猫のビタミンD不足は成長不良や骨折の原因に!不足する原因と予防法

猫は、ほかの動物に比べてビタミンDが不足しやすいのです。

ビタミンDが不足するとしっかりした骨格を形成することができなくなります。特に成長期の猫ちゃんには欠かせません。

ビタミンDは猫にとってどんな風に必要な栄養素なのか、猫に不足する原因、ビタミンD不足を予防する方法についてチェックしてみましょう。

キャットフードを食べている猫ならビタミンD不足はめったにない

ビタミンDは、ヒトやネコを含むあらゆる動物に必要な栄養素です。

人間の場合、ビタミンDは慢性的に不足している傾向があり、効率よくビタミンDができるよう、加工乳、ヨーグルト、卵などビタミンDが強化されている食品もよく見かけます。

一方、ペットとして飼われキャットフードを食べている猫なら、キャットフードからバランスよくビタミン類が補給できているので、基本的にビタミンDが不足することはめったにありません。

ただし、食事の内容によってはビタミンDが不足し、欠乏症による健康障害を起こすことがあるので、飼い主さんは猫ちゃんに与えているメニューの内容を再確認していただきたいです。

ビタミンDはどんな栄養素?猫に必要な理由は

ビタミンDは、魚、きのこ類に多く含まれる脂溶性のビタミンです。

ビタミンDは7種類あり、そのうち動物の体に大きく関与するのは、

  • ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)
  • ビタミンD3(コレカルシフェロール)

の2つとされています。

ビタミンDは、ほかの栄養素と同じように小腸から吸収されていき、その後に腎臓と肝臓で「活性型ビタミンD」と呼ばれるビタミンDに変換され、体内ではたらけるようになります。

