もちろんみんな、中途半端なことは良くないと分かっていますがほっておけない気持ちです。
    この猫の年齢は分かりませんが、かなり痩せていて、声もカスカスになっています。
    水やご飯を食べている時にむせるとゆうか、苦しそうな感じでした。
    恐らく何か病気にかかっているのだと思います。
    妊娠中のため、変に手も出せず…ただ見ていてすごく辛いです。
    人に寄っていくので人懐っこい猫です。
    こうゆう場合はどこか保護してくれるのでしょうか。

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