子猫症(小猫症)という病気を聞いたことはありますか?成長期が終わったにもかかわらず、大きさや体重が標準に届かない状態のことをいいます。
ドワーフィズムとも呼ばれるこの病気は、ヒトの小人症と同じような症状が見られ症例は少ないながらも、現在もこの難病と闘っている猫ちゃんが世界中に存在しています。
いったい子猫症とは具体的にどのような病気で、どのような原因が隠されてるのでしょうか?また子猫症の場合、治療法はあるのでしょうか?今回は子猫症の説明と、難病と闘う小さな猫ちゃんたちについてご紹介しましょう。
子猫症とは
子猫症とはホルモン異常によって引き起こされる病気です。症状は文字通り成猫の年齢となっているのにもかかわらず、子猫程の大きさにしか成長しないというものです。
子猫症の別名、ドワーフキャットには2種類あり、顔の大きさは標準だが手足や背骨が極端に短い状態を「不均衝型」といいます。
いわゆるマンチカンやメヌエットのような手足が短くなっている猫はこの「不均衝型」に属します。一方で顔も含めて全体的に小さい猫のことを「均衝型」といいます。
一般的に子猫症といえば、全体的に小さな「均衝型」のことをいいますが、どちらの場合でもホルモン異常によって引き起こされることに変わりはありません。
そのため子猫症を発症した猫は、体が大きくならない以外にも様々な症状が見られます。ちなみに、子猫症はとても珍しい病気で世界的に見ても症例があまり報告されていない病気です。
そんなめずらしい病気であるにもかかわらず、多くの猫好きに認知をされているのは子猫症と戦い精一杯生き抜いた「うりえる君」の存在が大きいでしょう。
今日、天使をみました… pic.twitter.com/bAsBJyN9t1
— うりたん学級 (@uri_0707) 2016年7月18日
成猫でありながら、体重はわずか1.3Kg、体長も18cmしかないうりえる君は、その愛らしい姿と小さな体で難病である子猫症と戦う姿が人々の感動を呼びテレビでも放送されるほど話題となりました。
残念ながら2017年2月に虹の橋を渡ってしまいましたが、公式Twitterでは過去の写真を拝見できますので、よろしければその可愛い姿を堪能してみてはいかがでしょう?
▼現在うりえるの飼い主さんは、大阪府でカフェウリエルを開いて保護猫活動をされています
運命の保護猫と大阪府で出会う。譲渡を受けられる施設とお迎えの流れ
子猫症の原因
子猫症は世界的にも大変珍しい病気で、明確な原因やメカニズムなどが解明されていません。ただ、もっとも多い原因として報告がされているのが内分泌系の疾患です。
その中でも「先天性甲状腺機能低下症」によるものと「下垂体前葉機能不全」が最も多いと言われています。
先天性甲状腺機能低下症
のどにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの機能が弱まることで発症する病気のことをいい、発症をすると体温上昇や呼吸数の増加、心拍数増加や血圧の増加などがみられます。
先天性甲状腺機能低下症が原因の子猫症の場合、顔が大きく体が小さいという特徴がみられます。また顔の幅が広くなるのも特徴です。その他にも以下のような症状が見られます。
- 元気消失
- 便秘
- 反応が鈍る
- 体温の低下
- 寒さに弱くなる
- 全身がむくみぶよぶよになる
- 水頭症
- 舌が大きくなる
- 腹部が膨らむ
愛猫が成猫に近づいているにもかかわらずあまり大きくならない、最近元気がなくなっているような気がすると感じるならば、先天性甲状腺機能低下症が原因となる子猫症を疑いましょう。
なお甲状腺機能低下症が原因の子猫症ならば、甲状腺ホルモンを投与することで他の猫と変わらない生活を送れる場合もあります。
その猫の症状や、ホルモン投与によってどれだけ正常値に戻るかにもよって違いますし、甲状腺ホルモン治療は一生続けなければなりませんが、治療によって改善する可能性があります。
下垂体前葉機能不全