ビタミンDは骨や歯を丈夫にする

ビタミンDには次に挙げる役割があります。

  • カルシウムとリンの吸収を促進する
  • カルシウムやリンを骨や歯に蓄積させる

…つまり、簡単に言えば猫の骨格を形成してくれるのがビタミンDなのです。

カルシウムが骨や歯の材料になることは、皆さんもよくご存知ですよね。カルシウムは体内でリンと結合し、骨や歯に蓄積されることで骨や歯を作ります。

この時に欠かせないのが活性型ビタミンDです。体内で活性化したビタミンDは、カルシウムとリンの吸収を促進させ、そのカルシウムとリンで骨や歯を作ります。

ビタミンDも丈夫な骨や歯を作る栄養素。猫の骨格を成長させ、骨を丈夫に保つには、カルシウム、リンと一緒にビタミンDを不足なく摂取することが大切です。

猫のビタミンDが不足すると成長不良や骨折の原因に…

もし動物にビタミンDが不足すると、カルシウムやリンが歯や骨にうまく取り込めなくなるため、歯や骨が弱くなってしまいます。

いくらカルシウムを積極的にとっても、ビタミンDが不足していればカルシウムは骨や歯に蓄積されにくくなるので、骨や歯は丈夫になりません。

猫は特に、ビタミンDが不足すると

  • 成長不良
  • 骨折
  • 筋肉痛

が起こりやすくなります。

また動物では、極端にビタミンDが不足すると「くる病(骨軟化症)」という骨の成長障害が起こりやすくなります。

くる病は、骨が柔らかくなるために背骨や脚の骨が変形してしまう病気です。猫は犬よりくる病になりにくいといわれますが、子猫は注意が必要です。

要注意!猫のビタミンDが不足する原因

猫のビタミンD不足は次の原因で起こります。

  • ビタミンDの少ない食事をとっている
  • 腸、腎臓、肝臓の病気がある

ビタミンDの少ない食事

一番多いのは、ビタミンDの少ない食事によるビタミンの摂取不足です。

キャットフードはビタミンDが配合されているので、基本的にはどのメーカーの商品を選んでも、ビタミンDが不足する心配はありません。

ビタミンD不足に注意したいのは、手作りご飯をもらっている猫さんです。もちろん、猫の体に必要な栄養がそろっているメニューならば問題ありません。

注意したいのは、魚が少なく、炭水化物、肉、卵、乳製品が多い食餌を食べ続けている場合です。ビタミンDは、魚類ときのこ以外の食品にはほぼ含まれていません。

以下の表をご覧ください。食品のビタミンD(μ/g)含有量です。

魚類 魚類以外の食品
さけ 22 卵黄 6
さんま 19 豚レバー 1
煮干し 18 牛サーロイン(輸入)1
牛リブロース(輸入)1
さば 11 その他の畜肉 0
いわし 10 米・小麦 0
かつおぶし 6 卵白 0
まぐろ赤身 5 牛乳 0
かつお 4 野菜・果物・豆類・海藻類 0
しいたけ 2 魚介類 0
(貝・イカ・タコ・エビなど)

参照…文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

ビタミンDは、卵黄、豚レバー、一部の牛肉、バターや生クリームにも少量含まれます。

しかし、これらの食品はたくさん食べると、カロリー、脂質、ビタミンなどほかの栄養をとり過ぎて健康を害する可能性が出てくるので、猫がビタミンDの補給源にすることは難しいです。

肉は、たんぱく質が豊富で猫の体に必要な栄養素が摂取できますが、猫に必要なタウリンは少ないので、肉ばかりあげるのもおすすめできません。

魚には、猫に必要なタウリンとたんぱく質も豊富に含まれますし、やはり「猫には魚」が基本なのです。

肝臓、腎臓、腸の病気がある

肝臓、腎臓、腸に病気があり機能が低下している場合も、ビタミンDが体内ではたらくことができなくなり、骨や歯が弱くなってしまいます。

ビタミンDは、食事をしたり皮膚で合成した後に血液に吸収され、肝臓と腎臓にたどりつきます。肝臓や腎臓で活性化され「活性型ビタミンD」に変わると、初めて体内ではたらく力を持つことができるようになります。

活性型ビタミンDは血液中に送られ、カルシウムが骨や歯に蓄積されるのを促進します。

しかし腎不全などで腎臓の機能が低下すると、ビタミンDが活性化できなくなるので、いくらビタミンDを摂取してもビタミンDの役割が発揮できなくなってしまいます。

活性型ビタミンDにはカルシウムが腸から吸収されるのを促進させる役割もあるので、カルシウムの吸収も阻害され、カルシウム不足も引き起こします。

また、腸の病気にかかっていると、腸から栄養が吸収されにくくなるため、ビタミンD不足をまねくこともあります。

猫はほかの動物よりも腎臓の機能が低下しやすく、特に高齢の猫は腎不全になりやすいので、腎臓病で療養中の猫はビタミンD不足にも注意が必要です。

ほかの動物は自分でビタミンDが作れるけれど、猫は作れない

実は、動物は自分の体でもビタミンDが作れるので、食事からビタミンDがとれなくても、深刻なビタミンD不足を起こすことはありません。

私たちヒトを含むほとんどの動物は、皮膚に紫外線を浴びることでビタミンDが作れるのです。

皮膚中からビタミンDのもととなる「7-デヒドロコレステロール」が分泌していて、皮膚に紫外線を当てることで7-デヒドロコレステロールをビタミンDに変えることができます。

ところが猫は、ほとんど7-デヒドロコレステロールが分泌されないため、自分でビタミンDを作ることができません。食品からしっかりビタミンDを補給しなければ、ビタミンDが不足してしまいます。

食事やサプリは?猫のビタミンD不足を予防するには

猫のビタミンD不足を予防するためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

キャットフードでビタミンDが不足することはない

猫には、毎日のえさを通して必要なビタミンDをきちんと与える必要があります。

ペットフードの栄養基準を定める機関「AAFCO」では、ドライフードの場合、体重1kgあたり500~10000IU/kg(13~250㎍相当)のビタミンDの摂取を推奨しています。
※IU(国際単位)=40㎍

