猫の口が臭い!実はそんなとき、その裏には大きな病気が隠れていることもあります。口臭は病気のサインのひとつとも言えるのです。
どんな病気になると口臭が出てしまうのでしょうか。重大な病気を見逃さないようにするためにも、猫の口臭がきついと思ったときにはその原因を考えてみるようにしてください。
猫の口臭を引き起こす病気
口臭の原因としてまず考えられるのは、歯や歯肉の異常です。歯に残った食べカスに細菌が繁殖して歯垢になったり、歯垢が石灰化して歯石になってしまったりすると、口臭がするようになってしまいます。これは人間でも同じでしょう。
しかし口臭の原因はこれだけではありません。口臭を引き起こしてしまう病気について詳しくみてみましょう。
口臭を引き起こしてしまう病気として、次のようなものが考えられます。
- 歯周病
- 口内炎
- 猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫風邪
- 腎不全
では、それぞれの病気について詳しく説明していきましょう
歯周病
口臭の原因として一番可能性が高いのは歯周病です。歯肉(歯ぐき)に炎症が起きる「歯肉炎」と、それが悪化して歯の根元までがダメになってしまう「歯周炎」とを合わせて「歯周病」と言います。
歯周病になってしまっている猫は多く、3歳以上の猫の約8割以上が歯周病という報告もあります。
歯周病になると、口臭がひどくなってきます。よだれが出るようになったり、食べ方がいつもと違う、歯をカチカチ鳴らすということもあります。硬いものが食べられずにフードを残すようにもなり、次第に食欲が落ちて元気もなくなってきます。
歯肉は腫れて、出血していることもあります。歯には歯垢や歯石がたくさん付いてしまっているでしょう。
歯周病の原因は、歯垢や歯石が溜まってしまったことです。そこで繁殖した細菌が炎症を起こしてしまい、歯の周りに「歯周ポケット」を作ります。さらに悪化すると歯の根元まで侵され、歯はぐらぐらになり最悪の場合には抜けてしまうことさえあります。
症状が軽ければ、麻酔をして歯垢や歯石を取り除くという治療が行われます。悪化して歯がぐらぐらしてしまっている場合には、抜歯になることもあります。
歯周病の原因には、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスへの感染がある場合もあります。これらの感染症になると免疫力が低下してしまい、歯周病になりやすくなるのです。このように重大な病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。
歯周病を予防するためには、歯磨きをして歯垢や歯石を溜めないようにすることが大切になります。
口内炎
口内炎ができてしまった場合にも、口臭がひどくなってしまいます。口の中を見ると歯肉や舌などが赤く炎症を起こし、腫れたりただれたりしてしまっているでしょう。出血していることもあります。
口臭がひどくなるだけでなく、よだれも多くなります。痛みがあるためにご飯が食べられなくなり、残すようになってきます。食べられないためにだんだんと元気がなくなり、やせて弱ってきてしまいます。
人間の口内炎でしたらしばらく様子を見ているうちに治りますが、猫の口内炎はそうはいきません。どんどん弱っていってしまうので、なるべく早めに動物病院へ連れて行くようにしてください。
口内炎の原因には歯垢や歯石が溜まったことや栄養不足などが考えられますが、歯周病と同じように猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスなどに感染して免疫力が低下したためということもあります。
このように他の重大な病気が原因ということもあるため、注意が必要です。
猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)
猫エイズとは、猫エイズウイルスに感染したことにより免疫がきちんと働かなくなってしまう病気です。
免疫とは、外部から侵入してきた病原体などから自分の体を守るための仕組みです。免疫がしっかりと働くことで、病気にかかったりせずに健康を維持していくことができます。
しかし猫エイズになってしまうと、免疫が働かないために体の抵抗力が落ちてしまいます。それによっていろいろな病気にかかりやすくなってしまうのです。感染しやすくなることで、歯周病や口内炎などにもなりやすくなります。
症状は時期によって違います。感染してすぐの時期には、発熱したりリンパ節が腫れたりします。その後それらの症状は治るのですが、数ヶ月から数年したころになって免疫力が低下していろいろな病気にかかりやすくなります。
歯周病や口内炎になってしまうことで、口臭がひどくなったりよだれを垂らすようになります。他にも鼻水や目やにが出るようになります。下痢が続くようになったり、皮膚炎を起こしてしまうこともあります。
これらの症状の現れ方は、猫ごとに多少違います。やがてさらに進行していくと体のさまざまな臓器に問題が起きるようになり、死亡してしまうことも多くなります。
