子猫がかかりやすい病気一覧。うつるとあっという間に悪化する危険も

家に待望の子猫を迎えることが決まった時には、これから始まる生活を想ってわくわくしますよね。新しい家族にはずっと健康で元気に、末長く一緒に暮らしていきたいと願うのではないでしょうか。

ただまだ未成熟の子猫は、大人の猫よりも病気にかかりやすいため注意が必要です。一度病気にかかると悪化もはやく、あっという間に尊い命を失ってしまうこともあります。子猫がかかりやすい病気にはどのようなものがあるか、みていきましょう。

子猫がかかりやすい病気は様々なタイプがある

子猫はとても弱々しく、だからこそ守ってあげたい愛らしい存在でもあります。

生まれたばかりのときには、まだ目も開いておらず耳も聞こえません。嗅覚や触覚だけを頼りに母猫の乳首を探し、母乳を飲みます。まだ自分で体温を保つこともできません。

やがて目が見えるようになり耳も聞こえるようになり、生後3~4週間くらいする頃には少しずつ歩き回れるようにもなってきます。ただ行動範囲が広がると、今度は新しいウイルスなどに感染する機会も増えてしまいます。

また生まれたばかりの時期は母猫の初乳を飲むことで、初乳に含まれる免疫物質に守られてきました。しかし成長するにつれてその免疫の効果は薄くなっていき、感染症にかかりやすくなっていきます。

初乳の持つ免疫の効果が薄れてきた子猫には、ワクチンを接種することが勧められます。それによっていろいろな感染症を予防することができます。

子猫がかかりやすい病気には次のようなものがあります。

  • 細菌やウイルスの感染症
  • 寄生虫
  • 新生子性結膜炎
  • 子猫衰弱症候群
  • 新生子溶血

それぞれの病気について、詳しく説明していきましょう。

細菌やウイルスの感染症

生まれたばかりの子猫は、母猫の母乳を通して免疫物質をもらっています。人間と同じで、猫の場合にも出産直後の母猫から出る初乳には免疫物質がたくさん含まれているのです。

子猫はこの初乳を飲むことで免疫力が高まり、生まれてからしばらくの間は感染症などから守られています。

しかし成長するにつれて、初乳の持つ免疫力は低下してきます。さらにその頃になると子猫は活発に歩き回るようになり、行動範囲が広がることで新しいウイルスや細菌に出会うことが増え、感染症にもかかりやすくなってしまうのです。

子猫がかかりやすい感染症には次のようなものがあります。これらの感染症は大人の猫でもかかることがあります。

ただ注意しなくてはいけないことは、大人の猫なら大したことなく回復するような感染症であっても、子猫の場合にはあっという間に悪化し死亡してしまうこともあることです。

異変に気づいた時には、すぐに動物病院へ連れて行くようにしてください。

▼猫の感染症の中でも真菌は完治するまで時間がかかる病気なので、早期治療が鍵になります
猫の真菌の治し方。黒いカビのような症状は感染するので注意!

猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症)

まず鼻水、くしゃみといった鼻の症状があり、それに続いて咳などの喉の症状が現れます。時には口の中がただれて口内炎になり、よだれも垂らすようになります。目やにが出たりまぶたが腫れてしまうこともあります。

風邪のような症状のため「猫風邪」と呼ばれています。大人の猫ならば特に治療をしなくても3~4日くらいで回復してくることが多くなります。

しかし子猫の場合には危険な病気です。発熱して何も食べようとしなくなり、衰弱して死亡してしまうこともあるのです。

くしゃみをしていて猫風邪かなと思った時には、早めに病院へ連れて行くようにしましょう。子猫がかかると大人の猫より悪化しやすいということを忘れないでください。

▼猫風邪の詳しい症状についてはこちらをご覧ください
猫風邪の治療は早めに病院へ!プロに任せる治療が基本

人間の風邪と同じで、冬場の寒くて乾燥した環境では呼吸器に負担がかかって感染しやすくなります。(人間の風邪が移ることはありません。)なるべく暖かくし、乾燥しないようにも気を配っておきましょう。

この病気はワクチンで予防することができ、子猫も生後2ヶ月から受けることができます。また母猫がこのワクチンを接種しておくことで、その母猫から生まれた子猫もこのウイルスに感染しにくくなります。

