猫の二足歩行、かわいいけど負担はないの?愛猫にも歩いてもらうコツ

もし我が家の猫が二足歩行しはじめたら…?想像するだけで、私たちの頬は緩んでしまいますね。

てちてちと歩み寄ってきて両前足を組み合わせてちゅーるをおねだりしてくる愛猫。ふてぶてしく歩んできて「シーバよこせよ」なんて片手を突き出してくる愛猫。もしくはスタスタと近寄ってきて耳元で「今夜、ロイヤルカナンいいかな?」なんて言われてみたい…。

思い描けば描くほどに高まる血圧と期待!二足歩行してくれないかな~愛猫、なんて妄想している方は是非読んでいってくださいね。

そもそも猫は二足歩行できる?残念ながら、答えはNO

猫が二足歩行したらさぞかし可愛いことでしょう。二足歩行の芸を見せる犬はよく見かけますが、二足歩行する猫はいるのでしょうか?残念ながら、非常に残念ながら、答えはNOです。

猫は助走なしで身長の4倍の高さまで跳びうる脚力を持ち、筋力的には立ち上がるにあたり申し分ありません。しかし、二足歩行に必要なのは筋力ではなく背骨まわりの硬さにあります。

猫は人間より多い背骨としなやかで強靭な筋肉を持ち、そのために驚くほど跳んだりくねったり流れ出したりすることが出来ますが、反対に人間のように背骨を支える靭帯が無いため、直立することも、そのためにバランスを取ることもできません。

試しに猫の後ろ足を掴み、体育の「押し車」の要領で押してみると、案外スムーズに進むのに比べ、立ち上がらせて前足を持ち、二足歩行を促してもなかなか前に進めません。

ちなみにこの体勢は猫の腰に負担をかけるそうで、獣医さんにお話したところ、大変にたしなめられました。犬の二足歩行芸も体重の軽い小型犬が殆どとはいえ、その足腰にかかる負担はゼロではなく…。猫に二足歩行を覚えてもらうのは諦めたほうがよさそうです。

しかし、歌川国貞の美人画「春曙」では飼い猫の前足を掴んで二足歩行を試みる少女のほほえましい様子が描かれています。

歌川国貞の美人画、春曙
(出典:美人合春曙 娘と猫 | 慶應義塾大学メディアセンター デジタルコレクション Digital Collections of Keio University Libraries)

いつの時代も、猫飼いがしてみたくなる事は変わりませんね。

猫動画では二足歩行する猫もいるけど…?

二足歩行はしなくとも「うちの猫は二足で立ち上がる」という飼い主さんは結構いらっしゃるのではないでしょうか。おくつろぎスタイルの香箱スタイルではなく、いわゆる「おすわり」の状態からにょっきり上体だけを直立させるのはおなじみの動作ですよね。

大抵の二足歩行動画の猫たちは、上体を前のめりにさせて小走りしている様子が多く見受けられます。猫が立ち上がる理由の多くは、

  • 高い位置にあるものに興味を惹かれて間近で見たいとき
  • 興奮と怒りがMAX!自分をより大きく見せたいとき

このいずれか、もしくは両方の状態にあります。

高い位置でおもちゃを振り、好奇心と興奮が最高潮に達して伸びあがった瞬間におもちゃを平行移動してやると、追っかけて二足で小走りすることがあります。動画の殆どはその瞬間をうまく収めたものではないでしょうか。

ちなみに二匹で喧嘩しているときも立ち上がって殴り合ううちに数歩歩いていたりします。

前述のように、脚力は充分にあるのですから猫が二足歩行するのも勢いがあれば短時間は可能と言えます。

二足歩行する猫たちの伝説

しかし、猫がたまに立ち上がったままアンニュイな表情で窓に手をついて外を見ていたり、箪笥の引き出しをあけて立ったまま中をまさぐっていたりすると、見てないところで普通にスタスタ歩いているんじゃないか、と思ってしまいますよね。

それは昔から誰もが思うことのようで、二足歩行する猫の伝承は古今東西各地で残っています。

日本では猫が化けると手ぬぐいをかぶって二足で立って踊り始めると言われ、化け猫、猫又と呼びならわされます。

猫が何かしらの不幸な要因で妖怪化したものが化け猫で、年経て自然に妖怪化したものを猫又と区分する向きもありますが、年経て化けたけど別に尻尾は二股になっていない、という区分も全国的に分布しているため、明確に区別することは難しそうです。

西洋ではケットシーという人間のように喋り、二足歩行する猫の妖精がいて、「長靴をはいた猫」の主人公の猫もまた、ケットシーであると認識されているようです。

面白いのは、遠く離れた東西この二系統の伝説の猫族がいずれも「二足歩行すること」「普段は飼い主と暮らしていても、猫の国(日本では猫の山あるいは猫岳)に属していて、そこには猫の王様がいること」「時折集会を開いて踊ること」という共通点を持つことです。

そこには古今東西の猫飼いたちが猫の集会行動に神秘を感じ、いなくなってしまった時には、きっと猫の国に一時帰国してるだけ、と自分に言い聞かせ、たまに立ち上がる姿を見ては畏れつつも対等にコミュニケーションが取れる存在であることを期待してきたがゆえの事と思われてなりません。

実は猫も二足歩行してるのでは…?

先日、夜道で向うから歩いてきた白い猫が私の1メートルほど前で突然二足立ちして、何やら手振りを交えながらうにゃうにゃ話しかけてきました。「このへんにコンビニないかな」ぐらい言い出しそうなほど人間臭い動作でした。

ほどなく物陰から茶虎の猫が出てきて叱責するように鳴くと、ハッとしたように四つ足に戻って2匹とも走り去ってしまいましたが。

きっと本当は猫は二足でスタスタ歩けるのです。しかし、猫界の機密で人間には内緒なのです。あの茶虎猫は、ウッカリ素に戻って二足立ちしてしまったまだ若い白猫をいさめたに違いないのです。

皆様のお宅の猫ちゃんたちもきっと飼い主さんの見てないところでは二足で歩いているはずですが、それは追及しないようにしてあげ下さいね。内緒の話ですから。

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