感染してすぐの時期には、なかなか病気に気付けません。歯周病や口内炎、その他いろいろ症状が出るようになって、やっとこの病気に気付くようになります。口臭がひどいといった症状は、この病気のサインでもあるのです。
口臭があるからといって心配し過ぎる必要はありませんが、このような病気が隠れている可能性もないわけではないため、念のため獣医さんに相談してみてください。
ちなみに人間のエイズウイルスが猫に感染したり、猫のエイズウイルスが人間に感染したりすることはありません。猫どうしのケンカで噛まれたりしたときに感染してしまうことが多いため、気をつけてください。
猫白血病ウイルス感染症
猫白血病ウイルスに感染したことで発症する病気ですが、白血病の症状だけが現れるというわけではありません。猫エイズと同じように、免疫力が低下することでいろいろな症状が出てしまいます。
感染してすぐの時期には発熱、リンパ節の腫れといった症状が現れますが、一旦は治まります。その後、数ヶ月から数年もの時間を経てさらに激しい症状が現れるようになります。
歯周病や口内炎になって口臭がひどくなる、よだれが多くなる、痛いためにご飯が食べられず体力が落ちるといった症状があります。さらにさまざまな病気にかかりやすくなり、悪化し死に至ることもあります。
ワクチンがあるため、なるべく早い時期に接種しておくとよいでしょう。
猫風邪
猫風邪は喉や気管などにウイルスが感染して発症してしまう病気で、咳は鼻水といった風邪のような症状が現れます。
代表的なものとして「猫カリシウイルス」に感染した「猫カリシウイルス感染症」や、「猫ヘルペスウイルス」に感染した「猫ウイルス性鼻気管炎」があります。
鼻水やくしゃみ、咳といった症状があり、口内炎になってしまうこともあります。そうなると口臭がひどくなる、よだれが多くなるといった症状も現れます。他に目やにが出ることもあります。
特に治療をしなくても3−4日くらいで回復しますが、場合によっては重たい症状が現れて死亡してしまうこともあるため気をつけてください。まだ体力のない子猫の場合には非常に危険な病気です。
人間の風邪のように軽く考えず、早めに動物病院へ連れて行くようにしましょう。またワクチン接種によって予防することができる病気ですから、元気な時に獣医さんに相談してみてください。
腎不全
腎不全が進行して尿毒症になってしまったときには、猫の口からアンモニア臭がするようになります。これはかなり危険な状態になっているため、すぐに動物病院へ連れて行く必要があります。
腎不全とは、腎臓が十分に働かなくなってしまう病気です。猫は腎臓の病気になりやすい動物で、その死因のトップは腎臓が少しずつ壊れて機能しなくなる「慢性腎不全」になります。
腎臓の一部が壊れても他の部分が替わりに働くため、目に見える症状としては特に何も現れません。症状が現れたときには既に腎臓の2/3以上が壊れた状態で、かなり悪化してしまっています。壊れた腎臓は、もう元には戻りません。
そして腎臓の働きがさらに低下すると「尿毒症」という症状が現れます。これは本来なら尿として排泄されるはずだった老廃物が、腎臓の働きが低下されたために排泄されなくなり、体内に溜まっていってしまっている状態です。
この尿毒症の症状として、口臭がアンモニア臭となっている可能性があるのです。尿毒症では他に食欲がなくなる、繰り返し吐く、下痢といった症状もあります。このような症状が現れたとき、腎臓はかなり末期の状態になってしまっています。
腎不全になっていてもはっきりした症状が現れるわけではないため、なかなか気がつきません。水をたくさん飲むようになり、薄い尿をたくさん出すようになったときには注意してください。他に食欲不振、体重減少などもあります。
一番良いのは健康診断を受けておくことでしょう。猫は中年(5−6歳)を過ぎる頃から慢性腎不全になりやすくなります。高齢になるとほぼ全ての猫がなってしまうと考えてもよいくらいです。ですから定期的に検査をしておくとよいでしょう。
腎不全になってしまっても、早い時期に発見して治療を始めることで進行を遅らせることはできるので、まず気付いてあげることが大切です。
また腎臓が突然働かなくなる「急性腎不全」でも、口臭がアンモニア臭になります。アンモニア臭がする段階では症状がかなり悪くなっているため、すぐに動物病院へ連れて行ってください。
飼い主さんが毎日猫のお口の臭いや中をチェックして
このように、猫の口臭にはいろいろな病気が隠れていることもあります。ただフードが原因で口臭がいつもよりひどくなるということもあるため、神経質になり過ぎないでください。
猫は痛みなどがあっても訴えることができません。いつまでも健康で長生きしてもらうためには、飼い主さんが日々猫の状態をチェックし変化に気付くことが大切です。
そのときには体全体だけでなく、口の中のことも注意してあげてください。普段から歯磨きをするようにし、歯や歯肉の状態や臭いなどを観察しておくとよいでしょう。
口を触られても嫌がらないように、スキンシップをとって慣れさせておくことも大切です。そして定期的に検診も受けるようにしておきましょう。