縄張りはオスとメスで違う。猫界の縄張りの役割と範囲を知ろう!

猫は縄張りを持つ動物です。それは野良猫でも室内飼い猫も同じことであり、猫を飼う上で縄張りについては知っておいた方が良いことでもあります。

特にオス猫は縄張り意識が非常に強く、野良猫においては縄張り争いで喧嘩になる事もしばしばあります。室内飼い猫でも縄張りという本能は残っているため、オス猫同士でケンカになることも多いのです。

猫の性別や飼育環境により、縄張りについての猫の意識は変わる事も知られています。猫の縄張りは、具体的にどんなものなのでしょうか。

オスとメスでは縄張りの目的と範囲が異なる

縄張りとは自分のテリトリーのことであり、古代の日本では自分の土地であること他人に知らせるために、縄を張って印にしたところから縄張りと言われるようになりました。猫だけでなく多くの動物や虫、魚や貝までもが縄張りを持っていると言われています。

猫の場合はオスとメスで縄張りの範囲は大きく異なり、特に去勢をしていないオスで屋外で生活をしている場合はかなり広い範囲の縄張りを持っていることが知られています。

メスの縄張りは食料が中心

外で暮らしているメスの場合は、主に食料の有無で縄張りの範囲を決めていると考えられています。そのため生活範囲のそばに十分な食料を調達できる場所があれば、縄張りはそれに伴い狭くなる傾向があります。

縄張りの範囲は環境により異なりますが、メスの場合は半径約50メートル前後、十分な食料がない場合は2キロメートルまで範囲が広がる事が知られています。

避妊手術をしているメスでは、さらに行動範囲が狭くなります。

また猫同士の縄張りの範囲は完全に孤立しているのではなく、ある程度共通する範囲もあり、お互いの距離を保ちながら生活をしているのです。

オスの縄張りはメス猫の存在が中心

オスはメスよりも広い範囲の縄張りを持つことが知られています。メスは食料で縄張りを決めるのに対し、オスはメスの存在で縄張りを持つためにその範囲が大きくなっていきます。

オスにはたくさんのメスに出会って子孫を残すという本能がある為、複数のメスの縄張りの範囲を囲むようにして自分の縄張りを決めます。

猫の縄張りのイメージ画像

平均的にはメスがいる範囲の3.5倍の縄張りを持っています。中には数キロ先まで移動してしまうオスもいることが知られています。

子孫を残すための縄張りである為、メスよりもオスの方が縄張り意識が強いことがわかっています。発情期になるとオス同士が喧嘩しているのをよく見かけますが、オス猫は縄張りが広いために縄張りが重なってしまい、ケンカになることも少なくないのです。

去勢をしてないオスで外と家の中を自由に聞き出来る猫の場合、発情期になるとメスを追いかけたまま家に戻って来なくなることがあるのです。

また都会の猫よりも人が少ない田舎に住む猫の方が、広い縄張りを持つことがわかっています。

都会は食料を与えてくれる人間も多く存在している為、行動範囲が狭くなるようです。逆に田舎の場合は鳥や小動物などの獲物を自分で捕まえるしかないため、自然と行動範囲が大きくなる傾向があるようです。

成長したオスは群れから追い出され、メスは残る事もある

では赤ちゃん猫が成長していくと、どのように縄張りをつくっていくのでしょうか。

野良猫の母親はある程度子供が大きくなると、わざと威嚇をしたり突き放す様にして親離れを促します。

子猫は戸惑いながらも母親から離れてひとりだちするようになるのですが、子猫がオスとメスの場合ではひとりだちの様子が異なります。

オスの場合は1歳から2歳の間にひとりだちをし母親から離れた後、母猫の縄張りからかなり離れた所に移動する事がわかっています。

これは近親相姦を避けるためと考えられており、まったく血縁の違うメスの縄張りを囲む様にして新たな自分の縄張りをつくっていきます。

メスの場合は、母猫の縄張りの中に留まる事もあるようです。特に十分な食料がある場合はこの傾向が強くなり、次の子猫を一緒に子育てすることもあります。

そのため生まれたばかりの子猫と、数か月前に生まれた姉猫が一緒にいることもあります。

猫は群れをつくらない動物であると一般的には思われていますが、猫により群れをつくっている場合もあります。

鳥や魚の群れのように一か所に密集しているような群れではありませんが、血縁のあるメス猫同士で群れをつくっている事があります。この群れはほとんどが、親子や姉妹などの血のつながりのある女系家族なのです。

