猫はなぜごめん寝をするのか。その理由と猫の気持ちを解説

猫が寝ている姿はどれも愛らしいものですが、とくに可愛らしい寝姿の1つに「ごめん寝」と呼ばれるものがあります。

この寝姿に決まった正式名称はないのですが、猫が土下座している様に見える事から「ごめん寝」「すまん寝」と呼ばれるようになりました。そもそもなぜ猫がこんなポーズで眠るのでしょうか。

何気ない姿でも、実はそこに猫からのメッセージが込められている場合もあります。猫がごめん寝をする、その意味を探っていきます。

また最後に、江戸時代にすでに描かれていた浮世絵の中のごめん寝も紹介していきます。

香箱座りから変化する「ごめん寝」。全ての猫に見られるわけではない

ごめん寝をしている猫の姿はインターネットで話題となり、とても可愛らしい姿であるため、ぬいぐるみやキーホルダーなどのグッズにもなっています。

SNSなどにも沢山上がっているので、一度は目にしたことがあると思います。

それほど話題となっているごめん寝ですが、すべての猫がこの寝方をするわけではないようです。

我が家の猫がごめん寝をしているところを見たことがないので、実際には見たことがない人も多いかもしれません。

猫のごめん寝44401

猫のごめん寝は香箱座りという、前足と後足を体の下にしまい込んだ座りポーズから変化する事が多いようです。

そもそもごめん寝はうつ伏せになっているような状態なので、完全にリラックスして寝ているという感じではなさそうです。

どうしてこんな中途半端な格好で寝るのか、事実は猫に聞いて見なければわかりません。なぜごめん寝をするのか、いくつかの仮説が立てられています。

蛍光灯の光が猫にはかなり眩しく感じるため、光をさえぎって寝ようとしている

猫の目が光っているところを見たことがある人も、多いかと思います。もともと夜行性である猫の目は、少ない光でも十分に視界が見えるような構造をしています。

基本的な構造は人間の眼球と同じですが、猫のような夜行性の肉食動物の目には、暗い場所でも獲物を捕まえられるようにタペタムという反射板がついています。わずかな光をタペタムで反射させて、目の中で光を増幅しているわけです。

だから猫の目は光に敏感になっており、人間以上に光の刺激を強く感じると言われています。特に蛍光灯の光は、猫が苦手と感じるものの1つと考えられています。

蛍光灯は1秒間に100回から120回程点滅を繰り返している

人間にはただ光っているだけにしか感じない蛍光灯。その発光の仕組みが、猫にとっては煩わしく感じてしまうと予測されています。

蛍光灯を取り換える時など、蛍光灯に触れたら熱かったという経験をしたことがある人も多いかと思います。

蛍光灯はその中にガス状の水銀が入っており、電気のスイッチを入れると電流の中の電子がこの水銀とぶつかり、中で光と熱が発生するという仕組みになっています。

電子とぶつかった水銀からは紫外線が発せられます。紫外線自体は目には見えません。蛍光灯が白っぽく光っているのは、蛍光灯の中に塗られた蛍光物質に紫外線があたる事により、白い光が発せられるからなのです。

蛍光灯の光の点滅が猫には見えているが人間には見えないため、明るさの感じ方が違う

蛍光灯は1秒間に100回から120回ほど点滅していますが、動体視力がそれほど高くない人間には、ずっと光っている白い光にしか感じません。猫は動体視力が高いために、この100回程の点滅が見えていると言います。

人間でもチカチカ点滅する光がずっと部屋にあったら、かなり煩わしく感じると思います。猫は常にそのような状態にさらされるために、ごめん寝をすることにより眩しい光を避けていると考えられています。

そんなに眩しいなら光の当たらない物陰にいけばいいのにとも思いますが、眠くて動くのも面倒と感じているのかもしれません。

香箱座りをしている猫がどうしても眠くなりそのまま寝てしまう時に、光が眩しいのでごめん寝のポーズになる、というのが有力な説です。

しかし、全ての猫がごめん寝をするわけではありません。蛍光灯のある部屋の中にいても、あまり気にしていない猫もいます。

これは個体差があり特に子供の頃から蛍光灯の下で育っていると、この光に慣れてしまうとも言われています。

いずれにしても、もし猫がごめん寝をしているのを見かけたら部屋を暗くしてあげる、蛍光灯の光から目を守る様にタオルなどをかけるなど、対策をしてあげると良いでしょう。

発光の仕組みが蛍光灯と違うLED照明に変える方法もある

また、蛍光灯からLED照明に変えるのも対策の1つになります。

LED照明というと、蛍光灯より長持ちで値段が高いという印象が強いですが、発光する仕組みが蛍光灯と異なります。

LED照明は照明技術の発達により、プラスの電子とマイナスの電子をぶつけることにより発光をします。スイッチを入れている間はずっと発光し続けている為、蛍光灯のように猫にはチカチカして見えてしまうということもありません。

