チャウシーの特徴や飼い方。ヤマネコゆずりのワイルドな魅力が満天!

古代エジプトでは猫を家畜化する以前から、野生のヤマネコを馴らして共に狩猟や害獣駆除を行ってきました。

王族の狩りに付き従う様子が描かれた壁画や、主と一緒に埋葬されたミイラなどから、ヤマネコが人々にとって特別な存在だったことがうかがえます。

今、私たちの身近なところにいるイエネコちゃんたちがカワイイのは勿論のこと、強く逞しい野生の猫たちも魅力的ですよね。

くっきりしたアイライン、房毛を備えた大きな耳、しっぽをゆったり揺らしながら長い四肢で堂々と歩き、寝そべっている姿ですら貫禄たっぷり…そんな古代エジプト王族の猫がうちのリビングにもいたらいいのに!

そんな夢を叶えようと作り出された猫種がチャウシーです。どんな猫たちなのか、詳しく見ていきましょう。

チャウシーの歴史

例えばヤマネコを飼いたいと思ったとします。しかし、ヤマネコは見た目がイエネコに似ていても野生の猛獣。気性が荒く、噛み癖も強く、トイレトレーニングも難しいため、家庭で飼うことは現実的ではありません。

そこで、ワイルドな風貌にイエネコの気質を持った猫を求めて、1960年代からアメリカでジャングルキャットとイエネコとの交配によってブリーディングが始まりました。

猫種名「チャウシー(Chausie)」はジャングルキャットの学名「フェリス・チャウス(felis chaus)」に由来しています。

ブリーダーたちが最初にジャングルキャットとイエネコを交配させた第1世代の子供たちはいずれも雄であれば生殖能力が無く、雌であれば受精率が低く、繁殖することはできませんでした。

そのため次世代を残せる個体を求めて様々な猫種との交配が行われ、幾度目かの3世代目にして初めて生殖能力のある雄猫ナービが生まれます。

ナービの血統はブリーダーたちがこの新たな猫種に望んだ「見た目はヤマネコ、中身はイエネコ」という子猫たちを次々と輩出し、チャウシーの育種の基盤となりました。

当初はオリエンタルショートヘアやドメスティックショートヘアなども使われていましたが、現在は体型とカラーリングに一貫性を保たせるために基本的にはアビシニアンとの交配が進められています。

アビシニアンは1868年にエチオピアからイギリスに持ち込まれた猫がルーツ…とされていますが、実際のところはそんなエチオピアの猫のようなティッキングを目指してイギリス内でブリーディングを重ねた結果、今の姿になった猫種と言われています。

ジャングルキャットは名前から熱帯の密林をイメージしがちですが、実態はインドから北部エジプト、中近東の川沿いに生息している小型の野生ネコで、古くからしばしばイエネコと交雑することが知られています。

古代エジプトの猫を目指して作られた別系統の猫(アビシニアン)と、古代エジプトの猫の子孫(ジャングルキャット)のマリアージュ、家庭でも飼える古代猫の再現としてはうってつけの組み合わせと言えますよね。

ジャングルキャットとイエネコの交配による第1世代(F1)から3世代目まではまだまだ野性味が強く残るため、ペットとしては不向きです。

ジャングルキャットの直系から3世代かけたF4からようやく一般家庭でも順応可能な「イエネコのチャウシー」と認められるため、F1~F3では国や地域によっては飼育や輸入に関して特別な許可が必要になる場合があります。

また、TICAへの登録やキャットショーへの出陳もF4以降と定められています。つまりF1~F3までは厳密にいえばチャウシーではなく”ジャングルキャットハイブリッド”とみなされるようです。

ブリーディングの歴史は1960年代からですから決して浅くも無いのですが、その名前が知られ始めたのは1990年代ごろ、ペットブームによって珍しい猫を家庭に迎えたいという需要から人気が高まり始めました。

フロリダ州のワイルドカッツ・キャッテリーの尽力により、TICAには1995年に予備登録。以後18年間のうちに積み上げたコンテストの実績や繁殖プログラムの成果が実を結び、2013年にようやく公認されました。

CFAへの登録は為されておらず、今後も恐らく叶いません。しかしそれは「イエネコ血統の保全」を第一として野生猫を交配に使った猫種を登録対象としないCFAの主義によるものです。

チャウシーの特徴や性格

チャウシーはフレンドリーで賢いイエネコの気質はそのままに、ジャングルキャットゆずりの野性味あふれるルックスや優れた身体能力を持ち合わせていることが魅力です。

体形はがっしりした骨格と筋肉質で、大柄ながらも引き締まったロング&サブスタンシャルタイプです。メインクーンやサイベリアンと同じボディタイプと言えばその大きさが感じられるでしょうか。

性別によって大きさが異なり、雄は5~7kg、雌は3kg~4.5kgと見た目も一回りほど差がありますが、性質も雄は甘えん坊、雌はクールでクレバーとその違いが顕著です。

アビシニアンは大きな頭に大きな目、稚いアンバランスさが妖精のような猫ですが、同じ血を引いてはいてもチャウシーは野性味を感じさせる風貌が望まれ、頭身に対して頭部はやや小ぶり。

目の大きさもさほど大きくは無く、中型で丸みの強い楕円形が良しとされています。公認色はイエロー、ゴールドが特に好まれますがヘーゼルやライトグリーンも範疇内です。

額は長く、マズルも長く、耳は大きく高く頭の中央に寄っていて個体によっては野生猫らしい飾毛を備えた個体もいます。

伸びやかな肢体と対照的に尻尾は短めで、長くても体の3/4程、太さも中くらい。先にゆくにつれて細まりつつ濃色のしま模様が入る様はまさしく古代エジプトの壁画に描かれている猫の尻尾そのものといった雰囲気ですね。

