2017年のイグ・ノーベル賞を、日本人研究者が11年連続受賞し話題となりました。
そんな中、2017年のイグ・ノーベル賞で、フランスのマーク・アントワン・ファルダン氏による猫についての研究がピックアップされました。
ファルダン氏の「猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか」という内容の研究が、2017年の物理学賞を受賞したのです。
猫は固体なのか液体なのか、その研究内容と結論を追ってみたいと思います。
色々な容器に入り込める猫は液体なのか
イグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して贈られるもので、1991年にアメリカで創設されたノーベル省のパロディ版ともいえる賞です。
昆虫学賞や美術賞、天文学賞といった本家のノーベル賞と違いバラエティーに富んだ分野で賞が決まるのが特徴です。受賞の賞自体は毎年変わる為、ノーベル賞では対象とならない研究も受賞する可能性があるのです。
笑えるものからノーベル賞に匹敵するような真面目なもの、時には皮肉や風刺をしたことが理由で贈られることもあります。
そこで話題になったファルダン氏の「猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか」という研究の受賞。
猫は固体に決まっている。
普通に考えればそうなるのですが、学問をおかしく楽しく奇抜な面から研究するのがイグ・ノーベル賞です。
液体とは一定の体積があるものの、元の形を保つことが出来ず液体が入っている容器の形に変化するもの、としています。
冷蔵庫から取り出してきたばかりの氷は、つついても形が変わったりしません。対して水は器の形に合わせて形を変化させます。
このことから、狭い箱や容器の形に合わせてぴったりと中に入り込む事が出来る猫は、液体といえるのではないかという疑問から研究が始まったそうです。
液体の定義は「容器の形に変化する」ことですから、猫は固体であるけれども、時に液体になることも出来るということになるわけです。
猫は液体の性質も持っていると結論づけている
これらの写真が、猫は固体の性質もあるけれど、液体の性質も併せ持っているという証拠であると発表をしています。
ファルダン氏は小さな箱や容器に収まる猫の写真を次々と展示しながら、流動学を使い猫が液体にも慣れる証明を発表しました。
なぜ猫が液体にも固体にもなれるのかを、物理学方面からの研究をしていったそうです。
流動学とは、物体が流れていく時に働く力や変化について研究する分野のことです。
猫が液体にもなりえる理由を、流動学を使って真面目に研究した結果、イグ・ノーベル賞を受賞するに至りました。
ファルダン氏は「猫は液体の定義に当てはまる」と結論付けています。
我が家の猫も、このように丸い容器の中にまるくなって収まっている事がある為、液体になったと言えそうです。
逆に夏はこのような容器に収まらずに、布団や椅子の上でどろどろに伸びきっている姿を見かけます。
なぜこんな狭い器にすっぽりと入れるのか
ところでなぜ、猫はこのように小さな箱や入れ物の中に体をすっぽりと入れることが出来るのでしょうか。夏には暑さで伸びきっており、猫はこんなに体が長かったのかと思うこともあります。
その体を狭い箱や瓶の中にすっぽりと納めている姿は見たことがある人も多いでしょう。人間でも体の柔らかい人がいますが、人間の場合は通常はここまで体を曲げて狭い箱の中に納まる事はできません。
また、猫によっては頭を体の下にして眠っている事もあります。人間ではまず無理な体勢です。
人間より骨の数が多く、体は柔軟性に優れている
それは猫の体の仕組みに秘密があるのです。
人間は約200個の骨で骨格を形成しているのに対し、猫は230個ほどの骨で構成された体を持っています。
人間よりもずっと小さい体であるにもかかわらず、骨の数は人間より多いのです。つまり人間よりも、より緻密でしなやかな動きをすることが出来るのです。
人間の場合は頭が入ったとしても肩でつかえてしまうため、狭い通路を潜り抜けるのは体の小さな人や子供でもない限りは無理なのです。
また、人間からすると想像しにくい動きですが、体をそらしたりねじったりして内臓の位置を動かす事も出来るのです。
このような体の構造を持つため、自分の体よりも小さな器に収まることが出来るし、人間からすると不自然なポーズのまま眠っていても体を痛めてしまう事もないのです。
猫はハンターとしての体の機能が備わっている
これらは全て、獲物を狩りで捕まえるという肉食動物のために備わっている体の構造です。
獲物に気づかれず徐々に忍び寄り、一気に攻撃を仕掛けて仕留めるのです。もし猫の体に柔軟性がなければ、このような狩りを行う事は出来ないでしょう。
液体のように柔らかい猫の体は、猫が狩りを行うために進化していった、ハンターとしての重要な体であると言えます。
猫の魅力は様々な学問の研究心を引き付ける
最も、人間の体も猫の体も6、7割は水分で出来ているわけですから、そのような意味では人間も猫も液体といえるのかもしれません。
猫の体の柔らかさと、狭い所に収まろうとする可愛らしい習性が人間の研究心を刺激したのです。
猫は身近な存在と言えども知らないことがまだまだあり、ミステアリアスな魅力を持った動物と言えるでしょう。