成長したメス猫が子猫を産み、その中のメスの子猫が群れに留まりまた新たな子供を産んで、というような形でメス猫同士の群れが形成されます。

しかし群れ同士で何かをするわけではなく、群れの中でもお互いの距離は保っている為に、猫は孤独で群れない動物のイメージが作られたのでしょう。

なお、住んでいる環境によっても異なる為、群れをつくらないで完全に単独で暮らしている猫もいます。十分な食料がない場合は、子猫がメスでも追い出そうとすることもあります。

このように子猫を母猫の縄張りから追い出さないと、やがて食料が無くなり共倒れになってしまうために、それを防ぐためと考えられています。

大事に育てた子供を威嚇して追い出すことは、一見すると冷たい母親のようにも見えますが、食料を確保するというお互いに生きていくための自然の摂理なのです。

縄張りにはマーキングし臭いを残している

猫は縄張りであることを知らせるために、爪とぎや尿で自分の臭いを残しそこが自分のテリトリーであることを他の猫に知らせています。

その行動はオス猫に顕著に表れ、オスは匂いのついた尿を縄張りの中に吹きかけるマーキングという行動をしばしば行います。

また縄張りの境界には、糞を埋めずに置くこともあります。おそらくは縄張りを主張するためのものであると考えられていますが、どれぐらいの効果があるのかはわかっていません。

このように外で暮らしている猫は、一見自由に暮らしていそうに見えますが、お互いの距離を守った上で生活をしていることがわかります。

それは厳しい野生の環境にいる猫達が、生き抜くためのルールとも言えるでしょう。

室内飼い猫も縄張りを持っている

では、十分な食料や安全な環境のある家猫の場合はどうなのでしょうか。

完全に室内で暮らしている猫でも、縄張りは持っています。室内飼いの猫は食料を探しに行く必要もなく、外敵に襲われる心配もありませんが、本能的に縄張りを意識する傾向があると言われています。

メス猫で単独で飼育している場合は、縄張りがあるのかないのかはっきりわからないことが多いですが、オス猫の場合は本能的に縄張りである家の中のマーキングをする事が多々あります。

オス猫が尿を吹き付けてマーキングする事をスプレー行為といいますが、このスプレー行為に悩まされる飼い主は少なくありません。猫の尿は凝縮された濃い尿である為、かなり臭うからです。

縄張りとして室内に自分の場所を見つけている

室内猫は外にいる猫のように広大な縄張りは持ちませんが、自分の眠る場所や食事の場所など狭い範囲での縄張りをつくります。

猫が家具や柱などに体や顔をこすりつけているのを、見たことがある人は多いでしょう。これは家具などに自分の臭いをこすりつけて、縄張りを主張しているのです。

特に複数の猫が同居している場合だと、小さな範囲での自分の縄張りを守るために喧嘩をすることもあります。

オス同士を飼育する時に、相性が上手くいかない事が多いと言われるのは、この縄張りの問題が原因の1つでもあるのです。

家が十分な広さであればまだそれぞれのテリトリーを確保できますが、それでも

オス同士はトラブルが勃発する可能性があります。

限られた狭いスペースで猫を数匹も飼育すると、猫同士の縄張り争いとなり猫にとっても大変なストレスとなります。

オスの縄張りに関する問題は、去勢手術をするとある程度改善する事が知られています。去勢をすることで性格も穏和になり、オス猫の縄張りに対する主張がある程度緩和される傾向があります。スプレー行為で悩んでいる時には、去勢手術を考えるのも方法の1つといえます。