全体的に長めで、前足に比べ後ろ足がやや長い四肢もまた、野生猫に見られる特徴を受け継いでいます。

被毛は柔らかいアンダーコートと比較的固めのオーバーコートから成り、毛色は単色のソリッドブラック、アビシニアンによく似たブラウン・ティックド・タビーの他にブラック・グリズルド・ティックド・タビーがあります。

この最後のカラーリングは黒い被毛にわずかにシルバーのティッキングが輝くジャングルキャットに特有のもので、イエネコではチャウシーのみに現れる特徴的な毛色です。

ジャングルキャットはとても狩りが上手で、飛んでいる鳥をジャンプして捕えたり、川に潜って魚を捕ることもあります。そんな血を受け継いでいるチャウシーもまた脚力に優れ、助走なしでもかなりの高さをジャンプできますし、イエネコ族には珍しく水をあまり怖がりません。

平均寿命は10年~14年と言われています。

チャウシーを飼う時に気を付けたい事

運動量が多く、特に上下運動を好むので、広い空間と高さのある頑丈なキャットタワーが必須です。

好奇心旺盛で飼い主がしまい忘れたものは早々におもちゃにされてしまいますし、戸棚を自分で開けて中のもので遊んでしまうこともありますのでお部屋の整理整頓を心がけましょう。

短毛で抜け毛も少ないためブラッシングは週に1、2回で充分です。

ごはんに対する執着心が強めなので食事のしつけやフードの管理はしっかりと行いましょう。

勿論家族全員と仲良くしますが、中でも特定の一人と犬のような関係性を築くことがあり、リードを付けて一緒にお散歩したり、おもちゃを投げて”取ってこい遊び”を楽しむ子も多いようです。

寂しがり屋で甘えん坊、一人遊びよりも誰かと遊ぶことが好きなタイプなので多頭飼いにも適しています。

むしろひとりぼっちで長時間お留守番しているとストレスを感じてしまうので、あまり長時間家を空けることがなく、じっくり猫の相手をしてあげられる飼い主さんが向いています。

チャウシーが気を付けたい病気

ヤマネコが人に飼われてイエネコになっていく中で、最も変化したのは毛色の多様性と腸の長さと言われています。

穀物を口にする機会も多いイエネコに比べ、自然の環境下で完全肉食生活を送る野生猫の消化管は短く、穀物や植物性の食べ物を消化することが苦手です。

そんな野生猫の血を色濃く引き継ぐチャウシーは穀物入りのフードによって下痢やアレルギーを起こすリスクが他の猫種に比べて高いため、グレインフリーのフードや、肉類の含有率の高いウェットフードが推奨されています。

チャウシーの恵まれた体格を維持するためには高たんぱく質のフードで筋肉を育てることが不可欠ですが、運動量が足りずに食事量とのバランスを欠いてしまうと肥満に直結しかねません。

健康のために、肉がメインとなった良質なフードを選び、毎日たっぷりと運動してもらいましょう。

遺伝的な病気の要因は少ない猫種とはいえ、猫全般に多い腎臓病や尿路系のトラブルには要注意です。どのような猫にも言えることですが、定期的に健康診断を受けるようにして早期発見に努めたいものです。

チャウシーをお迎えする方法

過去には日本国内でも販売された事があったようですが、2019年現在、チャウシーを扱う国内のブリーダーは見つけられませんでした。

TICAにはアメリカとスコットランドで2件のブリーダーが登録されています。子猫の販売価格は15万円という情報が多いのですが、希少な猫種のため変動性が高く、断言は控えておきます。

国外からお迎えということになりますので、生体代金に加えて関税や輸送代、輸入のための諸手続きにかかるコストも考えておかなければなりません。

スコットランドのブリーダーは国外輸送も行っているので、その場合の手続きにかかる費用を試算してみたところ、送料、マイクロチップ、ワクチン、輸出に関する諸手続き全部で日本円にして132,000円(+その時点での関税額)でした。

しかしこれはそこのブリーダーが自社で確保している輸送便を利用することが前提の金額のため、輸送ルートが用意されていない日本への場合は更に高額になることが予想できます。

アメリカのブリーダーのサイトによると「チャウシー」と銘打って販売できる子猫は公認色に限られますが、チャウシーは公認色以外の様々な毛色で生まれることも多いとの事ですので、商業ベースで扱うのはなかなか難しいようです。

子猫は見つかりませんでしたが、アメリカのChausie Cat Rescueでは飼い主の死亡などにより家を失ったチャウシーに新しい飼い主を探す活動をしています。どうしてもチャウシーをお迎えしたい、という方は保護チャウシーも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

ワイルドキャットを飼うという夢

世界的なベストセラーとなった「猫的感覚」はイギリスの動物学者ジョン・ブラッドショーの著作で猫の歴史から生態、心理まで幅広く網羅した名著です。

その序盤では生粋のヤマネコを飼育した実例をいくつか挙げつつ、野生動物を馴らすことの難しさ、結局のところ無理であるという事実を私たちに教えています。

人をやたらに噛んだりしないこと、排泄は決められたトイレですること、愛猫たちが当然のように行っているこれらの事はイエネコたちが人間との積み重ねてきた長い歴史の中で身に着けてきてくれた事なんですね。

それでもやっぱり野生猫は魅力的です。

見た目はヤマネコ、中身はイエネコ、そんな夢を叶えてくれたチャウシーとブリーダー諸兄姉らに深い敬意を抱くとともに、いつか日本国内でも会える日を楽しみにしていましょう。

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