猫の泌尿器疾患用フード、療法食の選び方と食事で気をつけたいこと

尿石症や尿路結石という言葉。猫を飼っている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

尿路結石は猫の泌尿器疾患の中でも最も多い病気です。

症状としては痛みがかなり強く、石が詰まって尿毒症になると命にかかわる病気ですので、早期発見と適切な治療、予防が大切です。

尿石症になってしまったとき、出来てしまった結石をなるべく早く溶かし、痛みを取り除き、再発させないようにするために大切な食事療法について獣医師免許をもった筆者が解説します。

結石の種類によってその特徴や治療法はさまざま

同じような症状でも出来てしまった結石の成分によって、療法食と呼ばれる特別なフードで溶かしやすいものと溶かしにくいものがあり、治療法が異なります。

ここでは結石の種類やどのようにして出来てしまうのかなどの特徴について見ていきましょう。

殺菌感染によるストルバイト尿石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)

猫の結石症の中で最も多く見られ、半数くらいはこのストルバイト尿石だと言われています。ストルバイト尿石が出来てしまう主な原因は細菌感染です。

通常は常在菌として存在しているブドウ球菌などの細菌が膀胱などで増えてしまったことにより起こります。これらの細菌はウレアーゼという物質を産生します。

このウレアーゼが尿中の尿素を分解してアンモニアを発生させ、尿のPHを上昇させることにより、尿がアルカリ性に偏って結晶化します。膀胱に出来た結晶が集まって塊になったものが結石です。

出来てしまった石の大きさにもよりますが、ストルバイト尿石は比較的、療法食で溶けやすいのが特徴です。療法食を平均4から6週間与え続けることで改善が見られるとされています。

療法食は尿を酸性化する(目標尿pH6.2-6.4)ように作られており、マグネシウムを制限したものです(0.04-0.14%くらいの含有率が推奨されている)。

オスにできやすいシュウ酸カルシウム尿石

シュウ酸カルシウム尿石も猫でとても多く見られる結石の一つです。男性ホルモンであるテストステロンが肝臓でシュウ酸塩という物質の産生を増加させることにより結晶化が起こります。

そのため、オスの方が出来やすいと言われています。また食べ物の影響が大きいのもこの結石の特徴です。

カルシウム、シュウ酸を多量に含む餌や、シュウ酸の前駆物質である、アスコルビン酸(ビタミンC)、グリシン、グリオキシレート、トリプトファンを多く含む餌を食べることにより結晶化が起こりやすくなります。

寒い地域では、不凍液の成分であるエチレングリコールによる中毒で尿石が出来てしまった例も報告されています。不凍液は舐めると甘く感じるため、誤って舐めてしまい中毒を起こすことがあるので注意が必要です。

先程、ストルバイト尿石の場合、尿はアルカリ性に偏るとお話しましたが、シュウ酸カルシウム尿石の場合、尿のPHは中性から酸性です。

シュウ酸カルシウムは溶けにくく、療法食のみで治療するのは難しいとされていますが、マグネシウムやカルシウム、リンなどの含有量を調整したフードを与えることで出来てしまった結石が大きくなるのを防ぐ効果があります。

プリン体の過剰摂取でできる尿酸塩尿石

痛風の原因物質として知られているプリン体が多く含まれる餌を食べることにより出来やすくなると言われています。猫での発症率は5%くらいで比較的稀な結石です。

基礎疾患があるとできる尿酸アンモニウム結晶

門脈体循環シャント(PSS)や肝不全など基礎疾患がある場合に見られます。尿のPHは中性からアルカリ性です。この場合は基礎疾患の治療を行うことで結石も改善されます。

結石が大きい場合や猫の状況によっては結石の治療として外科的処置を行うこともあります。

結石の治療法と、評価されているメーカーごとの療法食の種類

結石の治療は結石の種類、猫の状態、石の大きさなどによって外科的治療、薬の内服などと合わせて療法食が与えられます。療法食とは特定の病気に対して栄養特性などの基準が定められているフードのことです。