獣医に相談して、ワクチン接種をしておくようにしましょう。

猫汎白血球減少症

下痢や嘔吐があり、40度以上の発熱があることもあります。下痢には血便が混じることもあります。嘔吐は一日に何度も起こり、水分を摂ることもできずに脱水状態になってぐったりしてしまいます。腹痛のため、お腹を触られることを嫌がります。

子猫にとって非常に危険な感染症で、感染してしまうと数時間から数日で死亡してしまうということも珍しくありません。

この病気の原因はパルボウイルスへの感染です。パルポウイルスは生命力が強く、また感染力も強いウイルスです。猫の体外に出た後も強い感染力も持ったまま生き続け、また一般的な消毒薬などにも強いとされます。

このウイルスに感染した猫の便、尿、唾液などから感染するのですが、どこで感染したのかわからないというケースもあります。血液の中の白血球の数が減少していきます。

この病気にもワクチンがあり、ワクチン接種をしておくことで防ぐことのできる病気です。人がウイルスを運んできてしまうこともあるため、室内飼いの猫であっても接種しておいた方が良いでしょう。感染してから後悔しないようにしてください。

▼子猫の場合は、あらかじめワクチンを接種しておくことで万が一感染したとしても軽度の症状で済みやすくなります
パルボウイルス感染症とは。症状、感染経路、ワクチンでの予防法

猫伝染性腹膜炎

典型的な症状はお腹の異常な膨らみで、他に発熱、食欲低下といった症状が現れます。発症していても気がつきにくい症状もあり、治療の難しい病気です。悪化して、数日から数ヶ月で死亡してしまうこともあります。

猫コロナウイルスに感染したことが原因ですが、このウイルス自体の感染力は弱いものです。ただし母猫が感染していると子猫にも感染してしまいやすい病気になります。

他にも猫白血病ウイルス感染症、猫エイズ、猫クラミジア感染症、トキソプラズマ症などの感染症に注意するようにしましょう。

猫伝染性腹膜炎のワクチンは今のところまだ日本では使われていませんが、それ以外の感染症についてはワクチン接種で予防することができます。獣医と相談して、接種できる時期になったら受けておくようにしましょう。

▼猫伝染性腹膜炎については、こちらもご覧ください
FIP、猫伝染性腹膜炎とは。猫を飼うなら知らないなんて言えない病気

寄生虫

寄生虫には猫の体の内部に住み着いて生きている「内部寄生虫」と、体の外に住み着く「外部寄生虫」がいます。内部寄生虫は回虫、条虫、鉤虫、フィラリアなど、外部寄生虫はノミやダニになります。

内部寄生虫の中には、母猫の胎盤や母乳を通して子猫に感染してしまうものもいます。子猫が成長するにつれて体の中で感染した寄生虫も成長し、腸炎などの症状を引き起こしてしまうのです。

母猫が妊娠する前には、しっかり寄生虫の駆除を行っておくことが重要です。

もしも子猫に感染していることが確認されたときには、薬を飲ませて駆除を行うことになります。一度では卵や幼虫が残って駆除し切れないため、必ず再検査を受けて完全に駆除し切れるまでは注意しておきましょう。

大人の猫に比べて子猫が感染すると重症になりやすく、死亡してしまうこともあるため気をつけてください。

寄生虫が感染すると下痢や嘔吐、食欲不振といったような症状が現れ、元気がなくなったり毛ヅヤが悪くなったりしていきます。腹痛、貧血、血便などがあることもあります。肛門の周りが痒くなって、お尻を地面にこすりつけるようになったりもします。

気になる症状があれば獣医に相談してください。便の検査で診断をしていくようになります。もしも嘔吐物に寄生虫がいることがわかったときには、一緒に持って行くとよいでしょう。

市販の駆虫薬もありますが、動物病院で処方されるものとは安全性や効果が違ってきます。感染の不安があれば市販薬で済ますのではなく、動物病院を受診した方がよいでしょう。

外部寄生虫とはノミやダニになります。寄生されるとひどいかゆみが出て、掻きすぎて脱毛してしまうこともあります。またそれほど痒がっていない場合でも、フケが大量が出たりします。

ノミやダニがいることがわかったら、しっかり駆除をするようにしましょう。複数の猫を一緒に飼っている場合には、同時に駆除するようにしてください。また部屋の掃除をしっかりしておくことも大切です。

