猫の毛色の決め手は遺伝子。イラストでわかる親と子の毛色が違う理由

非常にカラフルでバリエーション豊かな猫の毛色。

白、黒、白黒混在のブチのなどのモノトーンがあれば、二つの毛色、あるいは濃淡で描かれるしま模様があり、はたまた白・黒・茶の三色や、二色あり、猫の毛色の豊かさといったら枚挙にいとまがありません。

基本的に私たち人間は、例えば黒髪同士の両親からは同じ黒髪の子どもとして生まれてきます。しかし猫たちには三毛と虎毛の両親なのに生まれた子猫はブチでした、などといった毛色のミラクルが珍しくありません。

猫の毛色の遺伝はどのようにして起こるのでしょうか。

色を決める遺伝子の働き

猫の毛色は、染色体の中の遺伝子の持つ情報によって決められています。ゲノムを設計図として見た時に、染色体を紙に例えれば遺伝子はそこに描かれた情報です。

猫の受精卵が母親の胎内で「猫」になっていくとき、この設計図をもとに「足は4本でしっぽは1本で」といった体の構造を決め、「爪は古くなったら剥離させるように」「怖い時は全身の毛を逆立てるように」といった情報をインストールさせます。

同時に毛色のほうも、例えば「白をベースに毛先にちょっとグレーをあしらって」と設計図の指示通りにプリントされます。

この時のカラーリングは毛色に関する20種類以上の遺伝子の組み合わせで決まり、組み合わせパターンは1153通りにもなります。猫の毛色は多様とはいえ、1153通りもあるようには思えませんよね。

しかし例えばここに白い猫が3匹いたとします。ぱっと見はそっくりな白い猫ですが、それぞれ「白猫遺伝子による白猫」「アルビノ遺伝子による白猫」「ブチ猫遺伝子による全身が白い斑紋の白猫」だった場合はすべて遺伝子型が異なるわけです。

黒猫にしても撫でまわしながらよく見ると「喉元の毛がわずかに淡い黒猫」だったり「根元の方は濃いブラウンの黒猫」だったりするように、「しま模様遺伝子を持っているけども濃い黒と濃い黒のしま模様なので結果として黒猫」なんて場合もあります。

色の遺伝子は基本はW、S、T、O、I、D、C、B、Aといった9種類に大別されますが、それぞれの遺伝子に優性と劣性の二種類があり、更に亜種があるため、総勢20種類以上の型が複雑に派生することになります。

つまり20種類以上の遺伝子がすべて単に何色かを指示しているわけではなく、白・黒・茶の基本の色情報の他に、濃淡やしま模様やブチ模様などの柄を決める遺伝子があり、すべてひっくるめた結果が「猫の毛色」として遺伝されるのです。

ものすごく簡略化した図ですが、猫の毛色に関する各遺伝子の働きをまとめました。

猫の毛色に関する遺伝子の働きをあらわしたイラスト1

W(ホワイト)、B(ブラック)、O(オレンジ/レッド)はそれぞれベースとなる毛色を決めます。W遺伝子は各遺伝子の中で優先順位が高く、W(優性)を一つでも持っていればその猫は白くなります。

C(フルカラー/着色因子)は例えばシャム猫のポインテッドカラーなど、色をどこにどう出すかを決めます。

D(ダイリュート/淡色化因子)は黒をグレーにしたり、茶色をライラックにしたりとベースの色を淡くします。

猫の毛色に関する遺伝子の働きをあらわしたイラスト2

T(タビー)はサバトラ、うずまき、ポイント豹紋など、しま模様のタイプを決めます。

S(パイボールド/白斑因子)はブチ猫の白い部分を決めます。全身の99.9%の被毛が白くても、遺伝子型のWが優性でなく、Sによるものであればそれは白猫ではなく白いブチ猫なのです。

A(アグーチ)は一本一本の毛を黒と茶のしま模様に分けて染めます。上記で例として挙げた黒×黒のしま模様はこのAが劣性に働き、茶色のメラニンを作らないために発生します。

I(インヒビテッド/メラニン抑制因子)は黒、オレンジ以外の毛色の場合に発動し、一本一本の毛の先端の色を残したまま根元のみ白いままに保って銀色の毛を作り出します。

こうして列挙してみると、猫の毛色はメラニンから出来ていることがよくわかりますね。

染色体に書かれた設計情報が遺伝子です。そして、この設計指示には優先順位があります。例えばWの持つ「毛を白くして」という指示は最優先されるため、Wが一つでもあれば他の色に関する遺伝子がどんな指示を出していたとしても、猫は白い毛色になります。

Iは「毛先の毛色を残して根元を白く残して」という指示を出しますが、これはWやOよりも優先順位の低い指示書のため、毛色に黒や茶色など強い色の出ている時には発現せず、この指示が生かされるのはアグーチの濃淡の褐色の場合、それを薄めて銀色にします。

また、Aは「一本の毛をシマシマにしてね」という指示を出しますが、これがaaといった劣性の継承をしている場合は「シマシマ指示」(薄い部分を担うためにメラニンの生成を一部阻害しなさい、という指示)が弱いため、結果まるまる黒い一本の毛になります。

この遺伝子同士の相互関与と力関係は大変に複雑で、OとBとSが入っていれば必ず牛柄ブチになれる!というものではないようです。

親猫と子猫の毛色が違う理由

両親とまるで毛色の違う子猫が生まれるのには二つの理由が考えられます。

遺伝子の優先順位

例えば2組の白猫のペアからそれぞれ4匹の子猫が生まれたとします。2組をそれぞれ「Aペア」「Bペア」と仮称します。Aペアの子猫は4匹とも両親そっくりの白猫でした。しかし、Bペアの子猫は3匹は白猫でしたが残る1匹は色付きでした。なぜそうなるのでしょうか?