療法食を長期間与えることで栄養の偏りが生じることや、猫の年齢や持っている体質や基礎疾患によっては適さないこともあるため獣医師の指示に従って給餌します。

療法食は多くのメーカーから販売されています。ここでは第三者機関(獣医療法食評価センター)で評価が行われているメーカー

  • ヒルズ
  • ロイヤルカナン
  • ビルバックジャパン
  • 日清ペットフード株式会社

の療法食について解説します。

ヒルズ・コルゲートの療法食:s/d

ストルバイト結石を溶かすことに重点が置かれたフードです。尿を酸性化させ、早期に結石を溶かすようにミネラルも制限されています。治療を目的として作られており、予防食ではありません。

治療が終了したら他のフードに切り替えてください。

ヒルズ・コルゲートの療法食:c/d

ストルバイト尿石、シュウ酸カルシウム尿石を形成しにくくする療法食です。マグネシウムやカルシウム、リンなどのミネラルを調整し、治療が終了したあとも予防食として継続して与えることが出来ます。

また膀胱炎の炎症を抑える効果があるとされるオメガ3脂肪酸を配合しています。

c/dのシリーズとして、c/dライト、c/dコンフォートがあります。c/dライトは肥満猫用、c/dコンフォートは原因のわからない「特発性膀胱炎」用に開発されたフードです。

肥満は結石のリスクを高めるので、肥満猫の場合、再発防止にダイエットをするのは有効だと言われています。

特発性膀胱炎はストレスが原因とも言われており、ストレスに対応するための栄養素を摂取する目的で、ミルクプロテインとトリプトファンが添加されています。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロール0

ヒルズのs/dにあたるような療法食ですが、ストルバイト尿石だけではなくシュウ酸カルシウム尿石にも配慮した療法食です。治療が終了したあと予防食として与えることも可能です。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロール1

ヒルズ・コルゲートのc/dにあたる療法食です。特にストルバイト尿石の改善を目的として作られています。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロール2

ヒルズ・コルゲートのc/dにあたる療法食です。特にシュウ酸カルシウム尿石の改善を目的として作られています。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロールライト

尿路結石で肥満の猫のために作られたフードです。ミネラルを制限するとともに肥満を改善し、結石のリスクを減らすことを目的としています。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロール+CLT ドライ

尿石症と特発性膀胱炎の改善を目的として、調製された療法食です。ヒルズ・コルゲートのc/dコンフォートと同様にミルクプロテインとトリプトファンが配合されています。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロールオルファクトリー

療法食を食べてくれない猫のために開発されたフードです。猫の食欲は香りによって刺激されると言われており、他の療法食に比べて香りが強くなるように作られています。結石に対する効果はpH0とpH1、pH2の間くらいです。

ロイヤルカナンの療法食:pHコントロール+満腹感サポート

食物繊維を多く含む療法食です。

ベットコンプレックスの療法食:猫用ミネラルコントロール

ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石のどちらにも対応した療法食です。治療を始めてから6か月まで使用可能で、比較的長期にわたって与えることが出来ます。

日清ペットフードの療法食:JPスタイル ダイエテティクス ストルバイトブロック

療法食を食べない猫も多いことから、味を重視して作られています。ストルバイト結石に特化したもので、他の結石には使用出来ません。

【重要!】フードを与えるときの注意点はけっこうある

療法食や予防食を与える上で注意すべきことをまとめました。なるべく早く症状を改善させ、再発させないためにもポイントをおさえておきましょう。

療法食を与えているときはそれ以外の食べ物は厳禁!

結石の治療のための療法食は結石を溶かすためにマグネシウムやカルシウム、リンなどのミネラルが調整されています。

せっかくミネラルを調整しているのに、牛乳やかつお節、猫用おやつなど療法食以外の食べ物を与えてしまうと療法食の効果が得られません。治療が終わるまでは療法食以外のものは与えないようにしましょう。

そうは言っても、療法食をどうしても食べてくれないこともあると思います。そんなときは、まず今まで食べていたフードに一度戻してみてください。

普段通り食べているようであれば、食べ慣れたフードに療法食を混ぜ、最終的には全て療法食にします。

療法食を嫌がる猫の場合、慣れるまでに3,4週間かかることがあります。いきなり全て療法食にしていまうと必要な栄養素が摂れなくなってしまうことがあるので、徐々に療法食を混ぜていきます。