このあたりは経済的な部分も関わってくるため、他の対策法を取ってから、猫の様子を見ながら対策する方が良いかもしれません。

よく眠る動物だから、その場で浅い眠りになっている可能性も

猫の性格も影響しているかもしれませんが、眠いけど移動したくないため座ったままうたた寝しているのではないか、という説もあります。

人間でも電車の中で眠ってしまう、机の前でうたた寝するといったことがあると思います。

人間の場合はそこから動けない状況があったりしますが、猫の場合はその場所が心地よい場所だったりすると座ったまま眠くなってそのままうたた寝してしまい、ごめん寝のポーズになることもあるようです。

そのような理由からごめん寝をしている時は熟睡しておらず、浅い眠りであることが多いようです。

猫は眠っている時間のほとんどが浅い眠りで、深い眠りは3時間程しかない

猫は人間の倍ぐらいの睡眠時間をとるため、常に十分に眠っていると思われがちです。特に飼い猫は、野良猫よりも長い時間眠ると言われています。

ですが、その睡眠時間のほとんどが浅い眠りであり、完全に熟睡している時間は3時間程度と考えられています。

人間からすると、そんな短い睡眠時間で疲れてしまうのではないかと思いますが、猫はもともとは野生の動物ですから、深く眠ってしまうと敵に襲われ却って危険なのです。だから、わずかな物音でもすぐに起きられる浅い眠りの方が長いのです。

人間は大きな脳を持つために、睡眠を取って脳を休ませなくてはなりません。

進化の過程で人間は安全な眠りをする為の寝床を確保でき、深い眠りであるノンレム睡眠を取らなくてはならなくなったのです。

むしろ人間のような眠り方の方が珍しく、人間以外の大抵の動物はぐっすりと深く眠るということはしないことが多いのです。

そのため、座ったまま寝てしまうと言うこともあるのでしょう。時々ごめん寝を見せる場合には問題はありませんが頻繁に見せるようであれば、睡眠のとり方に問題があるかもしれません。

猫の眠りが浅いとはいえ、熟睡する時間も必要ですから室温を調整する、寝床を整えるなどの対策をする方が良いでしょう。

江戸時代にも存在していた!浮世絵に描かれたごめん寝

最後に、江戸時代に描かれたごめん寝を紹介いたします。

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  • 「其まま地口猫飼好五十三疋(そのままぢぐちみやうかいこうごじうさんびき)」
  • 歌川国芳
  • 嘉永元年(1848年頃)

猫が好きな事で有名だった浮世絵師、歌川国芳の作品です。地口とはいわゆるダジャレのことで、この作品は東海道五十三次の宿場を猫に置き換えるというユニークなものです。

例えば出発点である日本橋には、2本のかつおぶしを引っ張り出して食べる猫を描き、かつお節の「二本だし」といった具合に猫にもじったダジャレを描いています。

なお、この浮世絵には出発点と到着点である日本橋と京都が入っている為、55の猫の絵が描かれています。

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この中で52番目の宿である草津は「くさつ」を「こたつ」にかけており、こたつに乗っている猫が描かれているのですが、この猫がごめん寝をしているように見えます。

こたつの上が暖かくて、そのまま寝てしまったのでしょうか。

こたつでごめん寝をする猫、現代でもまったく違和感のない姿です。この時代からすでに、猫達は人間にごめん寝のポーズを見せていたのでしょう。

猫好きの国芳ならではの作品です。

ごめん寝は猫からのメッセージ。安心して眠れる寝床を作ってあげるのが大切

かわいらしい猫のごめん寝ですが、猫からのメッセージが含まれている可能性もあります。

猫という言葉は「寝る子」という言葉が語源になったという説もあるほど、猫は良く眠る動物なのです。子猫の時や老猫の場合はさらに多くの睡眠時間が必要となります。

もし猫が頻繁にごめん寝を見せるようであれば、それは猫からの困った時にサインであるかもしれません。

そのサインを見逃さないことが、猫の健康を守ることにもつながるのです。

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