脳にある下垂体と呼ばれる器官い異常が生じるために起こる病気のことをいいます。下垂体前葉機能不全に陥ると、成長ホルモンが分泌されず体が成長しない子猫症を発症するほか、筋肉の萎縮、低血糖、腎不全などに陥るのです。
下垂体前葉機能不全が原因の子猫症の特徴は、体だけではなく頭も大きくなりません。
- 筋肉の萎縮
- 脱毛症
- 慢性腎不全
- 乳歯遺残と永久歯の成長遅延
- 発情の欠落
- 子犬のように鳴く
下垂体前葉機能不全が原因の子猫症の場合、残念ながら確実な治療法というのは確率されていません。そのため、獣医師によっては治療を一切行わない場合もあります。もし治療を行ったとしても、対処療法を行うだけとなる可能性もあります。
どちらの疾患が原因だとしても、早期発見、早期治療が重要となります。
愛猫の成長が止まってからの治療では遅い場合もありますので、成長期なのに一向に大きくならないと感じたならば、気になる症状がなくても一度獣医師に相談をすることをおすすめします。
▼もともと成猫になっても小さい猫種もいるので、そちらも把握しておきましょう
成猫でも小さい猫種。どのくらい小さいのか&お迎えのときの注意点
もっとも有名な子猫症の猫「リルバブ」
皆様はリルバブちゃんという、全米で大人気の猫ちゃんをご存知ですか?
▼YouTube動画 「Lil BUB’s Fish and Yogurt Thanksgiving」
舌がずっと出たままの特徴的な顔をしているこちらの猫ちゃんは、世界でもっとも有名な子猫症の猫です。
現在の飼い主様と運命的な出会いを果たしたリルバブちゃんは、子猫症によるアゴの発達障害が原因で舌が出たままになっていて体も小さく、顔も成猫であるにもかかわらず子猫のような顔をしています。
このリルバブちゃんは、一時期骨が異常に太くなる大理石骨病という難病に陥り生死の境をさまよった過去があります。
生存率は極めて低く、獣医師からも安楽死を勧められたそうですが、飼い主様はあきらめず何とか治療法を探そうとネットやSNSで必死に情報を集めたそうです。
その献身的な介護とあきらめない気持ちが届いたのか、ある治療によってリルバブちゃんは奇跡的に回復し現在は幸せに暮らしているそうです。
▼猫の安楽死はとても難しいテーマではありますが、その決定は飼い主さんに委ねられています
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そんなリルバブちゃんの命を幾度となく救った飼い主様は、当時莫大な借金を抱えた売れないミュージシャンだったのですが、リルバブちゃんのグッズや動画などが大ヒットし、現在はとても幸せに暮らしているそうです。
さらに、人気となりあちこちに引っ張りだこになったリルバブちゃんのイベントで出会った女性と結婚して子供にも恵まれたそうです。
莫大な借金を抱えているにもかかわらず、必死に高額な治療費を払いながら命を救った飼い主様にリルバブちゃんが恩返しをしてくれているのかもしれませんね。
ちなみにリルバブちゃんのグッズも世界中で大人気です。
こんなリルバブ人形もありますので、リルバブちゃんが可愛いと思ったそこのあなた、ぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか?
子猫症の疑いがあるならば迷わずに診断を受けよう
子猫症は早期治療を行うことで重症化することなく、大きくなれる可能性のある病気でもあります。治療費はとてもかかりますし、その治療を行ったからといって必ず病気が治るというわけではありません。
しかし、もし愛猫の命を救える可能性があるのならばその治療にかけてみたくなるはずです。愛猫の体が小さいような気がしたならば、ぜひ獣医師に相談をするようにしましょう。
▼まずは対応してもらえるかどうかを電話相談してから病院に連れていくこともできるかもしれません
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