▼寄生虫が猫の健康を脅かしている場合に、飼い主さんができることについてはこちらもご覧ください
猫の寄生虫は室内飼いこそ注意しよう!寄生虫予防のための基礎知識

新生子眼炎

生まれたばかりの子猫は、まだ目が開いていません。生まれてから5ー14日(平均8日くらい)ほどすると、やっと閉じていた目が開き始めます。「新生子眼炎」はこの時期に見られる急性結膜炎です。

開きかけた目のまぶたと角膜の間に浸出液や膿が溜まってしまい、目が腫れたりまぶたの周りに目やにがひどくついてしまいます。原因は猫ヘルペスウイルスなどのウイルスや細菌への感染です。

膿を出して抗菌剤の目薬などを使うことで、症状は落ち着いてきます。生まれたばかりの子猫の目が腫れたり目やにがひどくついていても、焦らずに早めに動物病院を受診するようにしてください、

「新生子(しんせいし)」とは生まれてから7ー10日までに子猫を指します。ちなみに生まれたばかりの子猫は、耳の穴もまだ開いていません。生後6ー17日(平均9日くらい)するとやっと開き始めます。

このように目も見えず、耳も聞こえず、さらに自分で体温調節もできない、生まれたばかりの子猫はとてもか弱い存在なのです。

子猫衰弱症候群

子猫の中には、残念ながら生後数日で亡くなってしまう子もいます。このような子猫の病気を「子猫衰弱症候群」と呼びます。

特定の症状というわけではなく、生まれつき弱かった子猫が徐々に衰弱してしまうこともあります。逆にそれまで元気にしていた子猫が突然死亡してしまうこともあります。

原因としては、生まれつき小脳などに異常があったこと、生まれるときに難産だったために低酸素症状態になってしまったこと、他にも低体温、脱水、下痢、低血糖などが考えられます。

容態の悪化は突然、急激に起こるため、適切な治療を行うこともできないまま死亡してしまうことも少なくありません。

生後1週間までの死亡率がもっとも高くなるため、この時期は特にしっかり様子を見ていてあげてください。体重が順調に増えて元気そうなら大丈夫ですが、何か異変があれば見逃さないようにしましょう。

生まれたばかりの子猫は、まだ自分で体温維持ができません。子猫の寝る場所は38度くらいに暖かくしておきましょう。40度を超えると低温やけどの心配がありますから注意してください。

▼小さな子猫の場合は下痢によって命の危険にさらされることもあるので、マメに飼い主さんが常に気にしてあげる必要があります
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新生子溶血

母猫の初乳には免疫物質がたくさん含まれているため、子猫が健康に成長して行くために欠かせないものです。しかし父猫の母猫の血液型の組み合わせによって、初乳の中の抗体が子猫の赤血球を破壊してしまうことがあります。

親の血液型の組み合せが悪かった場合、子猫は初乳を飲んで一日くらいで亡くなってしまうのです。これを「新生子溶血(新生子同種溶血現象)」と言います。

このようなことを防ぐために、妊娠する前に父猫と母猫の血液型を検査して確認した方がよいでしょう。もしも血液型の組み合せが悪いとわかったときには、生まれた子猫が母乳を飲む前に母猫と引き離し、人工哺乳で育てるようにしていってください。

子猫の小さな身体を守れるのはあなたです

以上のように、まだ体力のない子猫はいろいろな病気にかかりやすくなります。大人もかかることがある病気であっても、子猫の場合には一度かかると急速に悪化して命の危険にさらされることもあります。

昨日より元気がないようだけど少し様子をみようと言っている間にも、急激に衰弱してしまうことだってあるのです。いつもよりも元気がない、母乳をあまり飲まない、体重の増加が鈍いなどあれば、早めに受診するようにしてください。

また子猫を飼い始めた時には、元気そうだったとしても一度動物病院へ連れて行き健康診断を受けておくと良いでしょう。できれば尿や便も持って行き、検尿・検便もしてもらうと安心です。

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予防接種は生後50~60日頃から受けられます。子猫にとって危険な感染症のいくつかは、予防接種を受けておくことで防げます。かかってしまってからでは遅いですから、獣医さんとも相談して検討してみてください。

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