人間の都合で去勢をしてしまうのは可愛そうな気もしますが、去勢をすることでスタッドテイルなど特定の病気の発病を抑えることが出来ます。

また、子猫が生まれたらその子供達の世話も飼い主が出来ない時には、里親に出す必要があります。

しかし里親もすぐに見つからない事も多く、引き取り先が良い環境であるかはわかりません。信頼できる里親となればかなり限られてきてしまいます。

そのようにして不幸になってしまう子猫を増やさないためにも、去勢手術や避妊手術は有効なものであると言えます。

室内飼いの猫がどのようなルールで縄張りを決めているかは、その猫によって異なるようです。

我が家の場合は避妊手術をしたメス猫のみなので、家のすべてが自由になるため、好きな所で寝ている事が多いです。

単独ですから他の猫に縄張りを脅かされる事もなく、食料も水も十分にある為縄張りの意識はあまりないようにも感じます。

多頭飼いはそれぞれのテリトリーを用意しよう

多頭猫の場合も自分が寝る場所や食事の場所などの、小さな範囲での縄張りを持っていることもあります。

家の中とはいえ、自分のくつろぐスペースは確保しているのです。夜中などに家の中をパトロールするのも、この縄張りを確認するためだと考えられています。

そのためそれぞれの食事の器や寝床を用意し、出来ればトイレも猫の数+を目安にして設置をしておきたいところです。

近年は室内飼いを推奨する専門家も増えてきました。

室内飼いと外を自由に出られる場合では、それぞれメリットとデメリットがありますが、飼い猫が野良猫の縄張り争いに巻き込まれないという点でも室内飼いを薦めたい理由の1つです。

縄張り争いに巻き込まれて他の猫に追いかけられ、そのまま迷子になってしまうケースは毎年頻繁に起こっています。喧嘩をすることで怪我や病気などになってしまうこともあります。

前述したように、メスは十分な食事があれば狭い範囲にとどまるという習性があります。つまり毎日の食事をちゃんとしていれば、メス猫にとっては遠くまで行く必要性はないと言えます。

オス猫の場合はメスに出会うという役割があるため、去勢をすれば遠くまで行きたがり理由はなくなります。

猫がなぜ縄張りを持つのかという理由を理解し、その目的を飼い主が果たしてあげることが大切です。

なお、室内飼いはどうしても運動不足になりやすいというデメリットがあります。

去勢や避妊手術をした猫は、繁殖のために使われるエネルギーが余ってしまうために、太りやすくなると言われています。

飼い主の都合が良い時には、シャンプなどの上下運動を中心とした遊びをして、運動をするようにしましょう。

人間の場合、適度にすいている電車の座席には、一人分の間を開けてそれぞれ座るという心理状態が働きます。

パーソナルスペースの確保は非常に重要

アメリカの大学での実験ではまわりに誰もいない状態で、一人で複数人がけの食堂のテーブルに座っている時にわざと隣に別の人物を座らせると、もともと座っていた人物はストレスや不快感を感じる人が大多数であるという報告もあります。

このそばまで近寄られると不快感を感じる距離をパーソナルスペースといいますが、猫にもパーソナルスペースがあることがわかっています。

単独で暮らしている猫はあまりパーソナルスペースを気にする必要はありませんが、それで猫がゆっくり休めるスペースを作ってあげることは大切な事です。猫が自分から家の中に、お気に入りの場所を作る事も多いでしょう。

複数の猫が同居している場合は、ストレスを溜めないためにも特にパーソナルスペースの存在は非常に重要となります。

動物とはいえ、狭い所に数匹も押し込められばストレスになります。ストレスによって発病する病気もあるのです。

縄張りは猫が社会をうまく生き抜くための、本能であり知恵ともいえるでしょう。多くの動物はそのように社会性を持って、共倒れしないようにしているのです。

それを理解することは、猫がストレスなく暮らしていくためにはとても大切なことなのです。

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