答えは、遺伝子型にあります。

Aペアのそれぞれの遺伝子型は♂WW♀Ww(母猫が一個だけ劣性w)。子猫は両親から一つずつ遺伝子を受け継ぐため、どの子をとっても「WW」あるいは「Ww」型となります。Wは一つでも持っていれば白猫になるため、Wとwを受け継いでも白猫になります。

ところがBペアの遺伝子型は♂Ww♀Ww(両親とも劣性wを保有)。組み合わせによりwwになってしまう子猫がいます。この場合「白になりなさい」という指示が失われるため、遺伝子の中に隠し持っていた他の色が表れて一匹だけ色付きの子猫となります。

血統管理された純血種の猫たちの中でも、まれに本来なら現れるはずのない毛色の子が生まれることがあるように、猫たちは遺伝子の中に、それが現れやすいか否かの違いはあれど様々な色の情報を秘めています。

今飼われている猫たちの大元の祖先はキジ猫模様のリビアヤマネコです。ある日突然ブチ猫がヤマネコカラーの子猫を産んでも不思議はありません。

母猫一匹にたくさんの父猫

猫は多胎動物であり、一度に複数の卵子を排卵します。なおかつ、おなかに受精卵を孕んでいても、発情期間が続いていれば他の雄と交尾して更に排卵し、受精卵を授かることが可能です。

母猫と父猫①、母猫と父猫②、父猫③、父猫④…と、様々な遺伝子の組み合わせの子猫たちが一度の出産で生まれてくるため、父猫たちのタイプが違って母猫も白猫では無かった場合、子猫たちの毛色は非常に賑やかなものになるでしょう。

雄の三毛猫が稀有なわけ

三毛猫のオスは3万匹に1匹といわれ、非常に珍しい事で知られています。三毛猫を作る色の遺伝子のレシピはww、Oo、SS(Ss)ですが、各遺伝子の具体的な指示内容としては

  • ww「全身真っ白にならなくてもいいですよ」
  • Oo「細胞によって黒か茶色でいきましょう」
  • SS「全身染めないで白い部分も作りましょうか」

となり、結果、白黒茶色の三毛猫が出来上がります。

人間も同じですが、猫の性別も染色体の数で決まります。オスが「XY」でメスが「XX」です。そして三毛猫の色の決め手となるOoはX染色体にしか存在できません。

つまりオス猫はOかoのどれかひとつしか持てないため、ww、O(あるいはo)、SS、となり、似たような配列でもこの場合は茶か黒のブチ猫になります。

パイボールド遺伝子がssで白い部分を作る指示が弱い場合はトーティーシェル、いわゆるサビ猫となりますが、これも白以外の二色によるカラーリングですので、三毛猫と同じくほぼすべての個体がメス猫となります。

オスでも稀に生まれてくる、Xが1つ多いXXYの個体ではOoが可能になるので、この場合は三毛猫の雄になれますが、これは染色体の異常であり、生殖能力を持たず往々にして短命です。

毛色からわかる遺伝的傾向

昔から「青い目の白猫は耳が聞こえない」と言われていますが、これにはちゃんと科学的根拠があります。

青目の白猫の全てがそうとは限りませんが、とある調査によると、青目の白猫では半数以上で難聴、オッドアイの場合は半数近くで青い目の側の耳が難聴だったという結果が出ています。

なぜ白い猫の耳にこのようなことが起こるのでしょうか。それは白い毛色で青い目の場合、その毛色を決定しているのがW因子に依るものだからです。(黄色い目の場合はS因子による全身白斑であり、赤い目であればC因子によるアルビノであると区別できます)

聴覚を司るコルチ器を作る遺伝子は色素を作る細胞から分化して作られます。W因子は色を作らないように抑制する細胞であるため、この聴覚に関する細胞の生成までも阻害してしまうというのが定説となっています。

猫の目の色もメラニンの数で決まりますが、W因子の白猫は目にも色素を持たないため、レイリー散乱によって青く見えているというわけです。青空と同じ原理ですね。

他にも「キジトラはワイルドな性格」と言われています。原始の猫がキジトラだったため、毛色にそれが現れているからには、他の性質や気質も野生の猫の遺伝が色濃く出ているのではないかという見方によるものです。

猫の毛色は遺伝情報の発露、と考えるとこれも不思議ではありませんね。

毛色を推理する楽しみ

以前、近所の家で三毛の親から生まれた子猫は、真っ白な体で背中部分に「人生」というブチがありました。達筆でした。他にもハート型やカツラ型など、意図せず現れる猫の毛色は私たちを楽しくさせてくれます。

猫の毛色の遺伝の法則は大変に複雑ですが、今回はざっくりと概要のみお伝えしましたが、各遺伝子の優先順位や不活性の条件なども詳しく知ると、両親の毛色から生まれてくる子猫の毛色もある程度推理できます。

猫たちの毛色はどの子をとっても個性的で魅力的、猫を見かけるたびに「色付きだからwwで、ブチがあるからSSかSs、茶色とグレーが入っているからDDかな」などと勝手に脳内推理するのも頭の体操に良さそうですね。

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