AAFCOは猫に必要な栄養素43種類の摂取基準を設定しており、メーカーはAAFCOの基準を満たしたキャットフードを製造・販売しています。

ですから、猫にあった量のキャットフードを毎食与えていれば、ビタミンDをはじめ必要な栄養が不足する心配はありません。

ねこまんまでは栄養が偏る可能性も

手作りご飯を与えている場合は、ビタミンDの補給源・魚を中心とした栄養バランスの良いメニューを用意しましょう。

青魚は、ビタミンDやタウリンはもちろん、猫に必要な脂肪酸、カルシウムも豊富に含まれています。新鮮なものを用意してくださいね。

昔の猫は、人間の残り物やねこまんまをもらって食べていることが多かったので「キャットフードをわざわざ買わなくても、家庭にある食べ物をえさにするのが自然だ」という考えもあります。

ただ、現代の猫はそれだけでは栄養が不足するかもしれません。

昔は、猫が自分でネズミを捕ったり外に出て食べ物を見つけたりして自分でも栄養を補給していたので、家庭ではご飯ににぼしやかつおぶしをかけたねこまんまだけでも良かったのです。

しかし、現代猫がネズミを捕ったり外に出たりすることがなくなったので、飼い主さんからもらえるご飯ですべての栄養を補給しなければなりません。

「既成のキャットフードよりも、できたての手作りご飯をあげたほうが猫のために良い」という意見も尊重できます。

ただ、栄養バランスのとれた手作りご飯を毎日準備するのはなかなか大変です。やはり、愛猫の健康を考えるならば、食事の準備が難しい場合には手作りにこだわらず、キャットフードを併用することもおすすめしたいです。

療養中は栄養不足に注意を

また、猫が病気で療養中の場合は、食欲低下で食べる量が減ってビタミンDが十分に補給できなかったり、腎臓や肝臓の機能低下から活性型ビタミンDが作れなかったりすることがあります。

猫が療養中、体調不良の時は、栄養不足、体力の低下に注意が必要です。猫の体調をこまめに観察しながら、獣医師に相談して適切な食事を用意しましょう。

とり過ぎても障害が!ビタミンDはむしろ過剰摂取に注意

ビタミンDを補給する場合は、不足よりも過剰摂取による健康障害に注意しなければなりません。

ビタミンDは、大量摂取を続けると肝臓や脂肪にどんどん蓄積されるため、どちらかというと過剰摂取が起こりやすいのです。

体内にビタミンDが蓄積されると、嘔吐、高カルシウム血症、腎臓や筋肉の石灰化などの障害が起こりやすくなります。

魚やきのこなどの天然食品を食べる場合、よっぽど大量の食事を毎日食べない限りは、ビタミンDの過剰摂取が起こる心配はありません。

ただし、キャットフードの食べ過ぎやサプリメントの利用は、簡単に大量のビタミンDがとれてしまうので、与える時は十分に注意してください。

日光浴でビタミンDはつくれないけど、猫にとっては意味のある行動

猫を室内飼いしている飼い主さんには「日が当たらない部屋で猫を飼っているけど、ビタミンD不足にならない?」「室内飼いだと、紫外線不足でビタミンDが作れないのでは…」と心配する方もいるようです。

猫は日光を浴びてもビタミンDは作れないので、特に日光不足でもビタミンDが不足することはありません。

ただ、日光には、

  • 猫の毛をふかふかにする作用
  • 心身のリラックス効果
  • 殺菌作用

などがあるので、ビタミンDは増えませんが、健康のために日光浴は適度にさせてあげてくださいね。

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猫は意外にビタミンDが不足しやすいことを知っておこう

ヒトの場合、近年はビタミンDにヒトの免疫力を高めたりうつを予防する効果があるとして、その重要性が再認識されるようになっています。

しかし、ビタミンDは、健康番組などのテーマに取り上げられることの多いビタミンCやビタミンEなどに比べると、目立ちにくい存在で、その性質やはたらきはよく知られていない気がします。

しかし、猫はほかの動物と違って自分の体で作れないことから、ビタミンD不足が起こりやすいので、猫の飼い主さんはビタミンDについて知識を持っておいていただきたいと思います。

みんなのコメント

  • ちはる より:

    ビタミンDの過剰摂取による高カルシウム血症、腎臓や筋肉の石灰化については、人の場合ですとビタミンK2を同時に摂取することによって防ぐ事が出来るという本を読んだんですけど、猫さんの場合も同じく考えていいんでしょうかね?

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