療法食の味が嫌いというよりも慣れていないものを食べたがらない猫も多いので、食べないからといって、次々に違う種類のフードに変えてしまうとどれも食べないということになりかねません。

いつものフードに療法食を混ぜ、1週間くらいは様子を見ることをおすすめします。また、療法食を混ぜて移行する場合でもおやつは嗜好性が高く塩分やミネラルを過剰に摂取しやすくなるので避けてください

それでも全く食べない、食べる量が極端に減ってしまったというときは療法食を変えたほうが良いかもしれません。

メーカーを変え、味や臭いを変化させてみる、もしくは同じメーカーの療法食でもドライからウエット、ウエットからドライにするなど質感に変化を持たせることで食べてくれることがあります。

療法食は種類によって推奨されている使用期間が異なり、年齢や猫の状態によっては適さないものもあります。

特に持病がある場合や、妊娠期、授乳期、乳児期など栄養状態に注意が必要な場合は慎重にフードを選んだ方が良いでしょう。

また、総合栄養食として販売されているもので、結石予防や下部尿路疾患予防と記載があるものもあります。

しかし、それはあくまで「健康な猫が結石になるのを予防する配合になっている」ということで、療法食のような治療効果はありません。療法食の種類を変える場合には獣医師に相談すると安心です。

療法食を食べさせる期間

療法食は結石の治療を目的とし、ミネラルやカロリーなどが制限されています。そのため、療法食を与え続けていると必要な栄養素が十分に摂取出来ないことがあります。

療法食の中には継続して食べさせても大丈夫なものもありますが、多くの療法食で推奨使用期間が設けられています。ただし、メーカーが定める推奨使用期間は目安ですので通常は獣医師が診察し、療法食をやめる時期を判断します。

逆にもう症状が出ないからといって勝手に療法食をやめてしまうとすぐに再発するということにもなりかねません。

療法食の使用期間は必ず獣医師の指示に従ってください。

十分に水が飲める環境作りを

結石は尿が濃縮されることで出来やすくなります。猫は犬など他の動物に比べて水を飲む量が少ないので、なるべく水分を摂取させる工夫が必要です。

フードはドライよりもウエットの方が安定して水分が摂取できるので、水を飲ませる量を増やすよりも簡単に尿量を増やすことが出来ます。しかし、置き餌に向かないことや、猫の好みによっては難しいこともあるでしょう。

どちらのフードを与えるにしても水はこまめに交換し、新鮮なものを用意してください。水を飲む量が少ないと感じたら、水を置く場所を変えてみるのも一案です。

少し高い場所に置いてみる、餌と離して置くなど場所を変えるだけでよく飲むようになる場合もあります。

トイレの環境もチェックしよう!

尿が濃縮してしまう原因として水の摂取量とともに考えられるのが、おしっこを我慢しているということです。

トイレの猫砂を変えた、もしくはトイレの場所を変えた後に結石を発症したという場合には注意して様子を見たほうが良いかもしれません。

猫はそれぞれ好みの猫砂が異なります。また場所が変わったことで嫌がり我慢してしまう場合もあります。

以前と比べてトイレの回数が減ったと感じたら、元に戻せるものは戻してみる、もしくは今使っているものから新しく変えることが必要かもしれません。

また、多頭飼育の場合、トイレの数は頭数+1個が理想だと言われています。他の猫に遠慮してトイレに行きたいのに我慢してしまう猫もいるので、トイレの環境を整えてあげることはとても大切です。

大切な愛猫を尿石症から守るために

尿石症をはじめとする下部尿路疾患は若齢から高齢まで幅広く発症が見られます。尿石症にかかってしまうと痛みで苦しむばかりか、尿毒症など命の危険にさらされることもあります。

普段から水やトイレなど飼育環境をこまめにチェックし、過ごしやすい環境を作ってあげましょう。

また、血尿が出る、トイレに行きたがらない、しばらくおしっこが出ていないなど、尿石症かな?と思われる症状があったら早めに動物病院に相談を。

尿石症と診断されたら適切な療法食を一定期間継続して与えることが大切です。普段からの予防と早期発見、早期治療で愛猫を尿石症から守ってあげたいですね。

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